第6回 RFPの書き方:要件を確実に伝える表現のコツキーワードでわかるシステム開発の流れ(3/3 ページ)

» 2007年11月29日 12時00分 公開
[高田淳志,株式会社オープントーン]
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何をどのように作るか考えてもらう(RFP作成のアウトソーシング)

 システム開発に携わった経験のある方であれば「要件定義」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。簡単にいえば、今回の開発案件の中で作るべきもの(=要件)を確定させる(=定義)作業工程です。この工程のアウトプットとして「要件定義書」が作成され、今回のシステム開発の範囲(=スコープ)が明確になるわけです。

 システムで実現するものがさらに高度・複雑な領域へと進みつつある現状の中において、システムの完成像を作り込む要件定義工程を、初めから専門家(開発ベンダ、ITコンサルタントなど)へアウトソースすることが大きな効率アップにつながる場面も多いことでしょう。

 さて、要件定義工程をアウトソースするに当たっては、まずどの部分から任せるのかを検討しておかなければなりません。作業内容を大きく分類すると、「(1)要件収集」「(2)要件定義」「(3)要件分析・検証」の3つの作業に区分されます。

ALT 図2 RFP作成の流れ

(1)要件収集

 関係者のニーズや期待、または制約条件や前提条件を関係者から収集する作業。単に現状を把握してその範囲内で忠実にシステム化を行っていくのか、または、場合によっては開発システムに合わせて現状の業務フローの改修までを視野に入れて考えるのかで、難易度は大きく異なってきます。

 社内に情報システム部門を抱える企業の場合は、この役割は情報システム部門が担うことが多いようです。

(2)要件定義、(3)要件分析・検証

 システムの関係者または情報システム部門担当者などから入手したニーズ等を、実際にシステム化可能な形となるようにまとめていきます。その作業の中で、導入するソフトウェア製品や機器構成なども決定していくことになります(=構成要素の決定)。最終的に、作成した要件内容のレビュー(≒検証・確認)を経て、要件定義書の完成となります。

青木室長 「さすがにすべてを赤井君1人で作業することもできないだろうから、今回は、要件収集から外部ベンダにお願いすることにしよう。その場合は、システム開発費用とは別に要件定義作業分のコストを加算してもらえばよいのかな?」

赤井君 「いいえ、それだと十分な効果が得られなくなってしまいます。そもそも、システム開発費用算出の前提として、開発するシステムのイメージが必要なわけです。で、そのイメージを具体的な内容で表現していく作業が要件定義工程なのですから、要件定義だけを切り出して契約させてもらいましょうよ。これについては、単純に期間契約で良いと思いますよ。そして、その後にきっちりと文書化された要件定義書を基に開発費用などを見積もってもらう方が格段に精度が高くなります」

青木室長 「では、要件定義工程については、1人月なら100万円、2人月なら200万円……、という具合で人数と期間相当の契約とすれば良いわけだね?」

赤井君 「そうです。この工程では、理想のシステム像を思い描いて進めていきましょう。その上で、結果的にコスト超過であれば実現内容を減らして調整しましょう。いずれにしても、要件定義工程完了後の調整事項となります」

青木室長 「よし、分かった。その方がスッキリしているな。後は、社内的に契約が2本立てになることを了承してもらえばOKと。早速、調整してみよう」

赤井君 「よろしくお願いします。」

 「RFP」や「提案依頼書」のように専門用語的な表現になると、“記述のテクニック”のような部分にこだわりたくなります。しかし、大切なのは、考えていることや予定していることのすべてを正確に伝えることだと思います。

 RFPの読み手となるベンダの社内では、プログラマーになりたての新人技術者が1人でRFPの読み解きを任されることなど考えられず、どちらかというと一定の経験や知識を吸収しているシニアエンジニアが担当することが普通です。ですから、たとえ技術的には無理かもしれない内容であっても、コスト的に困難な命題であっても、「作りたいもの」の姿が表現されていれば、それを実現可能な形に置き換えたり、開発コストを加味したりして、検討・提案してもらえるものです。個条書きの羅列でも、論文的に文章にまとめてあっても構いません。今回の冒頭のたとえにあった本棚の作成指示であれば、こんなふうになるとよいのではないでしょうか。

(1) 天板は、床から1m30cmぐらいにしたい。ただ、A4サイズの本が納まることを優先して高さを決めてほしい

 

(2) 間に仕切り板を置いて3段くらいに分けて使いたい。仕切り板は取り外し自由だといいが、費用が随分と変わるようであれば固定でも構わない。固定の場合は、1段には最も高くてA4サイズの本が入れば十分。背板は要らない

 

(3) 材料は木でもスチールでも構わない。費用的に倍以上違うとかでなければ、作業が早く終わる方でOK

 

(4) 色付けは不要。ニス塗りだけお願い

 

(5) 移動させながら使うことはないので、重くてもいいし、キャスターも要らない

 

(6) 壊れなければしばらく使う予定なので、頑丈なのをお願いします

 

(7) 費用は2万円で収まれば万歳だけど、難しければ3万円まではOK

 

(8) 完成したらお礼にチキンカツ定食おごります(おお、これは超モチベーション・アップ!?)


  • 段落分けされていなくて読みづらく!
  • 記述順序がデタラメで整理し直すのが必面倒くさい!
  • 実現困難な内容が含まれていそう……

 上記のように表現方法・内容に完璧ではない点はまだ残っていそうです。でも、やりたいことや考えていること(=要望)が表現されていることで、その人が思い描く本棚の完成イメージがわいてきませんか?

筆者プロフィール

高田 淳志

株式会社オープントーン


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