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» 2008年04月03日 12時00分 公開

会計ソフトが業務改善に効く理由内部統制時代の会計ソフト(1)(3/3 ページ)

[山口 邦夫 (経済ジャーナリスト),@IT]
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ブレーキをかけるだけでは会社は止まってしまう

 さて、これで内部統制と会計ソフトの関係を整理できたのではないだろうか。 ただもう1つ、忘れてならないのは、業務プロセスを明らかにしても、適切な統制を行えなければ改善は難しいということだ。

 日本版SOX法(金融商品取引法)では「財務報告の信頼性確保」に目的を絞り込んでいる。だが会社法では、これに「業務の有効性・効率性の向上」、「事業活動にかかわる法令等の遵守」、「資産の保全」を加えた4つの目的を示している。この点を指して、南氏は「バランスの取れた内部統制が重要だ」と指摘する。

 「財務報告の信頼性確保とは、あらゆる企業活動を精査して、財務報告の適正性を確保するもの。儲けにつながる活動をアクセルとたとえるなら、これはブレーキといえる。だが現状を見る限り、法対応に目を奪われがちなせいか、財務報告の信頼性確保のみに着目して内部統制を進めてしまった会社も多い。ブレーキだけに集中すれば、会社は確実に前に進みにくくなる」(南氏)

ALT 内部統制はアクセルとブレーキのバランスが大切(仰星監査法人の資料より抜粋)

 例えば営業担当者に対して、何らかのアクションを起こす際は部門長の事前承認を得ることをルール化したとする。その際、「まったく例外を許さない」ことにすると、企業活動の適正性は担保できようが、肝心のビジネスチャンスを逃すことになりかねない。そこで「一定の要件に該当する場合は事後承認も認める」など、弾力的なルール運用を図ることが必要となる。

 「内部統制の目的は、業務の有効性と効率性の向上。アクセル要因とブレーキ要因のバランスの取れた統制を実施することが大切だ。 業務プロセスに対して、いたずらに制限をかけるのではなく、許容され得る程度のコントロールが実現すればいい、といった考え方で、合理的なコントロールを目指すべきだ」(南氏)

ALT 業務フローチャートに、アクセル、ブレーキ両面から光を当てる(仰星監査法人の資料より抜粋)

 各プロセスの詳細を示した業務フローチャートが重要なのも、アクセルとブレーキのバランスを考慮するうえで重要な検討材料となるためだ。その点でも、お金の流れから業務の現状をつぶさに把握できる会計ソフトは、大きく貢献することになる。

会計ソフトが業務改善を大きく後押し

  ただ、南氏は有効な内部統制を行う上で「何より欠かせないのは改善に向けたトップの意思とリーダーシップだ」と付け加える。 「この点が欠けていると、『仏作って魂入れず』になりかねない。トップ自身がその必要性を認識し、真の業務改革につなげようという目標をはっきりと示すことが大切だ」

ALT 「改善に向けた強い意思と、アクセル、ブレーキのバランス感覚が大切」と南氏

 これは大企業はもちろん、法的な縛りを受けるわけではない中堅・中小企業にとっては、特に大切な要件といえよう。法的拘束力がないということは、業務改善という真の目的を見据えた内部統制を行いやすいということでもある。

 つまり、内部統制の対象を自ら選択しながら、より自社の事情に合わせた形で、着実に改善を狙うことができる。この点で、南、田中、両氏は「中堅・中小こそ積極的に取り組むべきだ」と口をそろえる。 

 もっとも、大企業に比べて資金面で制約があるだけに、より効率的な内部統制整備が求められるのも事実だ。例えば小規模な企業では、小口払いなどについて特定の担当者が1人で管理しているケースがある。しかし、これを「人手不足だから」と放っておくべきではなく、上長の承認を義務付ける、経理部門と総務部門といった異なる部門同士でチェックするなど、工夫の方法はさまざま考えられる。

 「課題があっても、内部統制を経営改善に役立てていこうという強い意思力があれば、打つ手はいくらでも考えられるはず。身近な所から1つ1つ手を打つべきだ」(南氏)

 「業務改善」とは耳慣れた言葉ではある。だが実際には日常業務に追われて、なかなか着手できるものではない。しかし日本版SOX法が施行された今、社会全体の視線が「企業の信頼性」や「社会的責任」に集まっている。業務改善に着手するには、今こそ絶好の機会といえるのではないだろうか。会計ソフトは、収益向上につながる真の内部統制を大きく後押ししてくれるはずだ。

 次回、会計ソフトのベンダリポートも交えつつ、失敗しない選び方を詳しくリポートする。 

著者紹介

▼山口 邦夫(やまぐち くにお)経済ジャーナリスト。

1959年佐賀県伊万里市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、新聞社、出版社勤務を経て、1999年経済ジャーナリストとして独立。企業・金融関連を中心に、幅広いジャンルの原稿を執筆。


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