顧客のために、仮想化技術を使う〜本田技研工業〜各社に聞く「グリーンITにどう取り組むか」(2)(1/2 ページ)

あらゆる企業活動において、常に社会や顧客の期待に応えることを念頭に置くという本田技研工業。グリーンITについても例外ではない。ただ単に省力化というトレンドに対応しているわけではなく、最終顧客の満足を見据えた継続的な省力化に長年取り組み続けている。

» 2008年04月17日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]

Honda LCAシステムで各部門のCO2排出量を測定2排出量を測定

 本田技研工業は現在、2010年をメドにしたグローバルCO2低減目標を掲げている。4輪車、2輪車、汎用製品、それぞれから排出されるCO2を10%低減。製品生産時に排出されるCO2を、4輪車は1台あたり10%、2輪車と汎用製品は1台当たり20%低減するというものだ。

 環境安全企画室 開発技術主幹の落合英雄氏は、「この目標も着実に達成しつつある。弊社では1992年6月に発表したHonda環境宣言の下、環境施策を推進し続けているが、今後も製品の生産時と使用時、両面を見据えた真の環境負荷低減を推進していきたい」と話す。

 Honda環境宣言の冒頭では「商品の研究、開発、生産、販売、サービス、廃棄というライフサイクルの各段階において、材料のリサイクルと、資源、エネルギーの節約に努める」──いわゆるライフサイクルアセスメント(LCA)の考え方をうたっている。

 これに伴い、1990年代後半から「Honda LCAデータシステム」の構築に着手。2002年3月に完全稼働させ、製造、購買、販売・サービス、物流といった各部門で発生する環境負荷物質を計測し、CO2削減目標を数値で明確に打ち立ててきた。

2000年度以来、CO2排出原単位は年々減少している

 また、車の生涯CO2の約8割は使用時に発生していることから、使用時の環境負荷低減にも配慮。1999年にはハイブリッドカーであるインサイト、2001年にはシビックハイブリッドを発表したほか、4輪製品では1995年比で平均燃費を約25%、2輪製品は約30%向上させるなど、燃費低減にも注力している。

 この結果、2006年度のCO2排出総量は、生産台数が前年比5%増となりながらも、前年比1%減。売り上げ当たりのCO2排出原単位も毎年改善の一途を辿っている。

IT部門の効率化はすでに一巡

 同社が着実に改善を狙えるのは、やはりHonda LCAデータシステムを使って、数値で明確に現状を把握しているゆえだろう。だが一番のポイントは、計測した各部門のCO2排出量をもとに、各部門が自らCO2削減目標と達成手段を考案している点だ。

 例えば製造部門では、「グリーンファクトリー」という取り組みを実施している。エネルギー、資源の使用量削減、ゼロエミッション化を推進するもので、2006年度には栃木製作所と鈴鹿製作所に太陽光発電を、熊本製作所にコージェネレーション施設を設置した。この結果、エネルギー消費原単位を1990年比24%削減、CO2排出量を50万トンに抑える、という目標に対し、エネルギー消費原単位は29.8%低減、CO2排出量は46.3万トンを記録している。

本田技研工業 環境安全企画室 開発技術主幹 落合英雄氏

 輸送部門では、トラックと環境負荷の低い船舶を組み合わせて運ぶモーダルシフトなどを実施。2006年度の4輪車輸送におけるCO2排出量目標値、11万650トンに対し、10万4769トンに押さえ込むなど、各部門とさまざまな施策を展開、成功している。

 一般に、環境施策を考える際、効率性やコストとの兼ね合いがあり、話が前に進まない、形だけに終わってしまう、といったケースがよく聞かれる。

 しかし同社の場合、「あるべき論で理想を追求し、コストをはじめとする諸問題は、後から現実的な着地点を見出していく。まず『想い』ありき─これがホンダのやり方だ」(落合氏)という。各部門が着実に成果を上げているのも、こうした文化が浸透している証なのかもしれない。

本田技研工業 IT部第二システム室 室長 情報システム主幹 新井典之氏

 こうしたなか、IT部門は4輪、2輪、製造、購買といった各部門と、日本、北米など各地域を一気通貫する「All Honda」としてのITオペレーションを実現。現業部門の取り組みを根底から支えている。

 IT部 第二システム室室長 情報システム主幹の新井典之氏は「これまでもHonda環境宣言に則って効率化を考えてきたが、グリーンITという言葉が浸透しつつある今、環境という観点は今後ますます重要な要件となっていく」と話す。

IT部門の電力消費(本田技研工業の資料より抜粋)

 LCAデータシステムによると、2006年度のAll Honda IT部門のCO2排出量は1万5247トン。2003年の1万1317トン以来、年率11.6%の伸びを示している。こうした状況を考慮し、「グリーンITという言葉が伝わる以前の2002年から、将来を見据えて効率化と環境負荷低減に取り組んできた。その活動はすでに一巡している」(新井氏)という。

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