本当に素朴な疑問で恐縮なのだが、先週末に発売された「iPhone 3G」を購入された皆さんは、家族にどう説明をして購入したのだろうか。iPhone 3Gの月々の通信費はホワイトプラン(i)に加入した場合で7280円。8GBモデルを24回の分割払い(新スーパーボーナス)で購入した場合は月々960円が加わり、合計8240円をこれから2年間にわたって支払う必要がある。
企業と同じで家計にとって一番痛いのは固定費である。毎月7280円の支払いを「飲み会を1回やめれば元が取れる」という人もいるが、飲み会は一時的な出費であり、毎月必ず出ていくお金ではない。飲み会の出費は抑えようと思えば抑えられるが、iPhone 3Gへの出費は利用している限り、減らすことはできないのである。
ソフトバンクモバイルのARPU(契約者1人当たりの平均収入)は2007年度第4四半期で、4310円(音声2710円、データ通信1600円)。音声のARPUは減少傾向にあり、データ通信は微増が続いている。機種交換でiPhone 3Gを手に入れた人は単純に考えるとこれまでの2倍近くの通信費を支払うことを意味する。
NTTドコモやau(KDDI)のユーザーで、追加でiPhone 3Gを購入した人はさらに負担が大きくなる。
ちなみにNTTドコモの2007年度(FOMAのみ)のARPUは6990円で、auの2007年度第4四半期のARPUは5990円。iPhone 3Gの販売が成功すれば、ソフトバンクモバイルはARPUを大幅に伸ばし、他社並みにすることができるわけだ。
もちろん、iPhone 3Gは月7000円以上の支払いを続けるだけの価値があると多くの人が考えるから、これだけ注目されているのだろう。その価値とは何だろうか(これが分かれば記者も家族を説得してiPhone 3Gを手に入れられるのだが……。はてなブックマーク、コモンズ・マーカーで家族の説得方法、自分の中の落とし所をお寄せください)。
記者はどうしてもiPhone 3Gを固定費のかからないiPod touchと比べてしまう。音楽プレーヤーやWebブラウザの機能はiPhone 3GとiPod touchで変わらないと理解している。快適な操作性も特徴の1つだが、「それってiPod touchでもできるよね?」という指摘を打ち破る十分な強度を持っているとは思えない。
では、いまの時点で考えられるiPhone 3Gの魅力とは何だろうか。それは3Gネットワークを利用することで実現した常時接続のブロードバンド環境だろう。ワイヤレススポットでないとインターネットに接続できないiPod touchと異なり、iPhone 3Gは常にネットワークに接続できる。この常時接続環境はWebブラウザの利用を広げるだけでなく、App Storeで配信されるアプリケーションと結び付くことで、大きな価値を生むように思う。常時接続環境にとっては音声通話もアプリケーションの1つ。 iPhone 3Gは「音声通話ができるiPod」なのではなく、「インターネットに常時接続できるモバイル・プラットフォーム」であるところに価値があるのだろう。
iPhone向けのアプリケーション開発は、iPhone用のネイティブ・アプリケーションを開発できる SDKが3月に公開されてスタートした。世界中の開発者がほぼ同時に開発をスタートした状況だから、日本の開発者にとっても世界のiPhoneユーザーに自分のアプリケーションを広めるチャンスだ。高機能なOSと画期的な操作性、ほぼフル機能のWebブラウザ、常時接続環境、各種センサ、そしてモビリティ。これらの特徴を備えたプラットフォームはこれまでになかった。何かとてもおもしろいことが始まるに違いない ――iPhone 3Gに月7000円超を支払う人は、この未来に先行投資をしている。
「iPhone 3Gの通信費は高い」という原稿を書こうと思っていた記者だが、考えているうちにiPhone 3Gが本気でほしくなってきた……。
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