追加された「内部統制Q&A」の注意点SOX法コンサルタントの憂い(11)(2/4 ページ)

» 2008年08月29日 12時00分 公開
[鈴木 英夫,@IT]

会計に関する知識のある人材が不足しているのは問題外?

【問33】取引の流れを追跡する手続きの実施

(問33) 経営者は、評価対象となった業務プロセスごとに、代表的な取引を1つあるいは複数選んで、取引の開始から取引記録が財務諸表に計上されるまでの流れを追跡する手続きを、すべての業務プロセスについて実施しなければならないのか。もし、このような手続きを実施しない場合には、監査人の指摘の対象となるのか。

(答え抜粋) 経営者が必ず実施しなければならない手続きとはされていない。

◆筆者の分析

教科書では、上記の手続きは「内部統制の整備状況の評価」として「やらなければならない」と書かれている場合があります。

このことから、より重要な「運用状況の評価」と並行しているような印象を与えていますが、やはり「運用状況の評価」の方が重要のようです。


【問37】期末の棚卸プロセスの評価

(問37) 評価対象とした業務プロセスとして、棚卸資産についての期末の棚卸プロセスがあるが、期末の棚卸しは決算作業の1つであること、およびその頻度が年2回程度と少ないことを考慮して、経営者は、決算・財務報告プロセスと同様に、前年度末の運用状況をベースに早期に評価を実施することはできないのか。

(答え抜粋) 期末の棚卸しについても、経営者は、決算・財務報告プロセスと同様に、前年度の運用状況をベースに、期中に実施する棚卸作業を通じて早期に運用状況の評価を実施することが効率的・効果的であると考えられる。

◆筆者の分析

実際、期末日当日に棚卸ができる会社は少ないと思います。期末の1カ月前の月末に行っている会社が多いですね。ですので、この回答は現実に即したものといえます。


【問40】重要な欠陥の判断(人材不足や書類整備不十分)

(問40) 米国では、会計処理に関する知識・経験のある人材が不足している場合や、会計に関するマニュアルや規程の整備が不十分である場合には、重要な欠陥であると開示した企業があるようだが、わが国でもそのような場合には、直ちに重要な欠陥として開示するのか。

(答え抜粋) 会計処理に関する知識・経験のある人材が不足している場合や、会計に関するマニュアルや規程の整備が不十分である場合であっても、直ちに重要な欠陥に該当するものではなく、関連する業務プロセスに係る内部統制にどのような影響を及ぼすかを含め、重要な虚偽記載をもたらす可能性を検討する必要がある。

◆筆者の分析

要するに、「重要な虚偽記載をもたらす可能性が軽微であれば構わない」ということです。


【問41】重要な欠陥の判断(補完統制)

(問41) 個々の営業店舗において業務プロセスに係る内部統制の不備(例えば、連結税引前利益の5%を超えるような金額的重要性があるもの)が発見されたが、本部において当該内部統制の不備を補う内部統制を実施している場合には、当該内部統制の不備を重要な欠陥として取り扱わなくてもよいのか。

(答え抜粋) 本部において、営業店舗における内部統制の不備を補うような同一の統制目標を達成する補完統制が整備・運用され、関連する業務プロセスにおける虚偽記載が発生するリスクを低減していると判断できる場合には、当該営業店舗における内部統制の不備は重要な欠陥に該当しないと判断できると考えられる。

◆筆者の分析

これにより、本部で苦労して「補完統制」を行っている点が報われますね。


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