オープンソースのERPパッケージ「ERP5」を開発するNexedi日本法人の代表取締役社長 奥地秀則氏は「既存ERP製品はスケーラビリティやパフォーマンスが作り込まれていない」と話し、日本法人が主導する形で大規模システムにおける分散ストレージなど、ERPのスケーラビリティを向上させる研究開発を行う考えを示した。
奥地氏は「日本人の技術力は非常に優れた面がある。基礎的な技術を開発するときの日本人の技術は侮れない」と話し、日本人技術者の採用にも期待を寄せている。
Nexedi(ネクセディ)はフランスに本社がある企業。セネガルにも現地法人を持ち、6月に設立した日本法人との3極体制で研究開発を進めている。フランス本社でCTOを務める奥地氏は「法人としては別だが、概念的には1つの会社として研究開発を行っていく」と説明した。近く、別の国でも現地法人を立ち上げる予定がある。
研究開発のターゲットとして考えているのは、世界中に拠点を持つ企業がERPを1つのシステムとして使うことができるようなスケーラビリティとパフォーマンスだ。これまでのERPでは、グローバル企業でも世界中の拠点で別々のERPを使っていたり、同じERPを使っていても月次のバッチ処理でデータを統合するなどリアルタイム性に欠けるケースがあると奥地氏は指摘する。
「グループ連結経営が普通になっている中、企業は国を超えて全体としてどういうレベルかをERPで知りたいと考えてる。しかし、何10万という社員がいる会社のアクティブユーザーを抱えられるERPシステムは、いまのところない」(奥地氏)ことが背景にある。「いままでERPを適用するのが難しい領域にERPが入り始めた」(同氏)。Nexediは研究開発に今後、約20万ユーロ(約3060万円)を投じることを明らかにしている。
Nexediは当初、フランスの水着メーカーCoramyが出資していたことから分かるようにアパレル産業向けに強みを持っていた。「ERPの世界ではアパレル産業は一番複雑といわれる」(奥地氏)といい、そのアパレル産業への対応がERP5を鍛えた。現在はアパレル以外に銀行、航空宇宙産業、官公庁などさまざまな業種に強みを持つという。業種別テンプレートはアパレル産業向けと、銀行向けをそろえる。
当然、オープンソースであることも強みとして捉えている。改変可能で、導入企業が自社の既存システムや既存ビジネスプロセスに合わせてカスタマイズすることが容易だからだ。ERP5の名称の元になった「Unified Business Model」の5つの要素(リソース、ノード、パス、ムーブメント、アイテム)に従って開発したモジュールであれば、連携が簡単という。
国内でのビジネスはパートナーと手を組んでいく方針だ。ERP5はライセンス料がフリー。Nexediはコンサルティングや導入、サポート、トレーニングなどのサービスビジネスで収益を上げている。日本でも同様のビジネス展開を考えている。奥地氏は「ERP5はよい製品と思っているのでソフトウェアは広まってほしいが、Nexediには世界支配の欲望はない。全部をコントロールしたいとはまったく思っていない」と話した。パートナーが開発するソリューションにERP5を組み込む可能性もあるという。
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