仮想化で、強く問われる「ITで何をするか」仮想化インタビュー(4)(3/3 ページ)

» 2008年12月05日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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“率先して変える”姿勢あってこそ、仮想化技術は生きてくる

 入谷氏は、「現在の1.0で使われている技術は、すでに無償提供の仮想化ソフトウェアも登場するなど、コモディティ化が進んでいる。サーバ仮想化はすでに“当たり前”の取り組みであり、今後、ユーザー企業の関心は仮想化環境をどう運用するか、ベンダはそのためにどんなツールを開発するかに、確実に移っていくことだろう」と解説する。

 現にいま、SOI(Service Oriented Infrastructure)という言葉も注目され始めている。アーキテクチャにとどまらずインフラ自体をサービス指向化する概念だが、これが実現すれば、OSとインフラを完全に切り離すとともに、すべてをオンデマンドで利用できるようになる。すなわち、ビジネスの要件変化に応じて、より柔軟、迅速にシステムを活用できる環境が整う。

 入谷氏は、「だからこそ、単なるコスト削減だけではなく、仮想化環境をどうビジネスに生かすのか、しっかりと考えていく必要がある」と力説する。

 「仮に、インフラを含めたシステムのすべてをオンデマンドで利用できるようになっても、すべての企業からサーバが消えるわけではない。例えば、CRMなどの情報系はオンデマンドでもいいが、ERPなどの基幹系は自社で持つべき、といった判断もあるだろう。要は、IT活用の自由度が飛躍的に高まっていく分、自社のコアコンピタンスを見極め、自社が力を入れるべき業務、守るべき情報を把握し、業務環境の変化に合わせてITの仕組みを考える姿勢が、これまで以上に強く求められるようになるはずだ」(入谷氏)

 とはいえ、周知のとおり、日本ではCIOがCIOとして機能せず、単なる情報システムの管理者にとどまっているケースが多い。その点、米国では新任のCEOが着任すると、自身の経営戦略をCIOと協議し、既存システムを作り変えさせる例も珍しくないという。

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 「米国より仮想化の進展がやや遅れているのも、文化の違いによる部分が大きいのではないか。仮想化技術はITの可用性を大幅に高め、戦略やワークロードに応じた柔軟なリソースの再配置を可能にする。仮想化本来のメリットは、環境変化に応じて、“率先して変える、創り出す”文化があって初めて真価を発揮する」(入谷氏)

 ハードウェアの集約、運用の効率化など、コスト削減というメリットばかりにフォーカスされてきた仮想化技術。しかし入谷氏は「サーバ統合は始まりに過ぎず、その後に何をするかが問題」と強調する。「ITを使って何をするか」──システムの物理的制約が日々解消されつつあるいま、ユーザー側はこの最も根源的かつ重要な問いを、あらためて深く考え直すべき時期に来ているのかもしれない。

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