シマンテックとJi2は、協業して法的証拠の電子情報開示ソリューション(eディスカバリ)とコンピュータ・フォレンジックのコンサルティングサービスを提供開始すると12月8日に発表した。eディスカバリについては主に米国に子会社を持つ日本の大手企業を対象とする。
Ji2は2001年、米国カリフォルニアに設立されたフォレンジクス・コンサルティング企業。日本では2007年に現地法人を設立した。専門ツールを使ったフォレンジックとeディスカバリを得意とする。
eディスカバリとは米国で2006年12月に改正されたアメリカ連邦民事訴訟規則に則り、訴訟に関わる企業が自社の主張を立証するために必要な電子情報を裁判所に開示すること。アメリカ連邦民事訴訟規則では、電子情報の提出手続きや提出仕様が決まっている。提訴した企業や訴えられた企業は裁判所が決める期限内に電子的な証拠を社内のドキュメントや電子メール、会計データなどから探し出し、提出する必要がある。
Ji2日本法人の代表取締役社長 藤澤哲雄氏によると米国の平均的な大企業は年間20件の訴訟に関わっていて、eディスカバリに対応するためのコストは平均175万ドルを超えるという。日本企業の米国子会社も訴訟に巻き込まれた場合、eディスカバリに対応する必要があり、藤澤氏は「訴えられた日本企業が提出する証拠を本社に探しに行くことが増えている」と話す。日本企業の場合、製造業企業がPL法(製造物責任法)や、知的財産関係で訴えられることが多いという。「ものづくりの会社は知的財産に関する訴訟は避けられない」(藤澤氏)というのが米国の現状だ。
ただ、米国では「(企業が巻き込まれる)訴訟の90%は和解になる」といい、自らの正当性を立証する証拠を提出し、有利な条件で和解を勝ち取ることが重要になる。もちろん、知的財産を持つ日本企業が米国企業を訴えることも考えられ、藤澤氏は「訴訟は企業の戦略の1つといえる」と述べた。
シマンテックとJi2が提供するeディスカバリのコンサルティングサービスは、シマンテックがまず文書の記録保持ポリシーを監査し、データの特定と保全を行う。次いでJi2が証拠となるデータを収集し、裁判所に提出できるようデータを編集する。藤澤氏はeディスカバリについて「そもそもどこにどういうデータがあるか分からない企業が多く、証拠を提出するまでにコスト、期間がかかる」と説明。両社のコンサルティングサービスを利用することで、日本語での訴訟対応が可能になったり、フォレンジック技術を使った効率的なデータ抽出が可能になり、「eディスカバリに関するコストを30%削減できる」(藤澤氏)という。
eディスカバリのコストを削減できるのは、ネットワーク経由でサーバやPCを調査する「オンライン・フォレンジック」のソフトウェアを採用していることも理由だ。オンライン・フォレンジックは両社が提供するフォレンジックのコンサルティングサービスでも利用される。業務を停止せずに社内システムを調査可能で、期間とコストを抑えることができる。フォレンジックのコンサルティングサービスは、不正アクセスや情報漏えいがあった場合のシステム調査や、会計監査、企業買収時のデューデリジェンス、退職者から漏れ出る危険のある情報の調査などを行う。利用するソフトウェアはGSIの「EnCase」、シマンテックの「Vontu」など。
価格はeディスカバリサービスが1000万円からで年間の受注目標は5件。フォレンジックサービスは100万円からで年間受注目標は50件。eディスカバリ、フォレンジックを頻繁に利用する企業向けに、効率的に電子データを管理できるインフラを構築するサービスも提供する。
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