システム入力をサボるやつに使わせる方法目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(23)(2/4 ページ)

» 2009年02月27日 12時00分 公開
[石黒由紀(シスアド達人倶楽部),@IT]

情報システム部の協力

 需要予測支援システムが導入されれば、営業メンバーへの利用者教育はサンドラフトサポート内の情報システム部が担当するはずだ。

 それに関係することなら、福山にもメリットがあるだろう。谷田は早速福山にメールを送った。情報システム部は忙しいのだが、昼休み前の1時間程度なら時間が取れるという返事がすぐに返ってきた。

 久しぶりに会う福山は、突然の話に驚きながらも谷田の話を熱心に聞いてくれた。

福山 「なるほどねぇ。確かに僕たちは新機能追加とか新システム導入といったら、インプット/アウトプットデータは何か、って意識するけど、営業メンバーにはそういう発想はないかもしれないな。谷田さん、営業部門と情報システム部門の橋渡しなんて、さすがだね」

谷田 「ありがとうございます。でも、私も『いままでとどう違うのか?』をうまく説明できないんです。これを説明できれば、PDAの活用度も上がるし、需要予測も精度が上がると思うんですけど……」

福山 「そうだね。それだと僕たちも助かるなぁ。うーん……。谷田さんは『基幹系システム』と『情報系システム』って言葉は分かる?」

 基幹系システムは「勘定系システム」「業務系システム」とも呼ばれ、会社の日常業務を担っている。例えば、生産管理や販売管理、在庫管理システムなどは基幹系システムに当たる。

 これに対して、情報系システムは「顧客の購買行動を分析し、優良顧客との関係強化を図る」など、データの分析・活用を目的としたシステムをいう。今回の場合、受発注システムは「基幹系」、需要予測支援システムは「情報系」に分類される。

 PDAから入力される受注データは、サンドラフトサポートの受発注システムと連携している。ここでは現在、受注日データはあまり意味を持っていない。もともと受注日データは、将来的に「受注が発生してから配送までの日数と、顧客満足度との関係を分析してクレームを減らす」など、「情報系システム」に生かすつもりで設けられていたデータ項目だったからだ。

 しかし、サンドラフトサポートの情報システムで受注日を活用する前に、親会社であるサンドラフトの需要予測支援システムが受注日データを活用することに決まってしまった。受注日データの精度は基幹系では問われなくても、情報系では重要な意味を持つことになるが、営業メンバーへはこの点について、いままで説明されたことがなかったのだ。

 福山たちも、需要予測支援システム活用時の操作マニュアルは準備していたが、それ以上のことは考えていなかったという。

福山 「ただ受注日を入力するだけなら『データ』だけど、それをほかのデータと組み合わせて意味を見いだすと、価値ある『情報』になる。その情報を生かすことができないと、競争力はつかないんだよ。『強いサンドラフト』を実現するなら、うまく情報を活用しないとね。これを理解して入力してもらわないと、せっかく情報系システムを作っても、ただのデータ保管箱にしかならないんだ。う?ん、でも『そもそも、情報系システムとは何か?』なんて説明してたら、営業の人たちには敬遠されそうだなぁ」

谷田 「そうですよねぇ。『データを価値ある情報にする。それを活用することが重要だ』って部分がポイントだと思うので、ここだけでもうまく説明できないかしら……」

福山 「そういえば、サンドラフトの谷橋さんから送ってもらった資料の中にDFDがあったな。あれが使えるかもしれない」

谷田 「DFD? えーっと、データフローダイヤグラムでしたっけ? 勉強会のときに用語は教わったけど、本物は見たことがないんです。それが役に立つんですか?」

 DFDとはシステム間のデータの流れに着目して作られる図である。データ同士の関連性や入出力が図で表現されているので、システムの専門家でない谷田たち営業部員でも、具体的な流れがイメージしやすいはずだ。福山はノートパソコンを持ってきて、DFDを画面に表示して見せた。

谷田 「これですか? 記号や線がいっぱいで、私にはさっぱり分からないんですけど……」

福山 「A3用紙にびっしり描かれてるからね。量が多いから見づらいだけで、受注データに関係するものだけピックアップすれば、すぐに分かると思うよ。ほら、ここに四角く囲まれた『顧客』から矢印が出ている個所がある。矢印の上には『受注データ』って書いてあるだろう? ここから矢印をたどって、いらないものは消していこう」

 福山はその場で手早くDFDを編集した。必要な情報だけを残して、順を追って見ていくと、確かにこれなら谷田にも分かりそうだ。

谷田 「福山さん、この資料を頂いてもいいですか? まだ少し難しいので、ちょっと工夫してみたいんです。もう少し分かりやすければ、私でもみんなに説明できそうだし」

福山 「どうぞどうぞ。うまく作ってくれれば、こっちでも利用者マニュアルや教育に取り入れたいな。良い資料を期待してるよ!」

 自分がやるべきことが見えてきた谷田は、福山に丁寧に礼をいって席へ戻った。本当はお礼にランチをご馳走させてもらえないか、と申し出てみた。しかし、

福山 「そんなに気を使わなくてもいいよ。それに普段忙しい分、昼休みは深田さんと一緒の時間を作ろうと思ってるんだ」

 と、あっさりととぼけられてしまったのだ。

 福山も坂口同様の仕事人間らしいが、大事な人への気配りという点では、坂口よりも柔軟なのかもしれない。深田をうらやましく思う谷田だった。

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