シンクロン、既存システムを使い、利益の出るフローを構築コマツも採用、グローバルサプライチェーンを効率化

» 2009年03月05日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 サプライチェーン・ソリューションを提供するシンクロンは3月5日、建機メーカーのコマツが、シンクロンのサプライチェーン管理ソリューション「Global Order Management」を採用した、と発表した。昨年半ばから導入コンサルティングを開始し、今夏には稼働開始予定。コマツでは、受発注関連事務コストの低減、エンドユーザーまでの納期短縮などを見込んでいるという。

 スウェーデンに本拠を置くシンクロンは、サプライチェーン関連製品に特化したソリューションベンダ。ボルボ、スカニアなど、鉱山・建設機械、自動車、産業プロセス機械メーカーなどを中心に、96カ国に100社以上のユーザー企業を持つ。今回コマツが採用したGlobal Order Managementも、鉱山機械メーカーのアトラスコプコが導入して、販売経費を80%削減するなど、すでに多数の実績を持っているという。

 Global Order Managementは、1社の中でもSAP、Oracleなど、メーカーの異なるERPやデータベースを混在して使用しているケースが多い中、SOAによってあらゆる既存システムと接続、情報のプラットフォームを1つに統合する製品。これにより、販売店やサプライヤなど、サプライチェーンのプレイヤー間のスムーズな情報連携、一元管理を実現するという。日本支社代表のマシュー・L・ロジン(Matthew L.Rosin)氏は次のように解説する。

 「サプライチェーン上には、販売店、倉庫、工場、サプライヤなど、様々なプレイヤーが存在している。しかもコマツのようなグローバル企業では、こうしたプレイヤーが世界中に散在するほか、メーカー側も各国に拠点を持ち、それぞれが異なるシステムを使っているケースが多い。従来、こうしたシステム同士の連携は難しいとされてきたが、Global Order Managementならシステムを問わず接続、連携し、メーカーをはじめ、サプライチェーンの全関係者に統一されたインターフェイスを提供できる。いわば既存システム群の上に、共通のプラットフォームを乗せるようなイメージだ」(ロジン氏)

 大きな特徴は、導入前に緻密なコンサルティングを行うこと。「効率的なビジネスプロセスを設計し、それに忠実に、短期間で実装を行う」(ロジン氏)という。具体的には、ワークフローを設計するためのツール「ビジネス・プロセス・ワークベンチ」、ワークフローの実行を担うランタイム環境「ビジネス・プロセス・エンジン」、ユーザー側の充実した操作環境を実現するWeb 2.0 AJAX対応のGUIフレームワーク、以上3つをワンセットとした「Business Process Platform」と呼ぶソリューションを使う。

 中でも鍵となるのが、ワークフローを設計するツール、ビジネス・プロセス・ワークベンチだ。シンプルで分かりやすいUIを備え、これを基に顧客企業のニーズを聞きつつ、効率のよいワークフローを設計するという。

写真 ワークフロー設計ツール、「ビジネス・プロセス・ワークベンチ」で、こうしたビジュアルを基に効率的なフローを設計する

 また、一連のワークフローにおける各イベントも、掘り下げていくと、例えば「電子メールの受信・返信」など、さらに細かな“マイクロフロー”で構成されている。シンクロンでは、このマイクロフローを実行する多数のサービス・ライブラリを、ソリューションとしてあらかじめ用意。ワークフロー設計後は、必要なサービスをイチから構築するのではなく、サービス群の中から必要なものを選び、組み合わせ、実装することで、設計したワークフロー実行環境を短期間で構築できる点を最大の特徴としている。

写真 既存のサービスと新しいサービスをレゴブロックのように組み合わせ、そのまま短期間で実装できる

 「具体的には、まず顧客企業の業務上のニーズを分析して、あるべきワークフローを設計する。そのうえでワークフローをマイクロフローにまで分解し、現状で足りないサービスをライブラリからピックアップする。それを既存システムで提供されている既存のサービスと、レゴブロックのように組み合わせて、新しいワークフローの実行環境を構築する。あとはビジネス・プロセス・エンジンがあるため、実装から稼働まで非常に短期間で行える。コンサルティングも含めて約6ヶ月で導入可能だ」(シンクロン本社 ビジネス開発担当上級副社長のホカン・アムナス氏)

写真 日本支社代表のマシュー・L・ロジン氏(右)と、シンクロン本社 ビジネス開発担当上級副社長のホカン・アムナス(Hakan Amnas)氏

 今回、採用を決定したコマツにも、「複雑なビジネスプロセスを妥協せずにサポートでき、迅速に実装できる」ことが高く評価されたという。シンクロンでは、Global Order Managementのほかにも、サプライチェーン計画管理、グローバル価格管理、マスタデータ管理などのソリューションをラインナップしているが、現在、日本国内ではすでに10社の引き合いがあるという。 

 ロジン氏は「現在、世界的な不況により、製造業をはじめとする各社がコスト削減、収益性向上に取り組んでいる。その点、弊社なら、既存システムを有効活用しながら、低コスト、短期間で収益性を向上させる強力な支援ができる。2012年には日本国内でも25億円の売り上げを目指したい」と話している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ