ソフトウェア・エー・ジーは4月23日、単行本「SOA Adoption for DUMMIES(誰でも分かるSOA導入)」の日本語版を発行したと発表した。「ロケットを打ち上げ、軌道に乗せるまでには、いくつかの危険なポイントがあるように、SOAにも配慮すべき導入プロセスがある」という考え方に基づいた同社独自のアプローチ、“SOAロケット・サイエンス”に沿ってSOAの実践方法を解説した書籍で、今後、同社の主催・協賛イベントで来場客に配布するという。また、今回の発刊に伴い、10日間に渡ってSOA導入のコンサルティングを行う「SOA導入支援サービス」も開始する。
近年、SOAという言葉はかなり浸透した感が強い。同社によると、「北米や欧州の大企業では、今後12カ月以内に導入予定という企業も含めると、その約80%がSOAの導入に乗り出しているという調査結果もある」という。「SOA Adoption for DUMMIES(誰でも分かるSOA導入)」を著した、米ソフトウェアAG バイスプレジデント 最高戦略責任者のミコ・マツムラ氏は次のように解説する。
「IT関連の新しい概念やテクノロジーは、登場当初はユーザーに積極的に受け入れられるが、やがて懐疑的な視線にさらされる。その後も残ったものは、有益なものとして広く啓蒙されていくというプロセスをたどる。いま、SOAはこの啓蒙されるべき時期にあるのではないか。特に近年、企業の統合や合併が盛んに行われている。競争も激化し、企業のITシステムはますます複雑になっている。異なる業務プロセス、ITシステムを効率的な形に統合するSOAが、いま啓蒙されるべきことは必然といえる」
日本においても状況は同じと言えるだろう。企業間競争を勝ち抜くための相次ぐ機能拡張により、多くの企業でシステムが複雑化している。加えて、昨今の不況により、多くの企業がコスト削減を求められている中、「コストを掛けずに機能拡張するには、既存システムをうまく組み合わせて実現するしかない」といった考え方に自ずと向かいつつある。
しかしSOAが注目される土壌にありながら、その実践事例が現時点ではあまり聞こえてこない。この要因として指摘されているのが「人の問題」だ。既存システムは各業務部門の業務内容や業務プロセスに最適化されている例が多い。それらを統合すると、部門によっては従来とプロセスが変わってしまったり、その結果、効率悪化につながってしまう恐れもある。SOAを実践するには、そうした前提に基づいた部門間の調整や合意獲得が必須となるが、これがなかなか難しいと言われている。
マツムラ氏は、「IT関連組織においても同様の問題がある」と指摘する。自分が担当しているベンダ製品、所属しているビジネスユニット、コンサルタントなどITにかかわる立場などによって“部族”が形成され、他の部族に対して支配的なスタンスになりがちなのだという。
「SOAというと“システムをうまく統合すること”と考えがちだが、統合するのはキカイだけではない。ビジネスの在り方や、それによってもたらされる利益の在り方も統合しなければならない。すなわち、“人”という要素をどれほど巧みにシステムにインテグレーションできるか否かが、SOAの鍵を握っている」
同社独自の導入アプローチ、“SOAロケット・サイエンス”も、そうした観点に基づき、SOAガバナンスにもっとも重点を置いているという。具体的には、新しいポリシーを定めたら“部族グループ”間に合意を形成し、実施させ、そのうえで再び新しいポリシーを追加するといった具合に、自社ビジネスの理想像に向けて、進路を確認・修正しながら段階的に、しかし確実にポリシーやプロセスを浸透させ、“人を含めたシステムの統合”を図っていくのだという。
「SOAガバナンスを軸に据えて着実に取り組めば、システムの無秩序な複雑化を防ぐことができる。SOA Adoption for DUMMIESにはその要点をまとめてあるが、今後注力していくSOA導入コンサルティングでは、その具体的な方法を各社に即した形で提供していく。ビジネスプロセス統合プラットフォームのWebMethodsや、データストレージのAdabasなど、数多くの企業に自社製品を導入してきた経験を生かして、SOAの取り組みを強力に支援していきたい」(マツムラ氏)
なお、SOA導入支援サービスは、「計画」が3日間、「検証」が5日間、「提案」が2日間の計10日間にわたって実施し、価格は160万円(税別)だという。
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