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» 2009年12月22日 12時00分 公開

インドオフショア事情を聞く:中国にはまねできない“英語力と海外ノウハウ”で勝負

世界同時不況の影響で開発コストが大幅に削減され、開発コストや運用コスト削減を目指して中国やインドへオフショアリングする企業も多い。今回は、中国と並んで日本におけるオフショア開発受託国であるインドのオフショア事情について、インドオフショアベンダ大手のタタコンサルタンシーサービシズジャパン社長である梶正彦氏に聞いた。

[大津 心(@IT情報マネジメント編集部),@IT]

 世界同時不況の影響で、2009年のIT予算は前年比20〜30%減という予測が主流だ。そのような状況下、システム開発コストや運用コスト削減を目指して、中国やインドへオフショアリングする企業も多い。

 今回は、中国と並び日本におけるオフショア開発受託国であるインドの有力ベンダ、タタコンサルタンシーサービシズジャパンの代表取締役社長 梶正彦氏に、インドオフショア開発事情などについて聞いた。

ITサービス分野で存在感を増すインド勢

 インド・ムンバイに本社を置くタタコンサルタンシーサービシズは、インドの3大財閥であるタタグループのITサービス提供会社。世界42カ国に14万人の社員を要する。英語が得意なインド人の特性を生かし、欧米を中心にITアウトソーシングサービスを提供している。

ALT タタコンサルタンシーサービシズジャパン
代表取締役社長 梶正彦氏

 タタコンサルタンシーサービシズの売上高が急成長しているため、現在では米国のITサービス企業で20位以内に入る。梶氏は「中国は製造業が強いので、“理系人材の就職先の選択肢”が数多くあるが、インドでは理系人材の多くがIT分野に進んでいる。しかも、母国語と同等程度に英語を扱える点も、欧米のITアウトソーシングサービスを手掛けるうえで大きなアドバンテージになっている」と指摘する。

 この人材に目を付けたIBMやHPなどが、2〜3年前から積極的にインド内で人材を獲得。同国内での勢力を伸ばし、現在IBMインドはインドで2番手の売上高や人員を抱えるにまで事業規模を拡大しているという。そして、これらの企業に共通するのは「利益率の高さ」だと梶氏は指摘する。高い利益率で多くの利益を確保した“インドベンダの投資余力の大きさ”が、今後のIT業界において大きな強みになっていくというのだ。

“グローバル化”の定義が変わってきている

 このように欧米を中心に好調な実績を積んでいる同社だが、日本では“英語の壁”もあり、苦戦している部分もあるようだ。同社の最大の強みは、「インドの豊富なIT人材と、欧米で鍛えられたアウトソーシングのノウハウ」だ。しかし、日本でシェア拡大するためには、「営業力の強化と業務知識を増やさなければならない」という調査結果も出ているという。

 この点について梶氏は、「日本はなかなか難しい市場だ。しかし、昨今の経済情勢の影響で変わり始めてきている兆候がある。例えば、製造業はいままでは“自分たちが良いと思うもの”を作って海外に売り、それが受け入れられてきた。しかし、世界的にニーズが多様化し、現地のニーズをより細かく取り込んだ製品設計をしなければ、そのニーズに応えきれなくなってきている。インドで販売する車であれば、インドのニーズを組み込んだ設計・製造をしなければ、売れなくなってきているのだ。そのためには、現地におけるマーケティングの強化や、英語によるコミュニケーション能力を含めてもっとグローバル化しなければならないことに日本企業も気付き始めている」と指摘する。

 この兆候はすでに出てきており、同社にもグローバル化を意識した企業から「すべてのやりとりを英語でするようにしてくれ」という要望も寄せられてきているという。「このようなグローバルサポートは、同じくオフショアを手掛ける中国ベンダには難しい点だ」(梶氏)と語り、インドオフショアベンダのメリットをアピールした。

グローバル企業をサポートしたい

 オフショア化が進む米国の場合、ITサービスは3割がオンサイトで行い、残り7割をオフショアで実施するケースが多いと梶氏は説明する。その際のコスト面を考えると、オフショアに出した7割の部分が約半額になり、35%のコスト削減が実現するものの、初期投資費用が10%程度かかるので、トータルで見ると初年度のコストは前年比で75%程度。その後数年で50〜55%になるケースが多いという。

 梶氏は「日本の場合、翻訳作業のコストなどが入るので初期投資が多くなりがちだ。初年度は前年比80〜100%になるケースも多い。またオンサイトのコストも高めだ。これのような高コスト体質では、海外企業に対抗できる利益率を出すのは難しい」と説明し、この点を改善しなければ競争力を失う可能性もあると指摘する。

 また、同社の今後の展開について、梶氏は「前述したように、いまやグローバル化の定義が大きく変わってきている。一方で、日本の国内市場は高齢化や少子化で先細りは必須の状況であり、特に金融・製造・流通の業界はいまや海外進出が必須になってきている。当社では、現在課題となっている営業力や業務知識を強化し、きめ細かいサービスを提供することで、このような企業に対して、当社の強みである豊富な海外ノウハウと海外ネットワークを活用してサポートしていきたい」と語り、展望を示した。

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