ソフトウェア関連の動きとしてもう1つ無視できないのは、ソフトウェアの「おまけ化」でしょう。
安価に利用できるクラウド基盤が存在すると、ビジネスのバリューチェーンの中心に存在する企業は、そこに連なる企業に対して無償に近い形で業務遂行に必要なソフトウェアを提供していくのではないかということです。
例えば、楽天の加盟店は、そのEC関連のソフトウェアに対して使用料を払っているわけではありません。
あくまでもソフトウェアは「おまけ」で、重要なのは楽天市場というオンラインモールでモノを売ることなのです。別の観点から見ると、ソフトウェアは一種の囲い込みのためのツールになっているともいえるでしょう。
現在のように、わざわざサーバを用意しなければならないのならば、このおまけとしてのソフトウェア提供はごく一部に限られた現象ですが、クラウド基盤が整ってくると多くのバリューチェーンでこの流れが加速していくことでしょう。
社内に大規模なシステムを保有するということが時代遅れになっていくと、これまでの大手SIerのビジネスモデルは根本的な転換を要求されます。
サーバは売れず、ミドルウェアはクラウドに吸収され、アプリケーションも低価格なSaaSで提供されるということになると、SIが活躍できる可能性があるのは、以下の3種類になるでしょう。
いずれにしろ、ハードウェアベンダと並んで大きな影響を受けそうなのがSIerです。ハードもSIもやっているNECや富士通といった日本の業界の代表企業は、二重に変化の大波をかぶることになり、次の10年はまさに試練の時代となることでしょう。
以上、長々と思考実験をやってみましたが、当然すべての予想が当たるはずはありません。
しかし、前提としている次世代クラウド基盤は遅かれ早かれ実現するでしょうから、その存在を仮定したうえで何が起こるのかということを継続して考えていく必要があると思います。
変化が起こるところにはチャンスもピンチも存在します。ピンチをできるだけ回避し、新たなビジネスチャンスをつかむために、これは今後も繰り返し議論されていくテーマになるでしょう。
本記事は、ビートレンド株式会社が発行するメールマガジン「【Betrend】 ひらめき わくわく通信 Vol.61 および 62」から、@ITが許諾を得て転載したものです。
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