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» 2010年04月22日 12時00分 公開

ITユーザーのためのメンタル管理術(1):「いつでもどこでも仕事ができる」がつらい人たちへ (1/2)

ITの進展で業務環境はずいぶん便利なものになった。しかし、いつでもどこでも仕事ができるうえ、人に聞かなくても必要な情報が手に入るという環境は、ともするとストレスの原因にもなり得る。本連載はITを使って業務を行う人すべてに向けて、健康的に仕事に取り組むためのさまざまなヒントを紹介していく。

[小関由佳(NIコンサルティング),@IT]

ユビキタス革命がもたらした大ストレス時代

 日本は「働き過ぎ国家」といわれてきましたが、うつ病や自殺者が増えた原因も「働き過ぎにある」という説がありました。そのために以前から労働時間は減る傾向にあり、1997年にはほとんどの企業に週休2日制が導入されていたこともあって、現在は週40時間労働が一般的となっています。ところが、全般的に労働時間は減っているにもかかわらず、自殺者やうつ病患者の数には減少の兆しが見られません。つまり、必ずしも働き過ぎが原因とはいえないのです。

 その原因として「景気の悪化による生活苦やそれによるストレス」を挙げる見方もありますが、近年注目されるのは、うつ病、自殺原因の各種調査において必ず上位に入る「仕事関連――職場の人間関係」という項目です。ITを活用したコンサルティングを行う中で、私は「そうした仕事のストレスが強まった最大の原因は、ユビキタス革命がもたらした“いつでもどこでもストレス”にあるのではないか」と考えています。

 1998年、インターネット人口が1000万人を超え、1999年には2ちゃんねるが開設されました。2001年にYahoo! BBがADSLサービスを開設し、より幅広い層がインターネットを楽しめる時代になりました。時を同じくして、モバイルにも動きがありました。1999年にNTTドコモがiモードサービスを開始し、2001年にはFOMAが登場しています。

 このころには、ほとんどのビジネスマンが自宅にもインターネット回線を引き、携帯電話を持つようになりました。連絡を取りたいときには、例え電話がつながらなくても、電子メールを送っておけばよいわけですから、ITの普及によって世の中はとても便利になったのです。

 ところが、この「いつでもつながっている状態」が大きなストレスをもたらすことになりました。ユビキタス革命以前は、仕事は会社でするものでしたから、家でやろうと思えば書類や資料を持ち帰る必要がありましたし、休日に顧客から連絡が入ることも、原則ありませんでした。

 しかしユビキタス革命以降は、自宅でも出先でもPCがあれば仕事ができる環境が整ったことで、ネットにつなげば業務の関連情報や各種ツールを職場にいるのとほぼ同じように使えます。さらに携帯電話があるため、夜中でも土日でも仕事の電話が入ることがあります。

 仕事を思い付いたときに、「いまやってしまえば早い」「土日でもメールが送れて便利」と思えればよいのですが、「勤務時間外なのに、何で自分が電話に出なければいけないんだ」「何で自分が休みの日にメール対応しないといけないんだ……」と思った瞬間に、「いつでもどこでもつながっている便利な状態」が一転、大きなストレス源になってしまうのです。

ITツールの発展で人間関係も希薄に……

 「いつでもどこでも仕事ができる」ことは、働き方にも大きな影響を与えました。例えば営業部門では直行直帰が増えました。以前であれば、会社の上司に直接聞かないと得られなかったような情報も、グループウェアSFAなどの普及で、外出先でも容易に入手できるようになりました。その結果、オフィスで営業同士、チームのメンバー同士が顔を合わせる機会が減りつつあるのです。

 外出先で情報が手に入ることは便利なのですが、うれしい報告があるときに一緒に喜んでくれる人がいない、オフィスでちょっとした相談があるときに上司も先輩もいない、ところがクレームだけはすぐに上司に報告しなければならない、という環境になった会社も少なくありません。

つまり「一緒に喜ぶ機会は減る一方で、叱られる機会だけはそのまま、もしくは増えた」というケースが増えつつあるのです。

 では、内勤の人は大丈夫かというと、そうともいえません。例えば社内で褒められている人がいたら、その人に対して周りの人間も声を掛けるといった光景は、以前まではどの会社でも日常的に見られました。しかし近年は、相手がすぐ隣にいようが、お礼や励ましの言葉も含めて、すべて電子メールで済ませてしまうという環境にある企業も多く存在します。電子メールを介した声掛けでも、あればまだ良い方です。お互いの仕事に無関心で、声掛けそのものがないという企業も珍しくありません。これでは孤独感が増すばかりです。

 ITの進展に支えられたユビキタス社会の実現により、確かに業務上のコミュニケーションは飛躍的に効率化されたかのように思えます。しかし、人の心はそう単純ではありません。「いつでもどこでも仕事ができる」IT環境も、“使い方によっては”人間関係を希薄化させ、間接的に業務効率を悪化させる一因となってしまうのです。

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