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» 2010年04月22日 12時00分 公開

「いつでもどこでも仕事ができる」がつらい人たちへITユーザーのためのメンタル管理術(1)(2/2 ページ)

[小関由佳(NIコンサルティング),@IT]
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キーワードは「自律」と「承認」

 ではどうすればよいのでしょうか? 「いつでもどこでも仕事ができる」環境を有効に生かし、業務効率化に役立てるためには、いったい何が必要なのでしょう? 答えは2つあります。1つ目は「自律と自発」です。

 例えば「仕事は仕事、プライベートはプライベート」というように、仕事とプライベートをきっちり切り分ける考え方だと、どうしてもプライベートな時間に仕事が入ってきたときにストレスを感じがちなものです。しかし、ちょっと考えてみてください。仕事の時間を「拘束時間」などといい、あたかも「自分の時間ではない」ようにとらえてしまうことが、そもそもストレスの元凶なのではないでしょうか?

 従って、仕事の時間は「自分の時間ではない」のではなく、「24時間すべてが自分の資源」であり、「自分のための時間」なのだと認識を切り替えることが大切です。仕事もプライベートのことも、結局はすべて本人がやるわけですから、「トータル24時間の使い道を、すべて自分で管理している」と考えればよいのです。自分でやることを決めれば自発的に動けます。何より、上司にあれこれ“言われてやる”より、自分から進んで取り組んだ方が気分も良いはずです。

 もちろん、中には「そんなのは気休めだ」と感じる方もいらっしゃることでしょう。気休めでもよいのです。目的は、気持ちよく仕事をする状況を整えることと、ITツールを“自分を追い詰めるもの”ではなく、“自分の業務を効率化して、前向きに楽しく仕事をするための味方”に付けることなのですから。

 実際、「これは自分の時間ではない」「やらされている」と思って仕事に取り組むのと、「これも自分の時間」「自分のためにやっている」と考えて仕事に取り組むのとでは、仕事の能率もストレスの感じ方も180度変わってきます。現在、会社に行くのが憂うつな方は、ぜひ試してみてください。「すべて自分の時間だ」と意識するだけで、朝会社に行くとき、休日にパソコンを開くとき、夜に上司からの電話が鳴ったとき、確実に楽な気分で過ごせるはずです。

 一方、2つ目の答えは「お互いに承認し合えるチームワーク作り」です。うれしいこと、頑張ったことを共有し、人に認めてもらうことで、仕事に対するモチベーションが高まります。反対に何もリアクションがないと仕事に対するモチベーション、周りの人間に対する信頼感は下がっていきます。

 特に近年、「成果主義の導入による、チームワークや助け合いの精神の欠如」が問題とされています。実際に多くの企業で、隣の人やチームの人が忙しそうにしているにもかかわらず、自分の仕事が終わったら声も掛けずに帰っていくという光景が増えつつあります。このような環境では、チームのために頑張ろう、会社に貢献しようというモチベーションは維持できません。互いに承認し合い、チームとしての成長を促せるような環境が必要なのです。

 このことは、個人レベルだけではなく、企業という組織体にとっても存続が懸かった重要な課題といえます。

成果主義によって、個人のアウトプットが把握しやすくなった半面、人と人のかかわりが希薄になった分、“会社組織全体としてのアウトプット”があまり意識されない傾向が強まっているのです。むろん、会社は成長するかもしれません。しかし、個々人が進んで協力し、互いの価値を掛け合わせる力が低い――つまり“人と人のネットワークにより生ずる価値”を生み出せない企業は、その発展にも自ずと限界があるのです。

 1人1人が健康的な状態であり、チームワークも構築されている――そのような土壌ができていてこそ、人は積極的に仕事に取り組めますし、能率も向上します。いつでもどこでも情報をやり取りしたり共有できたりするITツールも、そうした環境があってこそ真価を発揮し、仕事を大きく後押ししてくれるのです。逆に言えば、情報共有に役立つツールを導入しても、人間関係やチームワークが自動的に構築されるわけではありません。

 ITを有効活用して業務効率を高めるためには、個々人が自らの心の在り方をマネジメントするとともに、会社の管理層がそれをバックアップする環境作りに配慮することが大切なのです。

“心のマネジメント”は業務を成功させる前提条件

 以上のように、業務はあくまで“人”あってのものです。いかにツールが進化しようと、いかなるビジネスチャンスに恵まれようと、それらに取り組む人の心の在り方次第で結果は大きく変わってきます。いってみれば、人の思考や行動を大きく左右する“心の在り方のマネジメント”は、業務を円滑に行うための前提条件であり、必須条件でもあるのです。

 しかし、ITツールの機能が年々高度化し、業務ノウハウについてもたくさんの情報が流布している中で、ツールの使い方や業務ノウハウを学ぶ機会は非常に多い半面、それらに向かい合うための“心の在り方”を考える機会は意外に少ないのではないでしょうか?

 その点にスポットを当て、業務効率を向上させるための、また、それを支援するITツールを使いこなすための下準備をお手伝いするのが本連載の目的です。今後、企業における“心の扱い方”を個人と組織、両方のレベルで考えていきます。それを通して、これまでとは少し違った角度から、会社を元気にする方法を考えてみませんか?


 次回は、心の栄養「ストローク」についてお伝えします。

著者紹介

小関由佳(おぜき ゆか)

NIコンサルティング コンサルタント。 広島大学大学院教育学研究科修了。教育心理学の研究を活かし、NIコンサルティングにて人事、採用、教育企画などに取り組み、その一環としてTA(交流分析)やNLP(神経言語プログラミング)を中心とした心理学の研究、活用を行う。特に自身の「ストローク理論」をIT日報に活用した「日報ストローク」、IT日報のコメントで上司と部下のコミュニケーションを分析する「コメント交流分析」、リフレーミング手法を日報に応用した「日報GOOD&NEW」は、心理学の企業組織への適用手法として注目を浴びている。


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