仮想化を必ず生かせる運用管理、4つの要件特集:仮想化構築・運用のポイントを探る(6)(2/2 ページ)

» 2010年12月16日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
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仮想環境独特の運用プロセスに気を付けよう

 一方、鎌田氏は、「仮想化技術の導入によって、運用プロセスも変わるものがあることに注意したい」と指摘する。その好例として4つ目のポイント「仮想環境に適した(ほかの仮想マシンに影響を与えない)バックアップ運用の実現」を挙げる。

 というのも、仮想環境のバックアップは、各業務システムへの影響を意識しながらOSを停止したり、コマンド操作を行ったりと、物理環境でのバックアップに比べて複雑な手順が求められる。また、仮想化技術によって各物理サーバのリソース利用率が向上する反面、リソースの余裕がなくなってしまう。このため、不用意にバックアップを行うと、その負荷が同じ物理サーバ上で動くほかの仮想マシンに悪影響を及ぼす可能性もある。

 そこで日立製作所では、これらの問題を解決する機能をストレージ管理製品「JP1/VERITAS」に搭載しているという。具体的には、上記のような煩雑な手順を踏むことなく、GUIを使った直感的な操作で仮想環境のバックアップ作業を行えるほか、仮想マシンの全体イメージをストレージから直接バックアップすることで、ほかの仮想マシンに負荷を与えない仕組みにしている。

 また、仮想マシンのイメージをセグメントに分割し、重複しているセグメントを排除することでデータ量を削減し、バックアップサーバのリソース使用を効率化できるほか、バックアップした仮想マシンイメージから、「全体のリストア」と「ファイル単位のリストア」を選んで実行することも可能としている。

全社のITリソースを一括管理しよう

 そして残る3つ目のポイント、「サーバ統合後も定期的にリソースを監視し、必要に応じてリソースの割り当て変更を実施する」について、鎌田氏は、「これはプライベートクラウドの基本要件となるものだ」と解説する。

 「いま、多くの企業は、物理/仮想の混在環境の稼働状況監視、問題個所の迅速な切り分けなどにフォーカスしているが、今後は全社のITリソースをプールしておき、業務の状況に応じて柔軟・迅速に割り当てたり、回収したりすることが必要になってくるはずだ。情報システム部門が全社のITリソースを一括管理し、ユーザー部門からの要請に応じて必要なリソースを手配する??すなわち、ITIL V2で示されていたサービスサポートとサービスデリバリの実現が求められるようになる」

 この考え方を反映したのがITリソース管理製品「JP1/IT Resource Management」だ。具体的には、エージェントレスで全社のITリソースの情報を収集し、空いているリソースの検索から、リソースの予約、新規割り当て、仮想マシンの配備、さらにリソースの使用実績の記録まで、一元的に行えるという。

ALT 図4 これにより、情報システム部門が全社のITリソースを一括管理する体制が築けるという。例えば、仮想マシンを配備する際も、「希望するOS種別/CPU数/メモリサイズ」など必要なスペックを入力してもらった「仮想マシンの割り当て依頼」をユーザー部門から提出してもらい、それに沿ってリソースを探し、提供する形とすれば、ビジネスのスピードアップとITガバナンスの両立を狙える

 「本製品もエージェントレスでITリソースの情報を集められる点が1つの特徴。そのため、既存システムに手を加えることなく全社のリソースを管理できる。また、こうした“情報システム部門による一括管理体制”を築けば、ユーザー部門からの『仮想マシンの割り当て依頼』を受けて提供するといった具合に、仮想マシンの配備もシステマティックに行える。つまり、ビジネスのスピードアップと、仮想マシンを乱立させないITガバナンスの徹底が狙える」

 また、本製品はITリソースの使用スケジュール管理も行える。つまり、情報システム部門は、無駄や不足を生み出しがちな“目先だけのリソース管理”ではない、先まで見越したリソース利用計画を立てられるようになる。こうした「真の意味でリソース有効活用」を考えることが重要だという。

ALT 図5 「システムリソースのライフサイクル運用」によって、リソースの使用状況を見直し続け、リソース活用の継続的な効率化に役立てる

 よって、同社では、JP1/Performance Managementでシステムの現状を把握→JP1/Integrated ManagementとPerformance Managementで障害やリソースの過不足の傾向を把握→JP1/IT Resource Managementでリソース配分を記録→次のリソース使用の効率化、運用効率化に役立てる、という「システムリソースのライフサイクル運用」を提案。「より効率的なリソース運用に向けた継続的なスパイラルアップ」をユーザー企業に促しているという。

大切なのは、運用管理の基本に忠実なこと

 なお、昨今はITインフラの複雑化を受けて、運用管理の負荷を下げる「自動化」がキーワードとなっている。同社もこれをサポートする製品として、ジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System 3」を用意。定型的な作業??例えば、仮想マシンのプロビジョニングなら、一連の処理手順を定義しておけば、仮想化ソフトウェアと連携して配備作業を自動化できるという。

 一方、自動化には、「障害対応のオペレーションを自動化して復旧作業を迅速化する」という用途もあるが、これについては「便利な反面、システムがブラックボックス化してしまうのではないか?」「最適な対処ができないのではないか?」といった不安も付きまとう。同社はこの点にも配慮し、「JP1/Integrated Management - Rule Operation」という製品を用意。作業内容をシステムに定義しておけば自動化できるほか、「Webレスポンスが低下している場合」など、人の判断が必要な局面になると、定義しておいた対処パターンの中から実行パターンを選ぶようメッセージを表示する、といった具合に、「作業の属人性を極力排除しながら、要所要所で人が判断できる柔軟な運用を可能にしている」という。

 ただ、鎌田氏は以上4つのポイントを振り返って、「仮想環境は、まったく新しい運用管理方法を求めるものではなく、従来の運用管理方法の“洗練”や“効率化”を求めるものと考えるべきだろう」と概観する。

ALT 「仮想化技術を必要以上に恐れる必要はない。運用管理の基本に忠実であれば、必ず仮想化のメリットを引き出せるはず」と語る鎌田氏≫

 「これまで使い続けてきた物理環境は今後も使い続けるわけだし、そこに仮想化技術が加わったからといって、まったく新しい運用管理方法が求められるわけではない。むしろ、環境が複雑化した分、システムの現状把握や、障害原因の特定、リソースの配備など、これまでの運用管理に、より一層の確実性、効率性が求められるようになったということだ。その意味で、今回紹介したツール群も、従来の運用管理機能をより一層、洗練させたものと言える」

 鎌田氏は最後にこのように述べ、「仮想化によって変化する作業プロセスや、それに伴う要員の教育などには配慮する必要があるが、あとは運用管理の基本に忠実に取り組んでいけば間違いないと思う。弊社としても、従来からの運用管理製品をより一層洗練させ、“当たり前”のことを確実、効率的に行える環境を提供している。オープンアーキテクチャにおける仮想化技術が先端技術だからといって恐れる必要はないと思う。ぜひ積極的にその活用に取り組んでほしい」と、ユーザー企業にエールを送った。

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