スマートデバイス業務利用の勘所レポート スマートデバイス導入セミナー(1/2 ページ)

@IT情報マネジメント編集部では2012年6月7日、東京・秋葉原の富士ソフト アキバプラザで「第17回 @IT情報マネジメントカンファレンス “活用・運用”をセットで学ぶスマートデバイス業務利用の勘所」を開催した。その要点をレポートする。

» 2012年07月10日 12時00分 公開
[取材/文:唐沢正和, 構成:@IT情報マネジメント編集部 ,@IT]

スマートデバイスのメリットを安全に享受するためのポイントとは?

 iPadやAndroidタブレットなど、企業におけるスマートデバイス採用事例が増えている。外出先での情報閲覧のみならず、既存システムの改変やクラウド化への対応によって、オフィスのペーパーレス化やフリーアドレス化に取り組む先進的な企業もある。

 だが、業務の機動性・効率性の向上というスマートデバイスのメリットは、紛失による情報漏えいなど、常にリスクと背中合わせの関係にある。かといって、管理を厳しくし過ぎれば、管理コストばかりがかさんで業務効率は低下する、といった本末転倒な事態にもなりかねない。スマートデバイスに限ったことではないが、

ツールの導入・活用に当たっては、安全・効果的にそのメリットを享受できるよう、“活用法”と“運用法”をセットで考える必要があるのだ。

 そこで@IT情報マネジメント編集部では本セミナーを企画。先進企業の導入・運用事例から「スマートデバイスの活用シーン」を具体的に解説するとともに、「リスク解消のためのソリューション」を併せて紹介することで、“スマートデバイスならではのメリット”を安全に享受するためのポイントを探った。本記事では、その要点を紹介したい。

スマートデバイスを使った業務効率向上事例

 最初のセッションには、KDDIソリューション事業本部の新井宏行氏が登壇。自社での活用例の他、金融業やロードサービス業の導入事例、スマートデバイスを活用した新技術などを紹介し、さまざまな角度から導入・運用のポイントを解説した。

KDDIソリューション事業本部 ソリューション推進本部 スマートソリューション部 課長補佐 新井宏行氏 KDDIソリューション事業本部 ソリューション推進本部 スマートソリューション部 課長補佐 新井宏行氏

 同社では、ソリューション事業本部を中心に、約2800名の社員にAndroid搭載スマートフォンとタブレットを支給。「スマートフォンの支給に合わせて、社内システムへのアクセス環境を構築し、外出先からでも必要な情報をすぐに確認可能としたことで、業務のスピードが大幅に向上した」という。一方、タブレットは、独自に開発した情報閲覧アプリによる紙資料の電子化に活用。また、RDP(Remote Desktop Protocol)クライアントによって自席PCへのリモートアクセスを実現し、「タブレットにデータを残さない安全な在宅業務ソリューションを実現した」という。

 同社ではそうした知見と技術力を生かし、さまざまな業種の企業に対してスマートデバイスの導入サービスを提供している。新井氏はその事例として、金融業の「さわやか信用金庫」、ロードサービス業の「プレミアネットワーク」のケースを紹介。さわやか信用金庫の事例では、既存の渉外システムの画面の見やすさを向上させるためにスマートフォンを導入。導入に当たって、使い勝手を高めるランチャーアプリを開発・提供するとともに、個人情報を守る強固なセキュリティ対策を講じるなど、安全性には特に配慮したという。

 一方、プレミアネットワークでは、従来、事故/故障の現場付近にいる作業車両に電話で作業を指示する“依頼型”の手配を行っていたが、時間がかかる上に口頭での伝達による人的ミスも発生していた。これを解決するためにビジネスタブレットを導入し、手配作業そのものを一新。現場付近の車両に作業内容と場所を一斉送信し、対応できる車両の中から最適な車両を選定して依頼を行えるよう改善した。連絡ミスを解消した他、手配時間が約5分から約1分に短縮されるなど、業務効率化に大きな成果を上げているという。

 最後に新井氏は、研究段階の新技術「Webブラウザ同期ソリューション(仮称)」を紹介。顧客のブラウザ画面をオペレータが遠隔操作することで、Webサイトの操作に不慣れなユーザーを支援するサービスで、OSやデバイスに依存せず、既存のWebサイトを使って手軽にオンラインサポートを導入できるという。新井氏は、これをスマートデバイスに生かすことで、携帯性の良さ、使いやすさというスマートデバイスのメリットが、顧客満足度や収益向上などにも直接的に寄与すると解説。スマートデバイスのメリットには、まだまだあらゆる可能性が開けていることを示唆した。

スマートデバイス、セキュリティ担保の秘訣とは?

マクニカネットワークス 第2営業統括部 第2部 第2課 梅本正一郎氏 マクニカネットワークス 第2営業統括部 第2部 第2課 梅本正一郎氏

 ベンダによるセッションでは、まずマクニカネットワークス 第2営業統括部 第2部 第2課の梅本正一郎氏が登壇し、スマートデバイスの本格運用を考える企業にとって大きなハードルとなる、セキュリティ対策のポイントを紹介した。

 梅本氏は、スマートデバイスの利用拡大によって企業が抱えるリスクとして、(1)管理工数の増大(2)盗難/紛失のリスク増加(3)ウイルス/マルウェアへの感染(4)Jailbreak(脱獄)/root化(5)ユーザー操作による情報漏えいの5つを指摘。これらへの対策として、(1)と(2)はモバイルデバイスマネジメント(MDM)機能、残り3つはセキュリティ機能が有効だと解説した。

 「スマートデバイスは電話機能などが付いた超小型PCと言える。従って、スマートデバイスを企業で本格運用するには、PCと同様、情報セキュリティの観点から統合管理することが重要だ」

 そうした考えにのっとったセキュリティ対策の事例として、「McAfee Enterprise Mobility Management」(以下、EMM)を導入したケースを紹介。「EMMは、MDM機能とセキュリティ機能を兼ね備えたソフトウェア。このケースでは、EMMの設定ポリシーにより、パスワードの強化、リモートワイプ、ウイルス対策、アプリケーション管理、不正利用端末の監視までを実現した」という。

 最後に、今後の拡張機能として、MDM機能では「iOS5拡張機能の制限」、セキュリティ機能では「アプリケーションのブラックリスト登録」「セキュアコンテナによる企業データの保護」などを予定していることを紹介。本格運用に向けて、スマートデバイスのセキュリティ対策を全方位的に支援できることをアピールした。

スマートデバイスの導入を見据えた認証ネットワーク

ソリトンシステムズ プロダクトマーケティング部 製品担当 竹谷修平氏 ソリトンシステムズ プロダクトマーケティング部 製品担当 竹谷修平氏

 続いて、ソリトンシステムズ プロダクトマーケティング部 製品担当の竹谷修平氏が登壇。スマートデバイスとユーザーの認証を確実化する方法として、あらためて注目されている、デジタル証明書やワンタイムパスワード(以下、OTP)を活用したソリューションを紹介した。

 まず竹谷氏は、「スマートデバイスを業務で安全に使うためには、体系的かつ複合的なセキュリティ対策が必要。用途に応じた対策を選択し、組み合わせることがポイントになる」と指摘。また、スマートデバイスのセキュリティ対策を実施する順序としては、(1)強固な認証(2)管理とセキュリティ(3)ビジネスツール導入の3ステップで進めると、安全に利用できる環境をスムーズに構築しやすいという。

 「特に、第1ステップ『強固な認証』は、“境界防御による不正アクセスの排除”が重要となる。具体的には、社内の無線アクセスではデジタル証明書認証、社外からのリモートアクセスではデジタル証明書とOPTを組み合わせた認証が効果的だ」

 同社のオールインワン認証アプライアンス「NetAttest EPS」は、こうした高度な認証環境を容易に実現できるよう開発した製品。専用オプション「NetAttest EPS-ap」を使うと、「デジタル証明書の配付・設定の自動適用」も可能となり、第2ステップ「管理とセキュリティ」まで対応できるという。

 さらに、同社では第3ステップ「ビジネスツール導入」も見据えて、ファイル転送ツール「FileZen」、ファイル共有ツール「HiQZen」、BYODを実現するツール「Dynamic Mobile Exchange(DME)」などのツール類も用意。竹谷氏はこれらを順に挙げて、“スマートデバイス業務利用のポイント”に沿った製品群を全方位的にラインナップしていることを紹介。「スマートデバイスの活用をトータルで支援する」と力強く訴えた。

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