ビッグデータ活用の主役はITでも分析官でもない業務効率化ツール最新トレンド(3)(2/3 ページ)

» 2012年08月29日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]

データ統合、データ整備……対策を考えている間も市場は動く

 確かにドライバー氏が指摘するように、今あるデータをユーザー自身が実際に見られる環境を作ることは、本格的なデータ活用に乗り出す上で有効と言えるかもしれない。

 例えば、「社内のデータソースを横断的に活用できる環境」は、ビッグデータ活用の前提条件とされているが、そのためにはデータの管理・活用を一元的に担う専門部署、コンピテンシーセンターの設置が理想とされている。だが現実には、そうした専門部署を一朝一夕に設置することは難しい。

 加えて、先に述べたように、部門によってデータの管理様式が異なるため、「業務を行う上で不便はないが、各部門のデータを掛け合わせるような分析には使いにくい」といったデータ整備の問題もある。こうしたことから昨今、「BIのやり直しの時期」とも言われているわけだが、そのやり直しも全社的なプロジェクトとなるだけに実行はなかなか難しいのが現実だ。かといって、いつまでも分析に尻込みしているわけにもいかない。

 こうした点について、ドライバー氏は、「コンピテンシーセンターの設置や、データ整備などはどうしても大がかりなプロジェクトになるため、いきなり取り組むのは難しいし実現にも時間がかかる。それよりも、まずは社内に散在しているデータを実際に使ってみることが分析に取り組む良いきっかけになるはずだ。データ活用において何より大切なのは、分析に対するスキル面、心理面でのハードルを下げ、分析という行為を社内に根付かせることではないだろうか」と話す。

データを見て、考える習慣を根付かせることが大切

 実際、同社のQlikViewもそうした「分析のハードルを下げられる」点が評価されているのだという。具体的には、使いたいデータソースを指定するだけで、複数のデータソースを自動的に統合し、1つのビューで可視化する。UIも、グラフ、チャート、テーブルなどの候補の中から、基本的にクリック操作のみで選択・設定できるため、業務部門のエンドユーザー自身で“自分の視点や知りたい結果に基づいた分析アプリ”を短時間で作成し、社内で共有することができる。データソースに変化があっても自動更新するため、常に“今”の状況を把握できる。

図2 使いたいデータソースを指定するだけで、複数のデータを自動的に統合し、1つのビューで可視化できる。業務部門のエンドユーザー自身で“自分が知りたい目的、視点に基づいた分析アプリ”を短時間で作成することが可能だ 図2 使いたいデータソースを指定するだけで、複数のデータを自動的に統合し、1つのビューで可視化できる。業務部門のエンドユーザー自身で“自分が知りたい目的、視点に基づいた分析アプリ”を短時間で作成することが可能だ(クリックで拡大)

 異なるデータソースの関連性から、前述した“予見しなかった知見”も得られる。複数のデータソースを一元的に可視化するQlikViewでは、可視化を指定したデータだけではなく、それに「関連のあるデータ」「関連のないデータ」も色分けして一度に表示する。例えば、図3のように、「加工食品の利益率」を知る一方で、「加工食品のラインナップ」や「その得意先」、「加工食品以外のラインナップ」なども一度に知ることができる。これにより、「加工食品を仕入れていない得意先」なども一目瞭然となり、ビジネスチャンスを探るあらゆる気付きが得られる。

図3 異なるデータソースの関連性から、ビジネスチャンスを探るあらゆる気づきが得られる 図3 異なるデータソースの関連性から、ビジネスチャンスを探るあらゆる気づきが得られる(クリックで拡大)

 一般的なBIの場合、扱うデータ量を削減するために、まずOLAPキューブなど、前もって明細データを統計処理した中間集計データを作成して正規化を行い、その上でレポートやクエリを設定する必要があった。業務部門のユーザーはそうした作業をIT部門やベンダに依頼しなければならず、データ活用までに時間がかかっていた。

 QlikViewの場合、独自の“連想技術”を使って“超正規化”を行う。具体的には、各データ項目とも同じデータは1つしか持たない形として、データの重複を排除するとともに、関連のある各データをリンクさせて全データを検索キーとする。これをドキュメントファイルに加工してメモリ上に展開することで、高速な演算処理を可能にしている。また、OLAPツールの場合、導入時に設計した階層構造に沿ったデータ検索しかできないが、中間集計を行わないQlikViewにはそもそも規定された検索パスがない。そのため、知りたい情報をビジュアルに可視化しながら、どんな角度からでも自由に分析できる点も大きな特徴となっている。

 「このIT部門の手を煩わせることなく、スピーディに分析環境を用意できることと、事前に設定した切り口ではなく、複数のデータソースを使って自由な切り口から一元的にデータを見られること――言わば、考えながらデータを見られることは、特にスキルがないユーザーにもあらゆる発見を促す。これは分析を身近に感じさせる上で非常に効果的なはずだ」

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