BPMのビジネスケースづくり - BPMベネフィット・チェックリスト(前編):BPTrends(5)(2/2 ページ)
BPMに取り組むに当たって気になるのが、費用対効果だ。BPMには投資するだけの価値があるのだろうか?
期待ベネフィットを確認する
BPMが提示するオペレーション上の基本的価値は、より少ない努力で、より高い品質の業務処理を、より多くこなせるようにすることにある。いまやBPMは、人員増を抑制しながらも急速な収益向上を達成しなければならない企業の基盤テクノロジとなった。
BPMを導入する企業は、3つのコアベネフィットを基準とするビジネスケース作成を行ってきた。すなわち、効率、有効性、およびアジリティである。これらの3つのベネフィットが、プロセスごとに、比率やサイクルの差として表されるのである。
■効率
BPMの展開に際し、通常、まず注目されるのが効率だ。たいていのプロセスには、手作業、部門間連携のまずさ、全体の進ちょくに関するモニタリングの不在に起因する多くの無駄がある。BPMソリューションの初期展開では、これらの問題点の削除を行う。そのベネフィットは、フルタイム相当時間(FTE)短縮の形で表されることが多い。
例えば、某ヘルスケア企業ではBPM導入初年に、従業員オンボーディング・プロセス※4において、2万1000時間(10FTE)の短縮を実現した。
※訳注4:オンボーディング・プロセス=新入社員の会社に対する理解を深めるために実施されるオリエンテーションプロセス。
■有効性有効性
プロセスコントロールの改善は、基本的効率の向上をもたらす。これが実現すれば、多くの場合、プロセスの有効性の向上が重視されることになるだろう。最も大きな成果が得られるのは、まさにこの段階である。ここでのリターンには、例外処理や意思決定の適切さに関連する表現が用いられることが多い。
あるテレコミュニケーションサービス・プロバイダでは、請求紛争処理プロセスコントロールの改善により、それまでに支払っていた償還金を四半期当たり300万ドル(約10%)節減できることを発見した。BPMの展開により、重複業務が発見され、紛争に関する調査の精度が高まり、さらに償還方針の一貫性が向上した。
規制対象となるプロセスでは、こうしたプロセスコントロールのレベルと一貫性が付加的ベネフィットを生む。正確さや一貫性を欠くプロセスの実行、あるいはタイミングを失したプロセスの実行に起因する課徴金を回避できるのだ。このベネフィットを、金額(例えば、課徴金低減額)として表示できる場合もある。しかし、たとえ財務的成果に直結できなくても、このコンプライアンス・ベネフィットが不可欠な要素として位置付けられることが多い。
■アジリティ(俊敏性)アジリティ(俊敏性)
BPMがもたらす主要ベネフィットとして最後に挙げられるのが、アジリティだ。アジリティは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)とオンデマンドの時代における汎用的コンセプトとなった。プロセスマネジメントの世界では、迅速に変化する能力が欠かせない。わが社の顧客の中には、年間4〜7回の頻度でキープロセスを変革する企業がある。
変革のドライバーは、社内要因かもしれないし社外要因かもしれない。新しいチャンスに遭遇する可能性は、常にある。新しいパートナーや顧客が、従来とは異なるビジネスの方式に関する支援を求めてくる。米国連邦政府による規制あるいは国際的規制が、プロセスの変革を求めてくるかもしれない。
BPMが提供するのは、こうしたプロセス変革の要請に、ほかのいかなる方式によるよりも迅速に、かつ整然と対応するためのプラットフォームなのだ。
もう1つ、不測の事態に応じてプロセスを変革する能力を備えた企業事例を挙げておく。ある保険代理店の例だ。この代理店では、米国内特定地域において自然災害が発生したときの損害補償判定基準を迅速に緩和できる。
状況に応じた迅速なプロセス適合能力が競争力として必須要件であることには、まず異論がないであろう。しかし、アジリティから想定されるリターンの条件は厳しく、その算定には困難が伴うかもしれない。
BPMベネフィット・チェックリスト例
次に、BPMベネフィット・チェックリスト例を掲げておく。自社で改革対象候補となっているプロセスの個別レビューや、BPMから期待できるベネフィットに関する一般的知識を得るために役立てていただきたい。
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プロセス改善を推進するためのBPM実施の選択肢は、概ね3つに大別される。プロセスまたは機能に主眼を置くパッケージの購入、既存ソフトウェア・アプリケーションの機能拡張、あるいは自社ニーズに対応するソリューションの独自開発である。後編では、この3つの方法について解説する。
【参考・引用文献】
[1]「Six Sigma: The Breakthrough Management Strategy Revolutionizing the World's Top Corporations」 Mikel J. Harry、Richard Schroeder=著/Doubleday/1999
[2]「Business Process Management's Success Hinges on Business-Led Initiatives」 Michael James Melenovsky=著/Gartner/26 July 2005
[3]「Justifying BPM Project」/Gartner/2004
[4]「Minimizing Distressed Shipments」/Lombardi Software/2006
[5]「Lombardi Raises the Bar in Human-Centric BPMS With Rapid Process Design」 Connie Moore、Colin Teubner、Kyle McNabb、Eric Kim=著/Forrester Research/2006
Original Text
Rudden, Jim. "Making the Case for BPM: A Benefits checklist." BPTrends, January 2007.
著者紹介
ジム・ラデン(Jim Rudden)
ロンバルディ・ソフトウェア社のマーケティング担当ディレクター。
訳者紹介
高木克文(たかぎ かつふみ)
(株)日本能率協会コンサルティング、テクニカル・アドバイザー。日本BPM協会 ナレッジ研究部会メンバー。グローバル・コンサルティング、リーダーシップ開発研修、ベンチマーキング・プロジェクトなどを中心に活動。戦略、組織、リエンジニアリング、学習する組織、ベンチマーキング、コンサルティングビジネスなどに関する著書、訳書、論稿、多数。
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