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決裁者の8割はROIではなく「使いやすさ」を最優先? 後悔しないIT製品選びの新常識と3つの鉄則

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ITセレクト編集部
/発注ナビ株式会社

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SaaS選定のプラットフォーム「ITセレクト」は、企業のIT・SaaS選定者やシステム担当者を対象に、「2026年 業務システム(SaaS)選びのリアル体験調査」を実施しました。

本調査から、IT・SaaS製品の選定において選定実務担当者の51.4%が費用対効果(ROI)の算出に頭を抱える一方で、決裁層の80%はコスト以上に「使いやすさ・UI/UX」を最優先しているという意外な実態が分かりました。また、導入後の定着に37%が苦労している現状など、カタログスペックだけでは見えない「選定の落とし穴」と、DXに成功している企業が共通して実践する「比較検討の成功パターン」も浮き彫りになりました。

この記事で分かること

  • SaaS導入は成功している?: 企業の約半数は効果を実感する一方で、約3割は「定着の難しさ」に直面しています。
  • 決裁者の意外な本音: 経営層/決裁者層の8割は、実は「コスト」以上に「定着」を優先する承認基準としています。
  • 製品選定の基準: 単一選定ではなく、「2〜3社以上の比較」と将来を見据えた出口戦略が不可欠です。
  • 失敗を回避する鉄則: スペックだけに惑わされず、「現場の視点」を検証することが成功への最短ルートです。また、分からなければひとりで悩まず「専門家に聞く/頼る」手段も有効です。

選定者と決裁者に大きなギャップあり?:ROIの呪縛が招く「使われないシステム」の悲劇

「このSaaSを導入して、どれだけの費用対効果(ROI)が出るのか」。IT製品の導入を検討する選定者にとって、上層部への説明で最も頭を悩ませるのがこの問いではないでしょうか。

このたび、ITセレクトが実施した「2026年度 業務システム(SaaS)選びのリアル体験調査」では、SaaS選定者の半数を超える51.4%が「ROIの算出」に不安を感じていることが分かりました。

SaaS選定計画で感じた不安や課題:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

ここには、もう1つ興味深い事実がありました。

回答者を「決裁権を持つ経営層・役員や部長層以上」に絞ったところ、彼らが最も重視しているのはコストやROIではなく、「使いやすさ・UI/UX」だったのです。なぜ、数字に厳しいはずの経営層が「使いやすさ」をこれほどまでに求めるのでしょうか。

決裁者が恐れるのはコストではなく「形骸化」

SaaSの導入において、多くの選定担当者は「目的と期待成果」「機能の多さ、できること」と「安さ/コスト、予算内であること」が承認の決め手になると考えがちです。それらは決して間違ってはいないはずです。しかし、現実の選定・承認シーンではそんな希望とは少し異なる結果になる可能性も浮き彫りになりました。

上層部が最も重視しているのはコストやROIではなく、「使いやすさ・UI/UX(80%)」でした。

製品選定時に最も重視するポイント(決裁者/経営層):ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

経営層の8割が「使いやすさ」を重視する理由

決裁者にとっての最大の恐怖は、多くの予算を投じて導入したシステムが現場に浸透せず、1円の価値も生まない「形骸化」です。

実は本調査では、実際にシステムを導入した企業・担当者の37%が「運用開始後の定着が難しかった」と回答しています。経営層や上層部が「使いやすさ」を重視するのは、決してコストやROIを軽視しているわけではなく、それが「確実に使われること──すなわち投資回収は前提条件であること」であるからに他なりません。

そのため、選定者が承認を仰ぐ際に強調すべきは、予測や算出の難しいROIの数字というよりは、「いかにこのツールが現場に馴染み、定着が約束されているか」という視点なのです。

IT導入で後悔しないための「3つの鉄則」

本調査では、製品導入後に「機能不足(18.5%)」や「オーバースペック(11.1%)」に気付いたケースも散見されました。こうしたミスマッチを防ぐため、成功している選定者が実践している3つの鉄則を紹介します。

  • 鉄則1:1社即決を避け、2〜3社を「横並び」で比較する
  • 鉄則2:「SaaSに業務を合わせる」のワナ/落とし穴を見抜く
  • 鉄則3:将来の乗り換えを見据えた「出口戦略」を持つ

鉄則1:1社即決ではなく、2〜3社を「横並び」で比較する

製品の比較検討をせず1社(1製品)のみで済ませた企業はわずか6.5%に留まっていました。対して全体の9割が複数の候補から比較を行っており、半数を超える54.8%が「2〜3社」を候補に据え、吟味していたことが分かりました。

比較検討したベンダー・製品の社数:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

1社、1製品だけの評価では、その製品の仕様や機能が「業界標準」「これしかない」と思い込んでしまいがちです。複数の製品を触り比べることで初めて、自社の業務に本当に必要な機能、不要な何かの見分けが付くようになります。

逆に、候補が多すぎても「選定プロセスが長期化、複雑化し、かえって決定打を欠く事態」に陥ります。本調査では6社以上とかなりの数の製品を比較検討した企業も16.1%存在しましたが、「社内の合意形成に苦労した」(80%)と回答した人の割合が他より突出していました。比較対象が増えるほど評価軸が複雑になり、「とても苦労する」「なかなか決まらない」「それだけに時間を取られてしまう」といった担当者の工数負荷も増大することがうかがえます。

例えば、機能網羅性の高い6つの製品をすべてトライアルし、各部門のフィードバックを並行して回収しようとすれば、評価項目の整理だけで数カ月を要することもあります。情報過多によって、本来の目的であった「課題解決」よりも「製品同士の微細な機能差の確認」に終始してしまい、最終的に選定そのものが頓挫する──いわゆる「選定疲れ」に陥ってしまうリスクも無視できません。

クロス集計_検討社数別「社内合意形成」に苦労したと回答した割合:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

効率的な導入を実現するには、事前の要件定義で候補をフィルタリングし、詳細な検証は2〜3社まで絞って行うことがバランスの良い選定プロセスと言えそうです。

鉄則2:「SaaSに業務を合わせる」の罠/落とし穴を見抜く

SaaSやパッケージソフトウェアの標準機能に自社の業務を合わせる「Fit to Standard」(フィット・トゥ・スタンダード)という手法は、導入コストを抑え、常に最新の機能を利用するための「DX(デジタルトランスフォーメーション)の正攻法の一つ」として知られています。しかし、これには注意点があります。

実は本調査の“失敗点”を問いたパートのフリーコメントでは、「標準機能に苦労して合わせた結果、現場の業務が回らなくなった」という声が意外と多く寄せられたのです。

「業務フローとの整合性」を軽視した際のリスク相関:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

会社には、変えてはならない自社の強み、業界・業種の慣例、複雑な承認プロセスも多くあります。急激なプロセス変更は現場の反発も招きます。無理にツールに合わせる考え方“だけ”では、現場の定着(前述した、上層部が真に望む壁の打破)が難しくなる面も多くあるのです。

鉄則3:将来の乗り換えを見据えた「出口戦略」を持つ

「一度導入すれば、永遠に使い続けられるシステム」は存在しません。今回の調査でも、システム導入目的の多くは「老朽化した既存システムの刷新」でした。つまり、今検討している最新システムも、数年後には「刷新の対象」になるということです。

SaaS導入検討の主な目的:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

選定時に多くの担当者が見落としがちで、後になって大きな足かせとなるのが、他システムへ切り替える際の「データの持ち出しやすさ」です。「ベンダーロックイン(特定企業の製品に依存し、他社への乗り換えが困難になる状態)」のリスクです。

本調査では、導入後に「機能不足や連携性の不具合が判明した(18.5%)」という声も意外と多く挙がっていました。数年、数カ月単位でもビジネス環境が激変する可能性がある昨今、導入したツールが自社の成長スピードやニーズに追いつかなくなる可能性も常にあります。その際、出口戦略がないと以下のような悲劇を招きます。

  • データの「人質」化: 蓄積した顧客情報や業務ログを汎用的な形式(CSVなど)で一括出力できず、データ移行のために膨大な手入力作業や数十万~数百万円規模の追加費用が発生する。
  • 変化への対応遅延: より優れたAIツールや外部サービスが登場しても、現在のシステムからデータが抜けないために、古い非効率な環境を使い続けざるを得なくなる。

後悔しない選定のためには、導入時点で「次のシステム刷新も想定」しておくことが勧められます。具体的には、以下の3点をチェックリストに加えてみてはいかがでしょうか。

  1. データの所有権と出力機能: ユーザ自身がいつでも、追加費用なしで全データを一括エクスポートできるかどうか。
  2. API連携の公開性: 外部のBIツールや最新の生成AIなどと、スムーズにデータ連携ができる機能、方法が用意されているかどうか。
  3. 独自カスタマイズの範囲: システムを自社専用に作り込みすぎると、将来のデータ移行難易度が高まることにも注意。前述した「標準機能(フィット・トゥ・スタンダード)」の考え方は、出口の扉を広く保つ観点でとても有効な方法でもある。

決裁者の80%が求める「使いやすさ」とは、単に簡単に操作できたり、画面デザインがきれいなことだけを指すのではありません。時代の変化に合わせて、自社の重要な資産である「データ」を自由に、最適に活用し続けられる柔軟性こそが使いやすさの真意なのです。これが投資を無駄にしないための出口戦略といえます。

SaaS導入・運用後に判明した想定外だった課題:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

SaaS導入によって「40.7%」が業務効率化を実感 成果の中身は?

IT製品の導入は苦労も多いですが、それを乗り越えた先には着実な成果が待っています。導入済み企業の40.7%が、最大の成果として「業務効率化」を挙げました。

導入したIT製品で特に効果・成果を実感したこと:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

ここで特筆したいのは、「直接的なコスト削減」を成果として挙げた企業はわずか7.4%に留まったことです。一見すると投資に見合わない結果のようにも映りますが、そうではないでしょう。これは現代のIT投資における「健全な変化」の表れであると言えます。

なぜ「コスト削減」を上回る価値があるのか

かつてのIT導入は「ペーパーレス化による経費削減」といった、目に見える支出を削ることが主目的でした。しかし、本調査の結果が示したように、近年のSaaS導入の真価は人件費や消耗品費といった項目の単純な削減ではなく、従業員を付加価値の低い単純作業から解放し、より戦略的で質の高い業務へシフトさせる「時間の再分配」にあります。

時間の再配分とはどういうことでしょう。生産年齢人口が急減する日本のビジネス環境において、ITやAIによる効率化は単なる「節約」ではなく、既存のリソースで成長を継続するための「生存戦略」そのものといえるからです。

本調査で40.7%の企業が実感している「業務効率化」の裏には、移動時間の削減による営業訪問数の増加や、手入力作業の自動化によるミス防止といった、数値化しにくいものの企業の競争力を直結させる「質の向上」が隠されています。

また、14.8%の企業が挙げた「データ活用の強化」も、将来的なROIを最大化する、重要でとても意味のある先行指標といえます。

直近の支出削減に一喜一憂するのではなく、ITを「コスト(費用)」ではなく、従業員1人あたりの生産性を高める「資本(投資)」として捉えること。この視点の転換こそが、導入後の満足度を左右する分岐点となります。

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(参考)業種・業界別に見る「IT製品の選定基準」の違い

IT製品の導入意向は、業種・業界別でかなり異なる結果も見られました。

2026年現在、全体的に「AIツール」や「ローコード/ノーコード」への関心がとても高くなっています。しかし、各業界が抱える固有の課題によって注力領域に意外と大きな差がありました。代表的な業種・業界をピックアップして紹介します。

現在検討中、拡充予定のIT製品の領域:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

情報サービス業:テクノロジーによる「営業力」「開発力」の両輪を強化

ITリテラシーが比較的高めと思われるこの業種では、他業種と比べても突出して「AIツール(生成AI、RAGなど)」の導入・検討意向が非常に強く見られました。

 中でもポイントは二極化しています。1つは「AI」と「CRM/SFA/MA(顧客管理・営業支援)」を組み合わせた販売力の最大化。もう1つは「ローコード/ノーコード」活用による開発プロセスの効率化です 。

最新技術をいち早く自社の武器として取り込む機動力こそが、この業種・業界の選定基準の核となっています。

製造業:現場主導の「デジタル化」と基幹システムの刷新

製造業においてニーズが突出していたのは、アナログだった社内手続きをデジタル化する「ワークフロー」と、現場や担当者が自ら業務アプリを作成し、運用するシーンに向けた「ローコード/ノーコード」でした。

この業種・業界の長年の課題とされる「現場の属人性」を解消するため、ERP(統合基幹業務システム)や販売・製造管理といった重厚な基幹システムの刷新を見据えつつも、現場主導でプロセスを改善する「ボトムアップ型のDX」を強力に推進したいニーズが強く伺えます 。

金融業・保険業:全社的かつ多角的な「全方位DX」の実行

金融・保険業の企業では、一度の検討でERPやCRMといった大型システムから、AIツール、ワークフロー、勤怠管理、経費精算まで、極めて広範な領域をまとめて検討する傾向が強くみられました。

これは、部分最適ではなく、全社的なガバナンス強化とデータ活用を目的とした「包括的なトランスフォーメーション」を目指すニーズによるものと考えられます。

卸売業・小売業 / サービス業:顧客接点の質を高める投資

卸売業・小売業・サービス業の企業は、直接の売上に直結する「フロント業務の強化」に向けたニーズの高さが目立ちました。

卸売業や小売業では、ECプラットフォームの導入による販路拡大が優先されるとともに、店舗スタッフを適正に管理するための勤怠管理システムへ注力する意向が強く見られました。

また、教育や学習支援などを含むサービス業においても、在庫や販売管理といった基本機能に加え、顧客・会員管理システムや予約管理システムへの投資が加速しています。

業種別 IT製品の「重点投資カテゴリ」の違い:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

導入する製品のカテゴリーには違いがありますが、SaaS選定のシーンでは、総じてこれらの対策によって顧客との接点(エンゲージメント)をデジタル化することでサービスの質を根本から高めようとする考え方がより鮮明になっています。

調査概要

  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査期間:2025年9月29日~10月15日
  • 調査対象:企業のIT・SaaS選定者、発注者、システム担当者
  • 有効回答数:68件
  • 調査元:発注ナビ株式会社、アイティメディア株式会社

まとめ:「選定者の自信」が組織のDXを加速させる

まとめ_SaaS導入の成否を分ける3つのポイント:ITセレクト-SaaS選びのリアルユーザー調査2026

  • 1社即決を避け、2~3社を「横並び」で比較する
  • 「SaaSに業務を合わせる」の落とし穴を見抜く
  • 将来の乗り換えを見据えた「出口戦略」を持つ

SaaS選定は、単なる「道具選び」ではありません。現場の働き方を変え、経営層が求める成果を導き出すための「組織変革プロジェクト」です。もしあなたがコストの精査やROIの算出で悩んだり迷ったりしているのであれば、少し視点を変えてみてください。決裁者の8割は、あなたを含めた事業部門やチームが「これです!」と持ってきたツールの「真の使いやすさ」をプッシュしてくれることに期待しています。

そして、IT選定において9割の企業が既に実行しているように、複数を比較し、現場が「これならば毎日使える」と太鼓判を押す製品を選び抜くことが重要です。そのプロセスこそが、決裁者を納得させ、自社を成長、成功へつなぐ道といえます。

最後に、分からない、迷ったとしても一人で抱え込まないようにしてください。「そこで止まってしまう」からです。遠慮なく同僚、上司、他部署、IT部門、詳しい人など頼れるメンバーを巻き込んで進めていきましょう。外部の専門家や比較サイト・サービスに頼ってしまうことも賢明な近道です。

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