CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理システム)は、業務の効率化や売上向上に役立つ便利なツールです。しかし、導入コストが気になり、検討をためらう企業も少なくありません。この記事では、クラウド型・オンプレミス型・自社開発型のCRMの費用相場を比較し、それぞれの特徴やコストを抑える方法を詳しく解説します。
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CRMの費用相場を確認|導入形態ごとの違い
CRM(顧客関係管理システム)は、顧客情報や取引履歴などを一元管理し、営業活動やマーケティング、カスタマーサポートの質を高めるための重要な手法です。顧客との関係性を深め、売上向上や業務効率化を実現するうえで欠かせない存在となってきました。しかし、一口にCRMといっても導入形態はさまざまで、それによってかかるコストも大きく異なります。
大まかには「クラウド型」「オンプレミス型」「自社開発型」の3種類があり、企業の規模やITリソース、セキュリティ要件、求めるカスタマイズ性などによって最適な選択肢が変わってきます。ここでは、各形態の特徴と費用相場をわかりやすく紹介し、導入検討時に抑えておきたいポイントを解説します。
ここに記載する費用はあくまで一般的な目安であり、提供ベンダー、プラン、機能、利用人数、カスタマイズの有無など多くの要因によって大きく変動します。正確な費用を知るためには、必ず複数のベンダーから見積もりを取得し、比較検討しましょう。
この1ページで解決CRMの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
クラウド型CRMの費用相場
クラウド型CRMは、インターネット経由でサービス(ソフトウェアの機能)を利用する形態です。ベンダー側がシステムを用意していることから、自社でサーバを保有し、システムを構築し、運用・管理する必要がありません。導入のハードルが低く、スモールスタートにも向いているため、昨今は大企業、中小企業、個人事業主などを隔てなくにも広く選ばれるようになっています。
クラウド型は初期費用が0円から数十万円程度の場合が多いです。「初期費用がかからない/無料」である製品も珍しくありません。設定のサポートを依頼したり、データ移行やトレーニングをベンダーに任せる場合は追加で数万円から数十万円程度の費用がかかるケースもあります。
月額費用は、1ユーザーあたり数百円程度からが一般的ですが、高機能な製品・プランでは1ユーザーあたり1万円を超えることもあります。これは、クラウド/SaaS型製品の特徴となる、機能数やサポートレベルによって変動する=必要な機能を必要な分だけ使う=使わない機能・サービスは省いてコストカットできる、という考え方の料金体系である仕組みに由来しています。
ユーザー数単位の形態は利用する人数が増える分だけかかることになるので、従業員数が多い企業は注意が必要です。10人まで同額、100人までいくら、○○プランならば人数上限なしといった要素を設ける製品・プランもあります。
なおこのことは、会社が急成長する、あるいは冬季シーズンのみ従業員が増えるようなユーザー数変動が大きな企業にとって、容易にスケールアップ/スケールダウンがしやすいメリットでもあります。さらに、多くのベンダーは無料トライアルを提供しているため、導入前に操作感や機能の適合度を確認しやすいのも特徴です。
このように、ITシステムにおける基礎設計・構築・運用までを一貫してベンダーが担ってくれるため、自社でIT担当者や技術者を多く配置しなくても、活用シーンによっては「なし」でも済むのがクラウド型の魅力です。その反面、ユーザー数が増加した場合や、追加機能が必要になった場合のオプション費用が高くつくことがあります。将来的な利用規模も含めて費用対効果を検討していくと良いでしょう。
オンプレミス型CRMの費用相場
オンプレミス型は、自社自身でシステムを導入する形態です。セキュリティポリシーを厳しくしたい企業、細かい部分まで深くカスタマイズが必要な場合とともに、旧来よりあるシステム導入の方法となります。まず、自社単独で、あるいはSIer・開発会社を通して「自社独自に構築」するには、かなり多くのITリソースと初期投資が必要になります。
オンプレミス型では、初期費用として、ソフトウェアのライセンス購入費、サーバの調達費用、ネットワーク環境構築費、システム構築費などがかかり、総計で数十万円から数百万円、大規模なシステムでは数千万円規模の場合があります。
一方、ランニングコストは既に自社で構築済みであることから「低く抑えられる」という考え方ができます。しかしソフトウェアの保守契約やライセンス更新費、通信コスト、社外パートナーなどへの保守管理費などがあるので「ゼロ」では済みません。年間数万円から数十万円程度の保守・ライセンス費用が見込まれるケースが多いです。サーバ運用の人件費や障害対応の費用も必要になるため、クラウド型とは異なるランニングコストが発生します。
ともあれオンプレミス型は、自社が求める機能要件、セキュリティルールに沿って運用できるよう「自社で設計」できます。独自の環境、他の社内システムなどと緊密に連携しやすいといった利点もあります。
業務上、非常に厳格な対策が求められる金融機関や官公庁、大企業などが選ぶことが多いのはこのオンプレミス型です(もっとも、クラウドが導入手段として登場する前から既にオンプレミス・自社開発型で構築・運用していたであろう背景もあります)。初期投資は大きくなるものの、長期的に見ればランニングコストを一定に抑えられる可能性があるため、数年スパンのTCO(総所有コスト)で比較・検討することが大切になります。
自社開発型CRMの費用相場
自社開発型CRMは、企業独自の要件に合わせてシステムを一から作り上げる方式です。オンプレミス型とニーズや特徴、運用フローは似ていますが「ソフトウェアも自社で設計する」ことが違いと言えます。
高度な機能や独特の業務プロセスへの対応が必要で、既製のクラウド型やオンプレミス型ではカバーできない場合に検討されます。最も自由度が高い反面、開発コストと開発期間が非常に大きくなるでしょう。要件定義、設計、開発、テスト、導入支援までをすべてオーダーメイドで進めるため、必要な工数=費用が膨らむ傾向にありますが、やはり「自社のニーズ通りに構築できる」ことが最大の利点です。
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CRMのコストを抑えるためのポイント
CRMは導入にあたって多かれ少なかれ費用がかかります。しかし、必要な機能を見極め、複数ベンダーを比較検討することで、コストパフォーマンスの良い選択をすることが可能です。ここでは、コストを抑えるために重視したいポイントを紹介します。
- 必要な機能を明確にする
- 複数のベンダーから見積もりを取る
必要な機能を明確にする
CRMには、顧客管理、商談管理、スケジュール共有、マーケティングオートメーション、分析ツールなど実に多彩な機能が備わっています。機能が増えるほど導入費や月額費用が高くなる傾向です。
そのため、まずは自社が「どの課題を解決したいのか」「最優先で実装したい機能は何か」を明確にすることが重要です。たとえば、顧客情報の一元管理が最優先なら、基本的なデータベース機能や担当者ごとの活動履歴記録機能をまず抑えるのが得策です。MAや高度な分析レポートなどは、予算や導入目的を見直しながら、クラウド型ならば後で別ツールやオプションの追加などで対策する方法もあります。機能を厳選すれば余計なコストを発生させずに済みますし、ユーザーが混乱するほど複雑なシステムになってしまうのを避けることにもつながります。
複数のベンダーから見積もりを取る
同じ「CRM」で分類される製品・サービスであっても、ベンダーによって機能、価格設定、サポート範囲が大きく異なります。
そのため、自社の要件を定めた上で、3社程度からは見積もりを取得し、価格だけでなく「その金額でどんな機能が含まれているか」「追加オプションやサポートはどれだけ必要になるか」「既存のシステムとの連携費用はどうなるか」など、比較軸を明確にして評価するようにすると良いでしょう。
隠れた費用がないかをチェックすることも重要です。たとえば、データ移行費やトレーニング費用、API連携の追加費用などが発生するケースがあるため、ベンダーに事前に確認しておけば、後から予想外の出費に戸惑うリスクを下げられます。
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CRMを導入するメリット
CRMは費用がかかる分、企業の業務効率や顧客との関係性を劇的に向上させる可能性を秘めています。ここでは、代表的なメリットをご紹介します。
- 顧客情報の一元管理で対応スピード向上
- 営業活動の効率化と成約率アップ
- チーム間の情報共有がスムーズに
- 顧客ごとに適したマーケティング施策を実施できる
- カスタマーサポートの質を向上できる
- データに基づいた経営判断がしやすくなる
顧客情報の一元管理で対応スピード向上
従来、顧客情報や問い合わせ履歴が社内のあちこちに散らばっていると、担当者の異動や引き継ぎのたびに情報の抜け漏れが生じたり、同じ内容を顧客に何度も質問してしまうケースがありました。CRMを導入すると、顧客との過去のやり取りや購入履歴、クレーム情報が一つのプラットフォームに集約されるため、担当者が変わってもすぐに状況を把握できます。結果として、顧客対応が迅速かつ的確になり、顧客満足度が高まる効果が期待できます。
このメリットを最大限に活かすには、日常的なデータ入力のルールや定期的なデータ品質チェックが欠かせません。データが最新かつ正確な状態で維持されれば、どの部門・担当者でも迷わずに情報を活用できるようになります。
営業活動の効率化と成約率アップ
営業活動を「担当者それぞれの経験と勘」に任せているだけでは、属人的になりがちですし、組織全体として成約率を底上げすることも難しくなります。CRMを使うことで、見込み顧客(リード)を効率的に管理し、営業パイプラインを可視化できるようになります。
たとえば、「商談成立までの進捗状況」や「どんなアプローチが有効だったか」「失注の原因は何か」といった情報を分析し、成功パターンを全チームで共有することで、営業活動全体のレベルアップを図れます。また、定型的なフォローアップメールやタスクの自動リマインドなどを仕組み化すれば、担当者の負担が減り、本来注力すべき顧客対応により多くの時間を割くことが可能です。結果として、一件あたりの商談クオリティが上がり、最終的な成約率を高めることにつながります。
チーム間の情報共有がスムーズに
顧客の問い合わせに対して、営業部門が対応している途中でカスタマーサポート部門に引き継いだり、マーケティング部門が獲得した見込み客情報を営業に渡したりする場面は多いものです。CRMを活用すれば、これらの情報が一元化されるので、担当者や部署が変わってもスピーディーかつ正確に引き継ぎが行えます。社内の情報が「サイロ化」せず、どの部門も同じ顧客情報を参照できるようになると、各部署が連携して顧客満足度を高める戦略を立てやすくなります。顧客視点に立った統一感のあるサービス提供が可能になることで、顧客との長期的な関係性が築きやすくなるでしょう。
顧客ごとに適したマーケティング施策を実施できる
CRMに蓄積されたデータは、営業だけではなくマーケティング施策の高度化にも大きく貢献します。過去の購買履歴や問い合わせ内容、Web上での行動履歴などをもとに、顧客を細かなセグメントに分けられるからです。それぞれのセグメントに合わせてパーソナライズされたキャンペーンやメール配信を行えば、マスマーケティングより高い反応率が見込めます。
たとえば、定期的に購入している顧客にはリピート特典を案内し、一度だけ購入して離脱傾向にある顧客には再購入を促すクーポンを送るなど、適切な施策をタイミングよく行えるのがCRMの強みです。このように、顧客一人ひとりの属性・行動履歴を踏まえたコミュニケーションを続けることで、顧客ロイヤリティやLTV(顧客生涯価値)を高めることができます。
カスタマーサポートの質を向上できる
顧客からの問い合わせは、営業には見えない背景情報や、過去のクレーム履歴などが大きく影響する場合があります。CRMを使えば、サポート担当者が一目で顧客の基本情報と対応履歴を把握できるため、初回の問い合わせから的確にサポートを提供しやすくなります。
顧客に何度も同じ説明をさせるような負担をかけずに済むため、対応満足度の向上にも直結します。さらに、問い合わせ内容を分析すれば、製品やサービスの改善点が浮き彫りになったり、顧客の潜在ニーズを知るきっかけになったりします。蓄積されたデータは、経営戦略や商品開発にも活用できますし、FAQやナレッジベースの整備による自己解決率の向上を目指すことも可能です。
データに基づいた経営判断がしやすくなる
CRMには、顧客とのやり取りから得られる定量・定性のデータが大量に集まります。これらのデータをレポート機能やBIツールと組み合わせることで、売上予測や顧客離反率の推定、商品ごとの収益分析など、経営判断に役立つ情報を可視化できます。
勘や経験に頼るだけでは見落とされがちなリスクやチャンスを、データから発見できる点は非常に大きなメリットです。また、リアルタイムでKPIをモニタリングすれば、機動的に施策を打ち出しやすくなります。たとえば、売上が急に落ち込んでいる領域があれば、担当者に迅速に対策を促すことができますし、顧客からのクレームが増えている場合には、原因を突き止めて早急に改善策を講じることができます。経営層だけでなく、現場でもデータをもとに意思決定ができる文化が根付くと、企業全体がより機動的かつ顧客志向で動けるようになります。
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CRMの導入にはコストがかかりますが、業務効率化や売上向上につながるメリットがあります。適切なツールを選ぶことで、顧客満足度向上にも繋がります。中には無料トライアルを実施している企業もありますので、一度試したうえで自社にマッチしているか、検証すると良いでしょう。そして適切なCRMを選び、業務改善を行っていきましょう。
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