近年、企業のマーケティング活動において、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入が急速に進んでいます。MAツールは、見込み顧客の獲得から育成、リードの抽出までのプロセスを自動化し、マーケティング業務の効率化を実現するためのソリューションです。BtoBはもちろん、BtoCの領域でも広く活用されており、企業のマーケティング戦略において欠かせない存在となっています。
しかしながら、MAツールを導入すれば必ずしも成果が出るわけではありません。導入の仕方や運用方法によっては、期待した効果が得られない場合もあります。
そこで本記事では、効率的なマーケティングを実現するために、MAツールの導入メリットや注意点、導入の流れについてを詳しく解説し、併せておすすめの13製品(2025年5月時点)をご紹介します。
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目次
MAツールの基礎知識
近年、業種や企業規模を問わず、マーケティング活動の強化を目的に「MAツール(マーケティングオートメーションツール)」の導入を進める企業が急増しています。では、MAツールとは具体的にどのような仕組みで、なぜここまで必要性が高まっているのでしょうか。本項では、その基本概念からSFA・CRMとの違い、導入が求められる背景までを整理して解説します。
MAツールとは?
MA(Marketing Automation)ツールは、見込み顧客(リード)の獲得・育成・スコアリング・選別といった一連のマーケティングプロセスを自動化し、より少ないリソースで成果を最大化するためのツールです。
具体的には、Webサイトへの訪問履歴や資料ダウンロード、メールの開封履歴などをもとにリードの関心度を把握し、スコアに応じた適切なタイミングでのアプローチを実現します。これにより、従来属人的で時間がかかっていたマーケティング業務の効率化が図られます。
MA ツールとCRM、SFAの違い
MAツールと混同されやすい関連システムとして、CRM(顧客関係管理)およびSFA(営業支援システム)があります。いずれも顧客情報を扱いますが、それぞれの役割とカバー範囲は明確に異なります。
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MAツール:
主に見込み顧客(リード)を対象とし、初期接点の創出から育成、商談化直前までのプロセスを自動化。BtoB、BtoC問わず新規リード獲得の質と量を向上させます。 -
CRM(Customer Relationship Management):
既存顧客との関係維持・拡大を目的とし、顧客満足度の向上やロイヤルティ向上に向けた、顧客情報の蓄積、分析、施策の最適化が主な機能です。 -
SFA(Sales Force Automation):
商談の進捗管理や営業アクションの可視化を通じて、営業効率の向上を支援。MAで育成されたリードを「商談〜受注」へと導くための実務支援ツールです。
これら3つのツールは、マーケティングと営業を分断するのではなく、連携・統合することで最大の効果を発揮します。
MAツールが必要とされる背景
MAツールの導入が加速する背景には、マーケティング環境の大きな変化があります。
- インターネット・モバイルの普及により、顧客の購買行動が多様化・複雑化
- データ活用の重要性の高まりにより、ログ解析や行動分析のニーズが増加
- 属人的な営業・マーケティング手法の限界が浮き彫りに
- 顧客接点のデジタル化によって、パーソナライズされた情報提供が不可欠に
このような環境下では、人手に頼った従来型のマーケティング活動では対応しきれません。多様なチャネル・大量のデータをリアルタイムに処理・活用するためには、MAツールによるオートメーション化が不可欠となっています。
MAツールは単なる「作業効率化」のツールではなく、「成果を最大化する戦略支援ツール」として、現代のマーケティング活動における基盤となりつつあります。今後の営業DXを見据えた際にも、MAツールの正しい理解と活用が、企業競争力を大きく左右する要素になるでしょう。
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MAツールの主な機能
マーケティング活動の効率化と精度向上を実現する「MAツール(マーケティングオートメーションツール)」には、多様な機能が搭載されています。ここでは、一般的なMAツールに備わっている主要機能について、実務での活用例とともにご紹介します。
- 見込み客の管理機能
- アクションの配信・送付機能
- Webページ/LP作成機能
- スコアリング機能
- レポート機能
- 他ツールとの連携機能
見込み客(リード)の管理機能
MAツールの基本機能のひとつが、展示会・セミナー・Web広告など多様なチャネルを通じて獲得した「リード(見込み客)」の情報を一元管理する機能です。取得した企業名や担当者の属性、接触経路などを蓄積・分類し、営業活動や後続の施策に活用します。
この管理対象は主に“新規の見込み客”であり、既存顧客や過去取引先などのデータは、通常CRMツールで管理されるケースが多くなっています。
アクションの配信・送付機能(メールマーケティング)
リードに対して、自動または手動で適切なタイミングで情報を配信できるのがMAの強みです。以下のような配信施策に対応します。
- セグメントごとのメール一斉配信
- 資料請求後のフォローメール(ステップメール)
- 特定条件に基づくターゲティングメール(パーソナライズ配信)
これにより、リードのフェーズや興味関心に応じた最適な情報提供が可能となり、コンバージョン率の向上につながります。
Webページ/ランディングページ(LP)作成機能
一部のMAツールには、HTMLや専門知識がなくても、簡単にWebページやフォームを作成できる機能が搭載されています。資料請求用LPやセミナー申込フォームなど、リードとの接点構築に欠かせないWebコンテンツの自社内制作が可能になります。
これにより、マーケティング施策のスピードと柔軟性を高め、PDCAサイクルを加速できます。
スコアリング機能
リードの行動履歴(例:メール開封、ページ閲覧、資料ダウンロードなど)をもとに、自動的にスコアを付与することで、受注確度を数値化する機能です。
スコアに応じてホットリードの優先度を可視化できるため、営業部門にとって効率的なアプローチ判断が可能になります。営業とマーケティングの連携強化にも貢献します。
レポート・分析機能
MAツールには、蓄積されたリードデータや施策結果を視覚的に可視化するレポーティング機能が備わっています。開封率、クリック率、コンバージョン率などのKPIをもとに、施策ごとの効果を定量的に評価し、次のアクションに活かすことができます。
他ツールとの連携機能
MAツールは、SNS、広告配信ツール、CRM、SFAなどとのAPI連携が可能です。これにより、顧客データや施策情報をシームレスに連携し、業務全体のデータ統合・効率化を実現します。
たとえばSNS連携では、投稿反応やフォロワー情報の可視化により、SNSマーケティングのROI分析にも対応。媒体が多様化する現代のデジタルマーケティングにおいて、連携機能の充実はツール選定時の重要なポイントとなります。
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MAツールを導入するメリットと注意点
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、企業規模や業種を問わず、多くの企業が導入効果を実感しているマーケティング支援ツールです。マーケティング手法が複雑化・多様化する現代において、MAツールを上手く活用することで、リード数の拡大や受注率の向上といった具体的な成果を生み出すことが可能です。
ここでは、MAツールの導入によって得られる主なメリットと、導入時に留意すべきポイントを整理して解説します。
MAツールを導入する主なメリット
- マーケティング業務の自動化による効率化
- データに基づく精度の高いアプローチ
- 営業部門とのスムーズな連携
- 業務の標準化と属人化の防止
マーケティング業務の自動化による効率化
メール配信、スコアリング、リードナーチャリングなどの業務を自動化できるため、マーケティングチームの負担を軽減し、戦略的業務へのリソース集中が可能になります。
データに基づく精度の高いアプローチ
MAツールに搭載された行動分析・スコアリング機能を活用することで、リードの関心度やフェーズに応じた適切な施策を実行できます。これにより、無駄のないアプローチによる効率的な顧客獲得が実現します。
営業部門とのスムーズな連携
マーケティング部門と営業部門が同一のリード情報をリアルタイムで共有できるようになり、組織全体でリードの取りこぼしを防ぐ体制を構築できます。営業プロセスへの引き継ぎもスムーズになり、商談化率の向上にもつながります。
業務の標準化と属人化の防止
自動化されたワークフローにより、対応のばらつきや担当者依存の業務プロセスを回避できます。業務品質の均一化と再現性のある施策運用が可能になります。
MAツールを導入する際の主な注意点
- 初期・運用コストの負担
- 人材リソースの確保と教育
- 継続的なPDCAと運用体制の確立
初期・運用コストの負担
MAツールは月額課金型が主流で、導入後も継続的なランニングコストが発生します。特に中小企業では、長期的な費用対効果を慎重に見極めたうえで導入を検討する必要があります。
人材リソースの確保と教育
MAツールを有効活用するには、戦略設計、コンテンツ作成、データ分析などのスキルを持つ人材の確保と育成が不可欠です。導入初期は運用設計や教育に一定の時間と人的リソースを要するため、社内体制の整備が必要です。
継続的なPDCAと運用体制の確立
一度導入すれば終わりではなく、成果を出し続けるには定期的な施策の見直しと改善が求められます。運用担当者の業務負荷やノウハウ蓄積が継続的に必要になる点も想定しておくべきです。
MAツールの導入は、単なるIT投資ではなく、自社のマーケティング変革(マーケティングDX)の一環として捉えるべき取り組みです。期待効果を最大限に引き出すためには、事前の目的設定と体制構築が不可欠です。社内の課題やリソース状況を踏まえたうえで、着実に導入を進めましょう。
自社に合ったMAツールを選ぶポイント
マーケティング活動の効率化がMAツールの主な目的ですが、ツールによって搭載する機能は異なります。期待する成果を上げられるよう、自社にあったツールを選びましょう。
- 自社のビジネスに適した機能を持っているか
- 他のツールや外部システムと連携できるか
- 予算内で希望の機能を搭載できるか
- データの量や保有期間は適切か
- サポート体制が充実しているか
自社のビジネスモデルに適した機能を持っているか
MAツールに搭載されている機能は製品ごとに異なりますが、大きくBtoB(対企業)向けとBtoC(対消費者)向けに分類されます。
多くのBtoB向けツールは、法人顧客の情報や案件の管理、名刺情報の集計と共有といった機能に特化しています。あくまで企業単位での取引を前提とした情報管理を行う点が特徴的です。
一方、BtoC向けツールは管理する情報が個人単位となり、購買履歴の管理やSNS・広告との連携機能に強い傾向があります。BtoBに比べ単価が低く、短い購買プロセスの管理に最適化されています。
ターゲットによって必要とされる機能が異なりますので、MAツールを選ぶ際には、自社の課題解決にあった機能が搭載されているか確認しましょう。
他のツールや外部システムと連携できるか
MAツールの効果を最大化するためには、CRMやSFAといった他のツールとの連携が不可欠です。いずれかのツールで獲得した顧客データを共有し、それぞれのフェーズにあったアプローチができるよう、自社で使用している他のシステムとの連携ができるか確認しておきましょう。
予算内で希望の機能を搭載できるか
MAツールには豊富な機能が搭載されていますが、全業態ですべての機能が必要なわけではありません。機能が増えるほど導入や継続使用のための必要なコストが上がるだけでなく、機能を使いこなすための社員の学習コストも引き上がる可能性があります。
MAツールは価格帯ごとのラインナップも豊富ですので、予算内で自社に必要な機能を使えるツールを選びましょう。
データの量や保有期間は適切か
MAツールで扱うデータ量は、BtoBとBtoCで大きく異なります。BtoBにおけるリード数は数千~数万件であるのに対し、BtoCでは数万~数十万件まで増えることも珍しくありません。
データ量が増加すると管理コストが増えるだけでなく、異なる管理手法が必要になる場合があります。また必要な保有期間が長ければ、管理にかかるコストも比例して増加します。自社のビジネスモデルやマーケティング手法に最適であるかという点も、MAツールを選ぶ際には重要な視点です。
サポート体制が充実しているか
MAツール使用中のトラブルシューティングの方法は、事前にある程度決めておくべきです。ベンダーから十分なサポートを受けられない場合、トラブルが起きるたびに業務がストップするおそれがあります。
手厚いサポートを受けられるのであれば安心ですが、ベンダーによってはサポートを最小限にしてコストを抑えていたり、サポート費用を別メニューで設定したりする場合があります。また、サポートを受けるための前提知識を社内に蓄えておく必要もあるため、スタッフへ教育する必要があるでしょう。
導入前には、必要なサポートレベルの選択と社内体制の構築も視野に入れた検討を行う必要があります。
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Adobe Marketo Engage
月額 / 初期費用 | 要問い合わせ |
マーケティング対象 | BtoB、BtoC |
主な機能 | ・リード管理
・リスト作成・管理 ・コンテンツの自動提供 ・セグメント、スコアリング ・メールマーケティング ・LP・フォームの作成 |
システムの特徴 | ・AI予測による適切なコンテンツの提供
・注目度の高いリードを検出しアラートを発出 |
無料トライアルの有無 | 要問い合わせ |
主な特徴 | Adobe Marketo Engageは、アドビ社が提供するMAツール。一般的なリード管理に加え、詳細に管理されたセグメントごとに一部文言を変えたメールを送信できるなど、細かいリードナーチャリングが可能です。直前にフォームに入力したユーザーなど見込みが高いリードを自動的に検出し、関係者にアラートで周知する機能がある |
ベンダーのWebサイト | https://business.adobe.com/jp/products/marketo/adobe-marketo.html |