
経費精算システムとは、交通費や出張費、交際費など、業務にかかわる経費の申請・承認・精算・会計処理を一元管理できるITツールです。従来は手書きやExcelで行われていた精算業務をクラウド上で効率化し、作業負担の軽減や不正防止、内部統制の強化に貢献します。
本記事では、経費精算システムの主な機能と種類、選ぶポイントなどについて解説します。併せておすすめの経費精算システム/製品(全15製品/2025年3月時点)も一緒に紹介します。ぜひ参考にしてください。
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目次
経費精算システムの主な機能
経費精算システムは、経費の申請から承認、精算、会計連携までを一元管理できる多機能なツールです。代表的な機能は以下の通りです。用途別に解説していきます。
- 申請機能
- 承認機能
- 精算機能
- 領収書の読み取り・電子保管機能
- 通知機能
- 自動仕訳機能
- 経費分析機能
- 他データとの連携機能
- 他システムとの連携機能
申請機能
申請機能は、従業員が経費の種類、金額、利用日、用途などを入力し、領収書画像を添付して申請できるようにする機能です。スマートフォン対応やカメラでの撮影・アップロードに対応した製品も多く、外出先からの即時申請が可能です。
承認機能
承認機能は、上長や管理者が経費申請の内容をオンラインで確認・承認できるようにする機能です。申請内容に応じて承認ルートを自動で分岐させたり、差し戻し時にコメントや添付ファイルを追加したりすることも可能です。
精算機能
精算・振込機能は、申請・承認された経費の支払い処理を自動化する機能です。立替金の自動振込や、インターネットバンキング用の振込データの自動作成に対応し、経理担当者の負担を大きく軽減します。
領収書の読み取り・電子保管機能
この機能は、OCR(文字認識)技術を用いて領収書データを読み取り、自動入力や電子保管を可能にする機能です。多くの場合、2022年改正の電子帳簿保存法にも対応しており、紙の保管不要なペーパーレス経理を実現します。
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通知機能
通知機能は、経費申請の締め切りや承認・差し戻しなどのステータス変更を、メールやアプリのプッシュ通知で関係者に知らせる機能です。申請遅延や承認モレの防止に役立ちます。
自動仕訳機能
自動仕訳機能は、申請時に選択された内容に応じて、勘定科目や部門コードなどを自動で仕訳登録できるようにする機能です。経理担当者の確認作業だけで済むため、処理時間とミスを削減できます。
経費分析機能
経費分析・可視化機能は、蓄積された経費データを部門別・用途別にグラフや表で可視化し、傾向や異常値を把握できるようにする機能です。経費削減やルール見直しに役立ちます。
他データとの連携機能
外部データとの連携機能は、交通系ICカードや法人カードなどの外部サービスと連携し、利用履歴から自動で交通費データを生成できるようにする機能です。乗換案内ツールと連携することで、経路選択だけで交通費の申請が完了する製品もあります。
他システムとの連携機能
他システムとの連携機能は、会計ソフトや給与計算システムとAPIやCSV形式で連携し、精算データを自動で反映・処理できるようにする機能です。経理や人事の業務負荷を軽減し、バックオフィス全体の効率化に貢献します。
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経費精算システムのメリット
経費精算システムの導入によって、業務を効率化でき、実際に作業を行う申請者や承認者とともに、経理担当者や経営者にとっても大きなメリットがあります。ここでは、それぞれの立場ごとに経費精算システムを導入する主なメリットについてご紹介します。
申請者のメリット
経費精算システムは、申請者(従業員)の手間を大幅に削減するメリットがあります。紙の申請書作成や領収書の糊付け・提出が不要になり、申請はスマートフォンやPCから完結可能です。多くの製品がレシート画像のアップロードや交通費自動入力に対応しており、記入ミスや提出漏れの防止にもつながります。
- 従業員の手間を大幅に軽減できる
- 紙の申請書や領収書貼付が不要になる
- スマートフォンやPCから簡単に申請できる
- 入力ミスや申請漏れを防止できる
承認者のメリット
経費精算システムは、承認者が申請内容を迅速かつ的確に確認・処理できるメリットがあります。承認作業はクラウド上で完結し、モバイルアプリ対応製品であれば外出先からでも即時に承認が可能です。さらに、自動ルート分岐や差し戻し機能により、不正や誤申請の早期発見にも貢献します。
- クラウド上で承認作業が完結する
- 外出先からでもスマホで承認できる
- 自動ルート分岐で確認の手間を軽減できる
- 誤申請・不正申請の防止に貢献する
経理担当者のメリット
経費精算システムは、経理担当者の業務を効率化し、人的ミスの削減に役立ちます。申請データは自動で計算・仕訳処理されるため、手入力作業が不要となり、会計システムや給与計算システムと連携することで、仕訳・給与反映・精算などの一連業務を自動化できます。結果として、バックオフィス全体の業務効率が向上します。
- 手入力作業を削減し、業務効率を向上できる
- 自動計算・自動仕訳で人的ミスを防止できる
- 会計ソフトや給与システムと連携可能
- バックオフィス業務全体を最適化できる
経営者のメリット
経営者、管理者は、経営判断のための「正確なデータ」を得られます。また、データの一元管理体制により、不正や改ざんの抑止力にもなります。企業として、内部統制やコンプライアンスの強化につながることが大きなメリットです。
- 経費データをリアルタイムに可視化できる
- 経営判断に必要な正確な情報が得られる
- 不正や改ざんの抑止につながる
- 内部統制やコンプライアンスを強化できる
経費精算システムの主な種類
経費精算システムは、大きく分けて「クラウド型」「オンプレミス型」「パッケージ型」の3種類が挙げられます。それぞれの種類によって特徴やメリットが異なるため、自社に適した種類を選ぶことが大切です。ここでは、経費精算システムの種類についてご紹介します。
クラウド型
クラウド型は、インターネット上に構築されたシステムまたはソフトウェアの機能を「利用」するタイプの経費精算システムです。月額定額制の料金プランを申し込めばすぐ利用でき、初期費用やトータルの運用費用を抑えやすいメリットがあります。
クラウド型はインターネット環境があれば使用できるので、いつでも、どこでも、どんな端末でも、例えばリモートワークや外出先などでも業務を進行しやすいことも特徴です。本記事は主に「クラウド型」の導入シーンを想定し、内容を解説していきます。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社のサーバにシステムを構築して展開する従来型のシステム導入手法です。自社独自の構築・運用するとき、特に高度なカスタマイズ性やセキュリティ性を求めるときに用いられます。
クラウド型に対して一から機材を揃えてシステムを構築するため、初期費用が多くかかり、プロジェクト計画の規模や予算も大掛かりなものになるでしょう。「自社の持ち物」なので、クラウド型のような月額利用料的なコストは発生しませんが、システムに用いるソフトウェア(データベースソフトウェアなど)の利用プランによっては、またシステム全体の保守、管理費用、人件費は規模に応じたランニングコストは相応に発生します。
パッケージ型
パッケージ型は、パッケージ型ソフトウェアを購入して自社既存のPC・サーバーにインストールするタイプです。完成したサービスを購入して利用する「買い切り型」とも呼ばれます。クラウド型、オンプレミス型に対して機能や利便性は限られますが、導入コストは低く、機能さえ満たせれば、個人事業主単位や部署単位などの小規模な導入シーンに適します。
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経費精算システムを選ぶポイント
近年、経費精算システムを導入する企業が増加しており、さまざまな経費精算システムが提供されています。そのため、どの製品、システムを利用すべきかか迷ってしまう人も多いはずです。
経費精算システムを導入する際には、「選び方」も重要な要素です。ここでは、「経費精算システムを選ぶポイント」について詳しくご紹介します。
経費の入力がしやすいか
せっかくITシステムを導入しても、定着しない、これまでの方法より使いにくいのでは効果を生み出せません。経費精算システムの導入を検討するならば、まず「自社にはどんな要件や課題があるのか」と「どう自社の使い方やニーズに合わせるか」の点が重要になります。経費精算システムでは、やはり「従業員が経費申請を簡単に、ミスなく行えるか」の点を確認しましょう。
近年、ニーズが高く、経費の入力がしやすくなり、業務の負担も軽減するために「要件」として挙がることが多い機能は以下の通りです。
- 交通系ICカードと連携して交通費精算を行える
- スマホのカメラで領収書を撮影するだけで自動入力される
- 従業員のクレジットカードや法人カード、決済アプリの連携に対応している
- 外貨による支払いに対応している
自社の承認フローに適しているか
多くの経費精算システムには、従業員の経費申請を楽にする機能とともに、会社・管理側向けに「申請が正しいかどうか」を確認し、承認するフローを楽にする機能も含まれています。
ただし「承認」のフローは、企業によって必要な手順や作法に差異があります。「自社の承認フローに適しているか」観点の機能確認も重要なポイントです。
フォーマットや承認フローを柔軟に変更できる、カスタマイズできるシステムを選べば、運用していくうえでよりよいルール化が可能になり、業務の効率化につながります。
既存のシステムと連携できるか
経費精算システムで扱う情報は、会計業務や給与計算業務とも密に関わります。そのため、既にある会計システムや給与計算システムと密に連携できれば、さらなる業務の効率化が望めます。既存システムと「どう連携できるか/そもそも連携できるか」を確認しましょう。データ入力の省略化と連携の強化は、手間やミス、さらには違法行為の軽減、防止につながります。業務効率化の観点、企業コンプライアンス順守の観点からも、既存システムとの連携を考察することは欠かせない要素です。
十分なサポート体制があるか
新しいシステムを導入するとなれば、これまでの業務フローが大きく変わることも起こり得ます。効率的かつ効果を出す運用を目指すことを軸に、製品、あるいは料金プランにどんなサポートメニューがあるか、どこまでサポートしてくれるか、ここは選定候補とするベンダーにじっくりと聞いて、「サポート体制に不足、不安がないかどうか」を確認しましょう。
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運用コストの抑制に効く経費精算システム6選
経費精算システムを導入する際には、運用コストに注目し、コストパフォーマンスをきちんと測って導入することが大切となるでしょう。ここでは、運用コストを抑えて利用できると評価のあるおすすめ経費精算システムをご紹介します。(更新順/2025年6月時点)





















