労務管理の負担を減らし、業務をスムーズに進める対策として「クラウド型労務管理システム」が注目されています。従来の紙やExcelを使った面倒なアナログ型の管理と比べ、データの一元化やリアルタイムでの情報共有が可能になり、勤怠管理や給与計算、社会保険手続きがより簡単になります。
本記事では、クラウド型労務管理システムの基本機能、導入によるメリット、選び方のポイントをわかりやすく解説します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
クラウド型労務管理システムの概要
クラウド型の労務管理システムの特徴やシステムが広がる理由について紹介します。
クラウド型の労務管理システムとは
クラウド型労務管理システムとは、インターネットを通じて利用するクラウド上で、従業員の労務管理業務全般を行うシステムを指します。従来のオンプレミス型とは異なり、自社で物理的なサーバーを設置する必要がなく、インターネット環境さえあれば、オフィス内外を問わずどこからでもシステムにアクセスできる点が大きな特徴です。この手軽さから、導入時の初期費用を抑えられる点も、多くの企業にとって魅力となっています。
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クラウド型の労務管理システムが広がる理由
労務管理と一口に言っても、その業務範囲は多岐にわたります。クラウド型労務管理システムは、単に従業員の出退勤時間を記録・管理する勤怠管理のほかに、従業員の入社や退社に伴う諸手続き、社会保険や労働保険の手続き、煩雑な年末調整業務、さらには雇用契約の締結といった業務まで幅広くカバーします。
さらに、近年では、従業員のスキルや経験を一元的に管理し、人事評価や最適な人材配置、育成計画などに活用できるタレントマネジメント機能まで搭載したシステムも登場しており、労務管理の枠を超えた、より戦略的な人事戦略を支援するツールへと進化しています。このように、クラウド型労務管理システムは、単なる業務効率化ツールとしてだけでなく、企業の人材戦略全体を支える基盤としての役割も担うようになっています。
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クラウド型と従来型システム(オンプレミス)の違い
労務管理システムには、クラウド型の他にオンプレミス型と呼ばれる導入形態があります。オンプレミス型は、自社内に物理的なサーバーを設置し、購入したソフトウェアをインストールして運用・管理する方式です。一方、クラウド型では、システムを提供する事業者が用意したサーバーやソフトウェアを、インターネットを通じて利用します。導入の手軽さ、運用にかかる手間、コスト構造、セキュリティ面などに違いがあります。
以下の表にクラウド型とオンプレミス型の違いについてまとめました。
比較項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
初期費用 | 低いまたは無料 | 高い |
ランニングコスト | 従業員数に応じた月額課金 | 保守費用、サーバー維持費など |
対象企業規模 | 中小企業、成長企業など | 大企業、セキュリティ要件の高い企業 |
長期的な費用 | 従業員数増加により増加 | 従業員数に左右されにくい |
導入期間 | 短い、アカウント作成後すぐに利用可能 | 長い、サーバー構築やインストールが必要 |
運用管理 | サービス提供会社が実施 | 自社で実施 |
カスタマイズ性 | 比較的低い | 比較的高い |
セキュリティ | サービス提供会社に依存 | 自社でコントロール可能 |
アップデート | 自動アップデート | 自社で対応 |
アクセス | インターネット環境があればどこからでも可能 | 社内ネットワーク内のみ |
拡張性 | 容易に拡張可能 | サーバーの増強などが必要 |
保守・メンテナンス | サービス提供会社が実施 | 自社で実施または外部委託 |
クラウド型労務管理システムの主な機能
クラウド型労務管理システムには、日々労務管理業務を効率化し、企業の成長を支える多岐にわたる機能が搭載されています。ここでは、具体的な機能について詳しく見ていきましょう。
- 勤務状況の記録と管理
- 給与計算や給与明細のオンライン化
- 社会保険や労働保険の手続き
- マイナンバーの管理
- 年末調整の効率化
勤務状況の記録と管理
クラウド型労務管理システムの中心的な機能の一つが、勤怠管理です。従業員の多様な働き方に対応するために、PC、スマートフォン、Webブラウザからの打刻のほか、ICカードや指紋認証といった様々な方法で打刻できるシステムがあります。これにより、オフィス勤務だけでなく、外出先やテレワークといった環境でも、従業員は容易に出退勤の記録を行うことができます。
打刻されたデータはリアルタイムでシステムに反映されるため、管理者は従業員の勤務地にかかわらず従業員の勤怠状況を常に把握できます。これにより、遅刻や欠勤、残業の状況などを確認でき、適切な労務管理を行うことができます。また、打刻漏れがあった場合や、従業員の労働時間が一定の基準を超過した場合に、アラートを通知する機能も搭載されており、法令遵守を支援します。
勤怠管理に特化した、勤怠管理システムもあります。詳しく知りたい方は「勤怠管理システムのメリット・デメリット」の記事もご覧ください。
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給与計算や給与明細のオンライン化
クラウド型労務管理システムの多くは、給与計算システムとの連携機能を備えています。勤怠管理システムで記録された労働時間や残業時間などのデータが給与計算システムに連携されることで、手作業でデータを入力する手間を省き、給与計算業務の効率化やヒューマンエラーの防止にもつながります。
また、システムによっては、残業代や各種手当などを自動的に計算する機能も備わっており、手作業による計算ミスを減らすことができます。連携方法も、API連携による自動連携だけでなく、CSV形式でのデータ出力など、様々な方法に対応しているため、多くの給与計算システムとの連携が可能です。
社会保険や労働保険の手続き
クラウド型労務管理システムは、社会保険や労働保険に関する様々な手続きをオンラインで行うことができる機能も提供しています。従業員の入社や退社に伴う手続き、社会保険の加入手続き、雇用保険の手続きなどを、システム上で必要な情報を入力するだけで簡単に行うことができます。
手続きに必要な書類をシステムが自動的に作成してくれるため、書類作成にかかる手間を大幅に削減できます。作成した書類は、e-Gov(総務省が運営する日本の「電子政府の総合窓口」サイト)やマイナポータルといった行政機関のオンラインシステムと連携することで、そのまま電子申請を行うことが可能となり、役所への訪問や郵送の手間を省くことができます。
マイナンバーの管理
従業員のマイナンバーは、社会保険や税務の手続きに不可欠な情報ですが、その取り扱いには厳重な注意が必要です。クラウド型労務管理システムは、従業員のマイナンバーを安全に収集、保管、管理するための機能を提供しています。
システムへのアクセス権限を限定したり、データを暗号化したりするなど、様々なセキュリティ対策が施されており、情報漏洩のリスクを低減します。労務管理システムの中には、マイナンバー管理機能が標準で組み込まれているタイプもあり、他の労務管理機能と合わせて一元的に管理することができます。
年末調整の効率化
年末調整は、従業員にとっても労務担当者にとっても、時間と手間のかかる煩雑な業務です。クラウド型労務管理システムは、そんな面倒な年末調整業務を効率化する機能を搭載しています。従業員は、システム上で表示される案内に従って、保険料控除や扶養控除などの申告情報をPCやスマートフォンから簡単に入力することができます。
システムでは、入力された情報に基づいて控除額を自動的に計算し、年末調整に必要な書類を自動的に作成するため、労務担当者の確認などの負担を大幅に軽減します。従業員への書類配布や回収、内容の確認といった作業もオンラインで完結するため、ペーパーレス化にも貢献します。
年末調整に特化したシステムもあります。まずは年末調整システムについて知りたい方は「年末調整システムの機能」の記事もご覧ください。
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クラウド型労務管理システムを導入するメリット
クラウド型労務管理システムを導入することで、企業は様々なメリットを得ることができます。ここでは、具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 業務の効率化が進む
- コストを抑えられる
- 法改正への対応がしやすくなる
- テレワークや多拠点勤務に対応できる
- データの管理と活用がしやすくなる
業務の効率化が進む
これまで手作業で行っていた書類作成や煩雑な手続きをシステムで自動化することで、労務担当者はコア業務に集中する時間を確保できるようになります。例えば、従業員の入社手続きに必要な書類の作成や、社会保険の手続き、年末調整の申告書の作成などが自動化されることで、担当者の負担は大幅に軽減されます。
また、日々の勤怠状況の集計や、シフトの作成といった、時間と手間のかかる単純作業もシステムによって効率化が可能です。残業時間や有給休暇の取得状況などもリアルタイムで把握できるため、月末の集計作業にかかる時間を大幅に削減できます。さらに、休暇申請や残業申請といった申請・承認のワークフローをオンラインで完結できるシステムも多く、紙ベースでのやり取りや押印の手間を省き、迅速な業務処理を可能にします。従業員自身がPCやスマートフォンから直接システムに情報を入力できる機能があれば、労務担当者が転記作業を行う必要がなくなり、入力ミスも削減できます。
コストを抑えられる
クラウド型労務管理システムの導入は、初期投資を抑えられるという大きなメリットがあります。自社で高価なサーバーを構築したり、専用のソフトウェアを購入したりする必要がないため、導入にかかる費用負担を軽減できます。多くのクラウドサービスは、月額料金制を採用しており、初期費用が無料または比較的安価な場合が多く、導入のハードルが低いと言えるでしょう。
また、システムの運用や管理をサービス提供会社に委ねることができるため、自社で専門のIT担当者を配置する必要がなく、人件費削減や従業員の工数をその他業務に充てることができます。
また、ペーパーレス化を促進することでもコスト削減に貢献します。これまで印刷していた書類や、郵送にかかっていた費用などを削減できるだけでなく、書類の保管スペースも不要になります。さらに、給与計算システムと連携することで、給与計算業務を効率化し、手作業によるミスを減らすことができます。間接的なコスト削減にもつながるのです。このように、クラウド型労務管理システムの導入は、初期費用だけでなく、長期的な運用コストの削減にも寄与し、高い投資対効果が期待できます。
法改正への対応がしやすくなる
労働基準法をはじめとする労働関連法規は頻繁に改正されますが、クラウド型労務管理システムは、これらの法改正に自動的に対応できるため、常に最新の法規制に準拠した労務管理を行うことが可能です。法改正のたびに自社でシステムを改修したり、複雑な設定変更を行ったりする必要がないため、担当者の負担を軽減し、法改正への対応漏れを防ぐことができます。
多くのクラウド型労務管理システムには、時間外労働の上限規制や、年次有給休暇の取得義務化など、労働基準法を遵守するための機能が標準搭載されています。例えば、時間外労働時間のアラート機能や、有給休暇の残日数管理機能などが、法令遵守をサポートします。また、労働時間の客観的な記録に基づいた把握を義務付ける政府のガイドラインにも対応しており、企業は安心して労務管理を行うことができます。
テレワークや多拠点勤務に対応できる
テレワークの導入や出社回帰など昨今の日本では多様な働き方を推奨する企業が増えています。クラウド型労務管理システムを導入することで、インターネット環境があれば、オフィスにいなくても自宅や外出先など、どこからでもシステムにアクセスできるため、テレワークや多拠点勤務などの勤務形態の変更をする際も、スムーズに導入・運用することができます。
従業員は、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスからシステムを利用できるため、場所や時間にとらわれない働き方にあわせた勤怠・労務管理の支援ができます。GPS機能などを活用した打刻方法を採用しているシステムであれば、オフィス外での勤務状況も正確に把握することができ、直行直帰や出張時の勤怠管理も容易になります。また、フレックスタイム制や変形労働時間制など、多様な勤務形態に対応した管理機能も備わっており、企業の多様な働き方を支援します。
データの管理と活用がしやすくなる
勤怠情報や人事情報を一元的に管理する機能も重要です。これにより、これまで紙やExcelなどで分散管理されていた情報を集約し、効率的なデータ管理を実現します。リアルタイムで従業員の勤怠状況や労働時間を把握できるため、長時間労働や過重労働の兆候を早期発見をしやすくなるでしょう。そして、早めに適切な対策を講じることが可能になります。
また、システムに蓄積されたデータを分析することで、働き方の課題や改善点を見つけ出すこともできます。例えば、残業時間の多い部署や、有給休暇の取得率の低い従業員などを特定し、労働環境の改善につなげることができます。さらに、給与計算システムなど他のシステムと連携することで、データの二重入力の手間を省き、常に正確な情報に基づいて業務を遂行することができます。このように、クラウド型労務管理システムは、単なる業務効率化ツールとしてだけでなく、データに基づいた経営改善を支援する強力なツールとしても活用できます。
クラウド型労務管理システムの選び方
クラウド型労務管理システムを選ぶ際には、自社の状況や課題を明確にしてシステムを見つけることが重要です。ここでは、システム選定の際に考慮すべき主要なポイントを解説します。
- 自社の業務に必要な機能があるか
- 他のシステムとの連携が可能か
- 使いやすさとサポート
- セキュリティ対策
- 費用と導入のしやすさ
自社の業務に必要な機能があるか
クラウド型労務管理システムを導入する際には、事前に自社の状況を分析し、検討すべき要件と課題を明確にしておくことが重要です。まず、自社の現在の勤務体系や就業規則にシステムが適合するかどうかを詳細に確認する必要があります。
特に、独自の休暇制度や、変形労働時間制、裁量労働制など、特殊なルールや複雑な勤務形態を採用している場合は、システムがそれらに対応できるかどうかを慎重に見極める必要があります。
他のシステムとの連携が可能か
多くのクラウド型労務管理システムは、他のシステムとの連携機能を備えています。特に、API連携に対応しているシステムであれば、給与計算システムや勤怠管理システム、人事管理システムなど、他のシステムとデータを自動的に連携させることができ、業務効率を大幅に高めることができます。
例えば、勤怠管理システムと給与計算システムをAPI連携することで、勤怠データが自動的に給与計算システムに反映され、手入力の手間やミスを削減できます。人事情報や勤怠情報をシームレスに共有することで、従業員情報の変更があった場合でも、複数のシステムで情報を更新する手間が省けます。また、外部のクラウドサービスと連携することで、労務管理システムの機能を拡張することも可能です。
使いやすさとサポート
直感的で分かりやすい操作画面であるか、従業員がストレスなく利用できるかを確認するために、無料トライアル期間などを活用して、実際に操作感を試すことをおすすめします。
導入後の運用をスムーズに行うためには、サポート体制も重要です。導入時の設定サポートだけでなく、導入後の操作方法に関する問い合わせ対応、システムトラブル発生時のサポート体制などが充実しているかを確認しましょう。ヘルプデスクの有無、問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)、対応時間なども事前に確認しておくことが大切です。
セキュリティ対策
従業員の個人情報や機密情報を扱う労務管理システムにおいて、セキュリティ対策は非常に重要な要素です。クラウド型のシステムを選ぶ際には、データの暗号化、アクセス権限の設定、不正アクセス防止対策など、セキュリティ対策が十分に施されているかを確認する必要があります。
情報漏洩のリスクを低減するための対策が取られているかどうかも確認しましょう。例えば、二段階認証の導入、IPアドレス制限、ログの監視体制などが整備されているかを確認することが重要です。また、プライバシーマークやISMS認証といった第三者機関による認証を取得しているかどうかも、信頼性を判断する材料となります。
費用と導入のしやすさ
クラウド型労務管理システムの導入にあたっては、費用対効果をしっかりと見極めることが重要です。初期費用だけでなく、月額料金やオプション費用、サポート費用など、導入から運用にかかるトータルコストを比較検討しましょう。 オンプレミス型より比較的お手軽なサービスが多いクラウド型労務管理システムですが、システムに搭載された機能の充実度や利用するユーザー数によって費用が大きく変わります。自社にあった機能が搭載されているじゃ、オーバースペックな機能を搭載して必要以上に高額になっていないか吟味しましょう。
クラウド労務管理システムの導入で労務管理業務を効率化しよう
クラウド型労務管理システムは、現代の企業にとって、業務効率化、コスト削減、法令遵守、そして多様な働き方への対応を実現するための不可欠なツールといえます。しかし、システムによって得意な領域や対応できる内容が異なります。導入を検討する際には、自社の課題や要件をしっかりと把握し、最適なシステムを選択することが重要です。
選び方のポイントを踏まえ、無料トライアルなどを活用して実際にシステムを体験するのがおすすめです。クラウド型労務管理システムを効果的に活用することで、より効率的で働きやすい環境を実現し、企業成長の後押しにつながるでしょう。
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