レガシーマイグレーションとは？　「2025年の崖」古いシステムを刷新するための基本と進め方

長年使い続けてきたシステムの老朽化や属人化に悩んでいませんか？　レガシーマイグレーションは、今ある古いシステムを現代的なIT環境へ移し、保守の手間やリスクを減らしながら、業務の効率化やセキュリティ強化も目指せる方法です。

この記事では「なぜ今マイグレーションが必要か」「主な移行手法の違い」「実際の進め方やメリット」まで、専門知識がなくてもわかりやすく解説します。まずは現状の課題を整理し、どんな選択肢があるのか知ることから始めませんか。

レガシーマイグレーションとは

レガシーマイグレーションとは、長年使われてきた基幹システムや業務システムなど、古いソフトウェアを対象にした刷新プロジェクトです。これらのシステムは、繰り返しの機能追加や修正によって複雑化し、運用や保守の属人化が進みやすい特徴があります。さらに、古い言語や特殊な環境で動いていることが多く、最新技術との連携が難しくなるケースも目立ちます。

関連レガシーシステム刷新の全体像については「老朽基幹システムのリプレース推進ガイド｜進め方、費用、成功のポイントを理解する」をご覧ください。

レガシーマイグレーションとモダナイゼーションの違い

レガシーシステムを刷新する際には「マイグレーション」と「モダナイゼーション」という2つの用語も耳にするでしょう。

マイグレーションは主にシステム環境やインフラを新しいものに移行することを指し、現状のシステム構造や業務ロジックは大きく変更しません。一方、モダナイゼーションは業務フローやシステム自体の構造を見直し、設計や仕組みそのものを現代的に再構築する取り組みです。どちらを選ぶかは、自社の目的や将来像によって大きく異なります。

おすすめ現状可視化の基礎は「データの一元管理とは？　DX推進に向けた一元管理の目的とメリット、その実現に向けた簡単な方法」をご確認ください。

レガシーマイグレーションが求められる理由

近年、多くの企業がレガシーマイグレーションを急ぐ背景には、いくつかの切実な理由があります。特に目立つのは、システムの老朽化と技術者の高齢化です。運用を続けるたびにシステムはさらに複雑化し、その結果、運用や保守コストが年々増加します。

また、ビジネス環境やDX（デジタルトランスフォーメーション）の推進にもシステムが追いつかず、企業活動に支障をきたすリスクも高まります。

2025年の崖問題

「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に「古いシステムを使い続けること」が企業にもたらす深刻なリスクについて示した言葉です。「DX（デジタルトランスフォーメーション）」と併せて説明されることも多く、主な課題として、デジタル化の遅れ、IT人材の枯渇やノウハウの消失が挙げられます。

端的には、2025年までにベテラン技術者が大量に退職する。運用ノウハウが引き継がれない。そのため現場で大きな障害が発生しやすくなると説明しています。システムの維持費、改修費等が高騰し、IT予算の大半が保守費用に消えてしまう状況に陥れば、ビジネス変革への投資も難しくなる。結果、対策しなければ企業の競争力そのものが落ち、危うくなる──。と警鐘を鳴らしたものです。

おすすめDX、“具体的に何をやればいいのか”については「『2025年の崖』とは？　データドリブンとは？　その概念と仕組み、“何をやればいいのか”を分かりやすく解説」をご覧ください。

よくあるレガシーシステムの課題

レガシーシステムが抱える主な課題としては、次のような点が挙げられます。

これらの課題は、放置するほど企業経営にとって大きなリスクとなります。

レガシーマイグレーションの主な手法

レガシーマイグレーションには、いくつかの代表的なアプローチがあります。自社の状況や目的に合わせて、最適な方法を選択することが欠かせません。

リホスト：プラットフォームだけを移行

リホストは「リフト＆シフト」とも呼ばれ、アプリケーションや業務ロジックには手を加えず、ハードウェアやOSといった基盤だけを新しい環境へ移します。たとえば、オンプレミスのサーバーからクラウドや仮想サーバーへ引っ越すケースが一般的です。短期間かつ低コストでの実施が可能ですが、システム本体の課題が残りやすいのが特徴です。

リライト：言語や基盤の書き換え

リライトは、現在の業務仕様や機能は維持しつつ、プログラム言語や基盤環境を新しいものに書き換える方法です。たとえばCOBOLからJavaへの変換などが該当します。拡張性やセキュリティ面が向上する一方で、書き換えには一定の工数とコストがかかります。

リビルド：システムの再設計・再構築

リビルドは、既存のシステム構造に縛られず、業務フローや機能全体をゼロベースで設計し直す手法です。柔軟な拡張や新しい事業展開にも対応しやすく、長期的な価値向上が期待できます。ただし、準備から導入まで十分な期間とコスト、経営層のコミットメントが必要です。

レガシーマイグレーションのメリット

大規模なマイグレーションは一見負担が大きそうに感じるかもしれません。プロジェクトをやり遂げることで、以下のメリットを得られるでしょう。

運用コストを抑えられる

古い機器や高額な保守契約の費用を削減できることが大きな魅力です。クラウドや仮想環境を活用することで、物理的なサーバー維持管理が不要になり、間接コストも最適化できます。さらに、技術基盤を標準化することで、人材育成や採用活動も効率よく行えるようになります。

おすすめコスト最適化の具体策は「基幹システムをクラウド化するメリット・デメリット」をご覧ください。

業務効率を上げられる

マイグレーションの過程で業務プロセス全体を見直し、自動化や標準化が進むことで、ミスや無駄な作業が減ります。また、API連携やRPA、AI分析など、新しい技術の導入も進みやすくなり、現場の業務効率が大きく向上します。

セキュリティ強化につなげられる

サポート切れのOSやソフトウェアを一新し、最新のセキュリティ対策を施した環境に移行できる点も大きな利点です。クラウドサービスの高度なセキュリティ機能を活用しやすくなり、情報漏洩やサイバー攻撃といったリスクを減らせます。

ブラックボックス化を防げる

属人化やブラックボックス化を解消するには、技術標準やドキュメントの整備が不可欠です。リライトやリビルドの過程で業務知識が形式知として蓄積され、担当者の異動や退職にも強い組織に変わっていきます。

事業継続性・将来対応力を高められる

システム基盤が柔軟になれば、法改正や市場の変化、新サービスの投入時にも迅速に対応できます。冗長化やクラウド活用によって、災害や障害発生時のリカバリー能力も高まるため、事業継続計画（BCP）の強化にも直結します。

レガシーマイグレーションの進め方

レガシーマイグレーションは、計画的に段階を追って進めることが成功のポイントです。準備不足のまま突き進むと、大きなトラブルにつながることもあります。

現状分析と課題整理

まずは、自社が保有しているIT資産をリストアップし、どのシステムがどの業務で使われているか、現状の業務フローや課題を徹底的に可視化します。その上で、今後も必要な機能と不要なものを選別し、無駄を省くことが大切です。

プロジェクト体制と計画策定

システム利用部門や経営層を巻き込んだプロジェクトチームを結成し、役割分担や専門人材の確保を行います。移行スケジュールやリスク管理計画をしっかり策定し、移行作業の影響を最小限に抑えます。

手法とツール・ベンダーの選定

移行の目的に合わせて、最適な手法（リホスト、リライト、リビルド）を選びます。十分な実績と技術力を持つベンダーや、データ移行・テストを支援するツールの選定も重要です。

データ移行・テスト・運用準備

データ移行作業は細心の注意が必要です。データ形式や品質を確認しながら段階的にテストを行い、新システムの動作確認や運用マニュアルの整備、従業員への教育も実施します。

移行後の定着・改善

移行完了後は、新しいシステムの稼働状況をモニタリングし、従業員からの問い合わせやトラブルに速やかに対応できるサポート体制を整えます。利用者の声をもとに、機能や使い勝手の改善も続けていくことが重要です。

自社の未来を切り拓くため、今こそレガシーマイグレーションを進めよう

システムの老朽化や属人化によるリスクは、企業の存続にも関わる大きな問題です。とはいえ、いきなり全てを一度に変える必要はありません。まずは自社のIT資産を棚卸しし、課題を可視化する小さな一歩から始めてみてください。経営基盤の強化や事業成長を見据え、段階的な改革を進めていくことが大切です。変化の激しい時代こそ、レガシーマイグレーションで自社の未来を切り拓きましょう。

現状を見つめ直し、小さな行動から始めることで、着実な変革への道が開けます。今こそ、自社の将来に向けて一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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