「エクセルでシフト表を作りたいが、どう始めればいいのか分からない」──。そんな悩みを持つ方に向けて、この記事ではエクセルを使った基本的なシフト表の作成方法を紹介します。1カ月や1週間単位のシフト表、時間ごとのタイムシフト表の違いを理解したうえで、関数を使った自動計算、視認性を高める工夫まで、実務に役立つ情報をまとめました。
まずはエクセルで「今すぐ」できることを実践してみてください。そして必要に応じて、「限界」を迎える前により便利で効果的な手段も考察していきましょう。
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目次
エクセルでシフト管理を行う前に押さえたいこと
エクセルは追加コストなしに、ビジネスシーンで広く汎用的に使える万能なソフトウェアです。
しかし汎用ソフトウェアなだけに違い得意・不得意もあります。シフト管理を始める前に、改めてエクセルの基本機能を理解し、何を自動化できるのか、どこで手作業が必要になるのかを把握しておくことで、運用の負担を大きく減らせます。次の節では、エクセルでできることとできないことを具体的に見ていきましょう。
エクセルでできること/できないこと
エクセルでシフト管理に活用できる主な機能と、標準機能だけでは対応が難しいポイントとして以下のようなものが挙げられます。
項目 | エクセル |
出勤日数・シフト回数の集計 | COUNTA / COUNTIF関数で自動集計できる |
日付・曜日の自動生成 | DATE / WEEKDAY / TEXT関数でカレンダー形式を自動作成 |
勤務時間・回数の計算 | SUM / IF / ネストしたCOUNTIFで複雑な条件も設定可能 |
希望シフトの自動取り込み | 標準機能なし。メールやメモから手動転記が必要 |
リアルタイム共有・同時編集 | デスクトップ版は競合リスク。クラウド版は機能制限や動作遅延がある |
人数増加時の表の複雑化 | 従業員20名以上で処理が重くなり、マトリクスが見づらくなる |
エクセルは、関数やテンプレートを上手に組み合わせることで、数値化、計算、自動集計、カレンダー的なものの作成は得意です。しかし希望シフトの取り込みや設計のような複雑なことも1つにまとめたいとき、あるいは同時編集を想定するようなシーンで活用するには少し注意が必要です。
初めの一歩はテンプレートの活用で
エクセルで「シフト管理表」を作るには、テンプレートを活用してしまうのが簡単です。一からレイアウト設計やデザイン、関数設定を行ってもよいのですが、面倒で大変です。Microsoft公式サイトやOfficeテンプレート配布サイトで提供されているテンプレートを有効に活用してしまいましょう。
テンプレートにはプルダウンで勤務区分を選べる入力規則が設定されていたり、日付・曜日が自動表示されたりと、効率化に向けた工夫もいろいろ備わっています。入力ミスや集計エラーの削減に大きく寄与することでしょう。
テンプレート必要に応じて列の追加・削除や計算式の調整を行い、自社の勤務パターンや休暇区分に合わせてカスタマイズすることで、自社での運用で使えるように調整していきます。

Microsoft公式テンプレートサイトで配布されている「シフト管理表」のエクセルテンプレートの例
実務で運用される3つのシフト表の種類
シフト表には管理単位や目的に合わせていくつかの形式に分けられます。自社の業務特性に合うものを選ぶことで、見やすさや集計のしやすさが向上します。ここでは代表的な3種類を紹介します。
1カ月単位で管理できる「月間シフト表」
月間シフト表は、縦軸に従業員名、横軸に日付と曜日を配置したカレンダー形式で、1カ月分のシフトを一覧化できます。
勤務時間がパターン化されている場合は記号を入力するだけで十分把握でき、パート・アルバイトの出勤回数や土曜出勤回数の把握にも向いています。全体のバランスや連続勤務日数の偏りを一目で確認できるため、長期的な人員配置の調整に役立ちます。
週ごとの調整がしやすい「週間シフト表」
週間シフト表は1週間分にフォーカスし、急な欠員や予定変更が生じた際に素早く対応できます。
例えば飲食店やサービス業など曜日ごとに業務量が変動しやすいシーンで、週単位での人員配置の偏りや急な交代にも柔軟に対応できる点がメリットです。曜日ごとの人数を細かくチェックし、即時の修正が可能なため、変化の速い環境に適しています。
時間単位で管理できる「タイムシフト表」
タイムシフト表は、横軸に時間帯、縦軸に従業員を配置し、1日の詳細な人員配置をガントチャート風に可視化します。
繁忙時間帯や来店・来院数の波に合わせた時間帯別の人員過不足を事前に把握できるため、カフェやコンビニ、クリニックのような業態で用いると便利でしょう。各時間帯の配置人数と時給を組み合わせることで、時間あたりの人件費管理にも応用でき、収益性の高い運用を支援します。
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エクセルでシフト表を作る手順を解説
ここでは、汎用的な月間シフト表を例に、レイアウト整備から自動集計までの基本手順を順に見ていきます。これらを理解すれば、他の形式にも応用できます。
基本的なレイアウトを整える
シフト表の上部に対象年月を表示し(例:セルB1に「2025年」、D1に「5月」)、そこを参照して日付を生成します。2行目には =DATE($A$1,$C$1,1) で月初日を、3行目には=TEXT(C2,”aaa”) で曜日を自動表示します。A列には従業員名、B列には出勤日数や総労働時間を集計する欄を設け、C列以降に日付ごとの勤務区分を入力できるようマトリクスを作成します。勤務区分は「早」「遅」「休」「有」など略記号を入力規則で統一すると、後の集計が正確になります。
=DATE($B$1,$D$1,1) で月初日を生成
=TEXT(C2,”aaa”) で曜日を自動表示
COUNTA関数やCOUNTIF関数で自動計算
出勤日数は =COUNTA(C5:AG5) でシフト記号の入力済みセル数を、自動集計できます。特定シフトの回数は =COUNTIF(C5:AG5,”遅”) のように設定し、日別集計は列方向、従業員別集計は行方向で使い分けます。さらにSUM関数で「早」「遅」「日」の合計を出し、その日の総出勤人数を算出することで、ミクロとマクロ両面の把握が可能です。
=COUNTA関数でシフト記号の入力済みセル数を自動集計
出勤人数と人員の過不足も見える化
あらかじめ別セルに曜日や日付ごとの必要人数を入力し、実際の出勤人数との差を =実出勤−必要人数 で計算します。この結果がマイナスならIF関数で「不足」、プラスなら「過剰」、ゼロなら「適正」と表示させることで、一目で過不足状況を把握できます。必要人数は過去の来客数や売上データを参考に設定すると、より実践的です。
見やすくミスを減らすための工夫
シフト表は誰が見ても分かりやすく、ミスを防ぎやすい設計が重要です。ここでは視認性向上のテクニックを紹介します。
条件付き書式で強調表示
「休」のセルを赤背景に、「残業時間超過」のセルを黄色やオレンジにといった条件付き書式を設定すると、重要箇所が瞬時に目に入ります。特定シフトや希望休には色分けやアイコンを組み合わせることで、複数の情報を混同せずに表示できます。
特定シフトや希望休には色分けやアイコンを組み合わせる
プリントアウトする前提で作成する
印刷時の可読性を考え、フォントサイズは10~11pt程度、用紙はA4横で設定し「拡大縮小印刷」で1ページに収めます。余白を「狭い」にして罫線を適度に引き、セル境界をはっきりさせると、印刷後も見やすさが維持できます。色だけで区別できない場合は、セルの模様や記号を併用すると良いでしょう。
エクセルでの管理に限界を感じたときは?
エクセル運用が属人化している、手入力が増えて時間がかかる、複数拠点の統合管理が難しいといった課題を実感したら、専用のシステム導入の検討時です。特にマクロや複雑な関数に依存しすぎると、担当者交代時の引き継ぎも困難になります。
自動化したいならシフト管理システムの導入を視野に
近年は従業員がスマホで希望を入力し、AIやルールに基づいて自動作成する「シフト管理システム」のようなツールも広く普及しています。
シフト管理システムを用いることで、希望提出から集計・グラフ化まで一貫して行え、また管理者は最終チェックと微調整に専念でき、作業時間を大幅に削減できます。Excelだけでは対応しきれない複雑な要件をクリアし、さらなる効率化を目指す場合は、こうした専用ツールを比較検討してみてください。
この1ページで解決シフト管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
シフト作成・管理を効率化/自動化するシフト管理システム6選
シフト管理システムにはシフト・スケジュールの作成が自動で行える機能を持つもの、つまり「楽ができる」かつ「確実性が増す」をテーマに設計されている製品が多く、システム導入による効果をより実感しやすいことが大きなメリットです。ここでは、「シフト作成と管理の自動化」に優れるシフト管理システムを厳選してご紹介します(製品名 abcあいうえお順/2025年6月時点)。
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