オンラインゲームといえば韓国を頭に思い浮かべることが多い昨今だが、世界最大のオンラインゲームプレイヤー人口を抱える国は、今や韓国ではない。もっともオンラインゲームが遊ばれているのは中華人民共和国、中国なのである。
今回、中国最大のオンラインゲームパブリッシャーである盛大ネットワークの日本事務所代表である黄哲氏に、中国におけるオンラインゲームビジネスの現状と今後について伺った。
――中国のオンラインゲーム市場はどのような状況でしょうか
まず、これはCINNIC(JPNICの中国版)とIDCの発表している数字ですが、インターネットユーザ数は、2003年で6,835万人と予想されています。これは世界2位、アメリカに次ぐ数字ですね。次に、オンラインゲームをプレイするユーザの数ですが、月に一回以上継続的にオンラインゲームをやる人の数は、IDCのデータだと2003年で1312万人になります。オンラインゲームの市場規模ですが、2002年で115.8億円。2005年には310.9億円になるとIDCは予想しています。
――貨幣価値で考えるとどれくらいでしょう?
日本の物価水準と比較すると、2002年で1000億円ぐらいの感じですか。
――中国でなぜここまでオンラインゲームが成長しているのでしょうか?
主には、初期要因とインフラの要因があります。
初期要因として5つの要因があります。
まず、1つ目は、中国ではゲームセンターが実質的に新規ビジネスが展開できないこと。コンソールゲーム機(家庭用ゲーム機)は、GBAなどの携帯型も含めて解禁されておらず、つい最近までどの機種も正式には発売されてないことです。ゲーム機は、ヤミか個人輸入のルートだけで、数としては非常に少ないです。そうなると、現在普及しているPCが主なゲームプラットフォームとして使われるようになります。そして、韓国発のオンラインゲームがPCベースのものであったことで、中国市場にマッチしたということがあります。
2つ目の要因は、海賊版の問題です。IIPA(International Intellectual Property Alliance)によれば、2002年のデータでは中国のパッケージゲームソフトの96%は海賊版といわれています。このため、パッケージソフトでは版権ビジネスが成り立たないのですが、オンラインゲームでは、サーバー側できちんとユーザー認証可能になり、確実に課金ができるようになりました。サーバーでのユーザー認証は不法コピーへの対策になります。オンラインゲームであれば、版権ビジネスが成り立つわけです。
版権ビジネスが成り立つと、中国のユーザは海賊版では遊べなかった中国語バージョンを遊ぶことが出来、正式なサポートも受けられようになりました。
3つ目として、オンラインゲームはスタンドアロンのゲームと違う面白さがあるということです。スタンドアロンでは主にCPUと戦うわけですが、オンラインゲームでは世界中の多数の人々と同時に戦ったり遊んだり出来るというのが面白いわけです。
4つ目は、中国全体で見ると、低額な娯楽があまりないというのがあります。オンラインゲームは、沿岸部の発展して豊かになったところだけでなくて、中国全土で流行っています。オンラインゲームはだいたい月500円の課金で提供されていますが、日本の物価の感覚では5000円の価値です。安くはありませんが、5000円で一ヶ月ずっと遊べる、時間があれば一日何時間遊ぶことも出来、これは中国のユーザーにとっては時間単価で見た場合、低額の感覚です。
5つ目の要因ですが、ご存じのように中国は国土が広くて、たとえばパッケージソフトの販売をやろうとすると流通が大変です。流通網が日本ほど発達していないのです。しかし、オンラインゲームではインターネットを通してクライアントソフトをフリーダウンロードさせることで、流通の問題を解決できるのです。
――それら以外に、中国においてオンラインゲームが流行っている要因というのはどこにあるのでしょうか?
インフラの要因が4つあります。
1つは、インターネット人口が増えてきていることです。現在のインターネットユーザ数6,835万人ですが、中国の総人口は13億人いて、現在のユーザ数はそのわずか5%に過ぎません。これから経済発展にともなって間違いなくインターネットの人口は増えていきます。インターネット利用者数が増えると、オンラインゲームの利用者も増えます。
2つ目はPCの普及拡大です。CINNICのデータでは、中国でインターネットにつながっているPCの数は、2003年1月の時点で2083万台、2003年7月ですでに2572万台になっています。今年も同様のペースで普及が進んで行くことが予想されています。
3つ目がインターネットカフェです。中国のオンラインゲームユーザの6割が公的な場所からアクセスしていまして、おもにネットカフェからですね。国全体でインターネットカフェは35万軒あります。その一方で、ゲームをプレイできるハイスペックなPCを持っているユーザは多くありません。更に家から高速のインターネットに接続するのは値段が高いと思っているユーザも多いです。それに、親がうるさくない環境に行ってプレイしたい、というのもありますね。
4つ目は、ブロードバンドユーザーの増加です。IDCのデータによると、中国のオンラインゲームユーザの83パーセントがブロードバンドユーザです。ただ、この高い数字は、多くのインターネットカフェのユーザーが含まれています。家庭のブロードバンドの普及率はあまり高くないですね。
――家庭の方では家でゲームをやるというのには厳しい親御さんが多いというわけですか
そうです。現状、中国でもゲームのイメージはよくなりつつありますが、オンラインゲームが出てくる2001年までは、ゲームは「電子麻薬」と呼ばれて嫌われていました。子供の成績が悪くなるなど、ゲームは悪いものであると見られていました。まして海賊版しかなかったので、ゲームのいいところが見えてなかったわけです。
それが、2001年からオンラインゲームビジネスはひとつの版権ビジネスとして成り立ってきて、そうなると、社会、政府の方も、ゲームというのはいいところもあるという認識になってきました。
――産業として、認識されつつあるということですね?
そうです。社会から見た場合、オンラインゲームの普及は、PCやインターネットインフラの発展を促し、それに伴い雇用も増えます。政府から見ると、ゲーム会社を始め税収が増えることになります。。最近では、ゲームへの見方が、悪い面もある程度あるけど、いいところもいっぱいある、というふうになってきました。(後編に続く)
(聞き手はIRI-CT代表取締役 宮川洋)
Special
PR