地上波放送のデジタル化が始まり、CATV事業は一つの岐路に立たされている。
CATV事業こそが、放送サービスと通信サービスの両方を最初に提供し、真っ先に「放送と通信の融合」を実現してきたのだが、地上波のデジタル化によって難視聴世帯が現在の十分の一に減ると言われているからだ。放送事業面で打撃を受けるのは明らかであり、ペイテレビをどう売っていくかが、今後の課題となってくるだろう。
もう一つの柱である通信事業では、インターネット接続と電話事業を行ってきたが、ここに来て、むしろ解約者を増やす要因となりつつある。その意味で、放送事業より先に難しい局面を迎えつつあると言える。
ここ最近のCATVの解約要因を調べてみると、加入者の引越しといった避けようのない理由を別にすれば、FTTHやYahoo! BBへの乗り換えが主因になっているようだ。(引越しなどを除く)解約理由を割合で見ると、その5割がFTTH、残る5割がYahoo! BBへの乗り換えとなっている。FTTHの方はNTTと電力系が分け合っているようなので、Yahoo! BBの強さが浮き彫りになっている形だ。実際、FTTHからYahoo! BBへの乗り換えさえあるというから驚かされる。
ではなぜYahoo! BBがこれほど強いのだろうか? FTTHからYahoo! BBに乗り換える人までいるということを考えれば、「高速インターネットを利用したいから」という理由では、ユーザーの動機を十分説明しているとはいえないだろう。
いろいろ調べていくと、Yahoo! BBの最大の強みは、どうやら、Yahoo! BBの加入者同士の電話が無料であるということにあるようだ。そういうと、IP電話事業は必ずしもYahoo! BBの専売特許というわけではないので、不思議に思われる方もあると思う。だが、通話が無料ということは、特に長距離電話をかける場合にアピールできることなのである。逆に言えば、ある特定のエリアの中での通話が無料だというだけでは、競争力という点ではあまり寄与しないことを意味している。
Yahoo! BBの加入者同士であれば、東京と大阪であろうと、東京と九州であろうと、通話が無料となる。両親は大阪に住んでいるのだが、子どもが東京の大学に行っているとか、家族は東京に住んでいるのだが、父親が単身で九州に赴任している場合などには、通話が無料であるということは、非常に大きな強みとして発揮されてくる。
何しろ、インターネットを使えない人でさえ「電話が無料になるのであれば」と、Yahoo! BBに加入するという話を聞くぐらいだ。これではCATV事業者だけでなく、FTTH組も対抗するのに苦しむのは当然だろう。
まさに、全国展開をし、単独で最大の会員数を持っていることを最大限に生かしているYahoo! BBの面目躍如というところだ。
CATV事業者としては、「難視聴対策」の名目を奪われる放送事業と、インターネット接続、電話サービスで苦戦を強いられる通信事業の二つの問題を抱えながら、生き残っていく道を模索していかなければならない。
一見すると、これは非常に困難なことのように思われる。だが、実際にはCATV事業ならではの強みである「地域密着戦略」を発揮していくことができれば、生き残っていくことは十分可能だと筆者は考えている。
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