米Microsoftは10月12日、Windows XPに対する関心を再燃させるべく、「Windows XP Media Center Edition」の最新版を発表する(10月7日の記事参照)。
同社はロサンゼルスで発表イベントを開催し、Windows XP Media Center Edition 2005をコンシューマー向けの最高のOSとしてアピールする。さらに同社は、これまでにMedia Center OSを100万本以上販売したこと、2007年までに少なくともさらに1900万本を販売できる見通しであることを発表する。
Microsoftのコンシューマー向けWindows部門担当ジェネラルマネジャー、デーブ・フェスター氏は次のように語っている。「この新版により、Media Centerはより一層、主流の製品となるだろう。音楽や写真、TVといったデジタルエンターテインメントに対するユーザーの関心の大きさや需要の高さからしても、この新版こそが皆の必要としているOSと言えるだろう」
The Enderle Groupの主任アナリスト、ロブ・エンダール氏によれば、MicrosoftはMedia Centerで高い目標を掲げている。「Microsoftは基本的には、向こう数年間でコンシューマー向けマシンの3分の1はMedia Centerになると言っている。積極果敢な目標だ」と同氏。
このWindows XP Media Center Editionの新版は開発コード名で「Symphony」と呼ばれ、今年初頭からβテストが行われてきた。この新版には、TVチューナー2基、DVDの焼き付け、CATVに加えて地上波高品位テレビ、衛星のサポートなど、多数の新機能が含まれる。さらに、携帯デバイスのサポートが強化されるほか、ユーザーインタフェースが刷新される。
重要な新機能は、ワイヤレス技術のサポート、とりわけ「Media Center Extender」でのワイヤレス対応だ。Extenderは、Media Center PCに最高5台のTVをワイヤレス接続するための新技術。さらにユーザーは、TVを介してMSNのインスタントメッセージ(IM)を交換したり、MSNが提供するサービスを介してMedia Center 2005システムをリモートシステムからプログラムしたりできる。
Microsoftは12月の年末商戦期にMedia Centerの新製品を投入すべく、去年、一昨年と9月または10月に発表イベントを開催してきた。2002年、同社はWindows XP Media Center Editionの最初のバージョンを発表し、続いて2003年にアップデート版のWindows XP Media Center Edition 2004を発表した。
エンダール氏によれば、今回の新版でWindows XP Media Centerはようやく製品として完成したと言える。「これは重要なステップだ。昨年の製品も興味深かったが、今年の製品は成熟した感じがする。今後は、マイナーな変更のみ施されることになるのだろう」と同氏は語っている。
Windows XP Media Center Editionは、PCを家庭用のメディア・エンターテインメントハブとして機能させるよう設計されたプレミアム版のWindows XPだ。従来のPCのタスクに加えて、音楽や画像、ビデオ、テレビ放送などを携帯デバイスやステレオ、TVに送ることができ、なおかつコンテンツオーナーが設定したデジタル著作権も遵守する。ユーザーはTVの専用ユーザーインタフェースを介して、リモコンでMedia Center PCにアクセスできる。
Microsoftとハードメーカー各社はMedia Center OS新版のリリースと同時に、Media Center Extender技術を採用した初めてのデバイスや、新しいMedia Center PC、オーディオ専用の新しいデジタルオーディオレシーバーなどを発表する。
例えば、Hewlett-Packard(HP)はMedia Center PCの新製品を4機種とMedia Center Extenderのほか、PCというよりもビデオデッキやDVDプレーヤーなどの家電製品に近い外観の「Digital Entertainment Center」という新製品を2機種発表する計画だ。GatewayとDellも、最新版のMedia Center OSを搭載した新しいシステムを発表する。
またMedia Centerの発表に合わせて、Creative TechnologyやSamsung Electronicsなどのベンダーによる新しい携帯メディアプレーヤーも発表される。さらにMicrosoftは12日、Windowsベースの携帯電話とPDA(携帯情報端末)向けの「Windows Media Player 10 Mobile」を発表する計画だ。これは、携帯電話やPDAをMedia Center PCと連係させ、こうしたデバイスを携帯メディアプレーヤーとして利用できるようにするためのソフトだ。
Windows Media Player 10 Mobileにはさらに、Microsoftの新しいデジタル著作権管理(DRM)技術「Janus」のサポートが含まれる。同技術をサポートするオンライン音楽サービスの会員は、広範なコレクションから楽曲をダウンロードできる。同ソフトは多くのデバイスに搭載して出荷される予定だが、まず最初はAudiovoxの新しいスマートフォンのほか、DellのPDA新製品「Axim X50」などで提供される。Microsoftによれば、既存のデバイスもアップデートできるが、その場合はデバイスのメーカーからアップグレードデータを入手する必要がある。
さらにMicrosoftは、携帯デバイス向けの新しいロゴプログラム「Plays for Sure」を発表する。このロゴは相互互換性を示すマークとして、メディアプレーヤーやオンライン音楽・ビデオサービスなどに採用される。「Plays for Sureロゴの付いたデバイスや、このロゴが表示されている音楽・ビデオサービスでは、デバイスやサービス間の相互互換性が保証される」とMicrosoftのフェスター氏は説明している。
コンシューマーに重点を置いた発表の一環として、さらにMicrosoftは同日、米国でMSN Musicストアを正式に始動させるほか、Loudeyeとの提携を通じて、そのほか8カ国で同様のサービスの提供を開始する。サービスが提供されるのは、米国のほか、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、オランダ、スペイン、オーストリア、スイスの8カ国。
MSN Music Storeは、Apple Computerのオンライン音楽ストア「iTunes」へのMicrosoftの対抗馬だ。Windows XP Media CenterではTVインタフェースを介して、MSN Music Storeのほか、音楽や映画、ラジオなどの各種コンテンツを提供するそのほか何十種類ものオンラインサービスを利用できる。
Windows XP Media Center 2005は、登場から3年を経たWindows XPへの関心を再び高めるためのMicrosoftのマーケティング戦略の主眼となる製品だ。Microsoftは2006年に「Longhorn」をリリースするまで、Windowsの新しいバージョンを提供する計画がないため、Media Center 2005により、ユーザーのPC購入を喚起したい考えだ。
Media Center PCは通常のWindows XP Homeマシンよりも高く、価格は900ドル程度から、高いものは1999ドルを超える。Media Center PCをより手頃な価格で提供するための取り組みとして、Microsoftは同システムのハードウェア要件を緩め、TVチューナーとリモコンを必須要件から外している。
だがエンダール氏は、TVカードやリモコンのない省略版のシステムを買ったユーザーは結局、Media Centerの機能をフルに活用できるよう、システムをアップグレードすることになるだろうと指摘している。
Media Centerの供給を拡大すべく、Microsoftは同製品をシステムビルダーチャネルでも提供するようにしている。同OSはかつて、ほぼ大手の多国籍PCメーカーの独占領域だったが、今後はホワイトボックスメーカー(ブランド名なしでシステムを販売するPCストア)もMedia Center PCを構築して販売できる。
「大衆市場向けに手頃な価格で提供できるようにしている」とMicrosoftのフェスター氏。
Windows XP Media Center Edition 2005はベンダー各社のPCに搭載されて提供される。Microsoftによれば、2004バージョンのユーザーはアップグレードが可能だが、詳しい情報については各自でハードウェアのサプライヤーに問い合わせる必要がある。
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