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BD対HD DVD戦争に着地点はない?(1/3 ページ)

» 2004年12月20日 10時07分 公開
[小寺信良,ITmedia]

・11月29日

 11月29日に行なわれた発表会で、東芝がワーナーブラザーズなどハリウッドの映画会社4社からHD DVD規格についての支持を得たと発表した。この4社とはワーナー(Warner Bros. Studios)、ユニバーサル(Universal Pictures)、パラマウント(Paramount Pictures)、ニューラインシネマ(New Line Cinema)といった、映画ファンならおなじみの顔ぶれだ。

 この時点でHD DVD支持4社の販売シェア数値は、合計で42.2%。一方BD陣営のほうは、この時点で分かっているだけでソニーピクチャーズ(Sony Pictures)、20世紀フォックス(21th Fox)、MGMの合計30.1%。大手で立場を表明していないのはディズニーだけで、このシェアが17.2%だ。

 今年の初め頃には、東芝やNECの方にHD DVDのことを伺うと「まずはPC用ドライブから」「記録型で」なんて話が出てきたものだが、ハリウッドからの具体的な支持が得られていない状況では、ROMメディアを主張するのは無理だったからだろう。それが一気に42.2%もの数字が付いてくるのであれば、話は違ってくる。

・12月7日

 これにたたみかけるように、12月7日には東芝とメモリーテックが、1枚のROMメディアに現行のDVDとHD DVDを収録できる2層メディアを開発したと発表した。正式名称はまだ決まっていないようだが、このタイミングでの発表というのは、DVDとの再生互換をうたうことで“セルメディア”としての優位性を確保するという意味合いが強い。

拮抗する二大勢力

・12月9日

 このまま何事もなければROMメディアはHD DVD陣営の優勢――と思われた。だが、12月9日、ハリウッド大手で唯一立場を表明していなかったディズニー(Walt Disney)が、BDの支持を発表

 これでBD陣営は合計47.3%のシェアとなり、一気にHD DVDの42.2%を逆転した。ただそれでも過半数までには至らないということで、ハリウッドの体勢、さらには次世代大容量ROMメディアは、ほぼ二分されることが明らかになった。

 このタイミングでのディズニーの支持表明には、おそらく大幅な条件の譲歩が行なわれたことだろう。その条件とは、「BD以外の規格を同時採用しても構わない」というものだ。ちゃっかりBD推進団体の役員企業にまで収まったが、退路はちゃんと確保してあるところがいかにもディズニーらしい。

編集部注:BDAからの依頼により、初出時の記述から該当箇所を、筆者の了承を得て削除しました。

 均衡する2大勢力の中で最後まで立場を明らかにせず、最高の条件を引き出すというこのやり方に、筆者は1993年に38年ぶりの政権交代を実現した、かつての日本新党党首、細川護煕氏の政治手腕を思い出してしまった。細川氏はご存じのように、わずか35人(のちに公認として3人追加)のミニ政党にありながら、アレヨアレヨという間に連立政権の首相に収まったのである。

 むろんハリウッドの販売シェアで、次世代メディアの主権が決まるわけではない。決めるのはユーザーだ。だがユーザーもまた、シェアという数字に弱い。「ハリウッドの過半数」が持つ意味は、小さくない。

・12月10日

 東芝の揺さぶりは、思わぬところで効いてきたようだ。BD規格の創立メンバーでもある仏Thomsonが、HD DVDプレーヤーの製造に参入すると発表したのである。1ドライブで両メディアが読めるようにするのか、2ドライブを搭載するのかは不明だが、要するに両方読めるプレーヤーを作る、ということである。

 もともとBD陣営企業のほとんどは、HD DVDを推進するDVDフォーラムにも加盟しているという複雑な事情がある。どちらかの陣営に着いて心中するよりも、「両方やっときゃ、どっちに転んでも損はない」ということである。製造メーカーとしてこの選択はあまりにも正しすぎて、むしろわれわれの目には節操なく映る。そしてこの方法論がROMメディアの正式リリース前に飛び出したことで、次世代メディアの一本化という線は完全になくなったと思っていい。

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