文化庁 文化審議会著作権分科会 国際小委員会の第2回審議が5月31日に行われた。今回の審議では「デジタル化への対応」を主題に、米国のファイル交換を巡る法律状況についての報告や、デジタル化(ファイル交換)への対応のあり方が議論された。なかでも、ファイル交換における“ダウンロード”という行為について、どのような対応をすべきかについては、参加各委員から積極的な発言が目立った。
日本におけるファイル交換に関する訴訟は、今年4月に確定したファイルローグの事例などがあり、「著作権的に問題があるファイルを、それを知りながら送信すること」については違法(著作権法23条による送信可能化権と公衆送信権の侵害)という判決が既に出ている。
だが、ファイルのダウンロードという行為については「ダウンロードと端末へのコピーという行為に限れば、現行法下では私的複製の範囲内に含まれるので合法だと思う」と述べる委員がいたように、ダウンロードする側においては著作権法第23条に該当するような条文や規制は存在していない。
WinnyやWinMXといったP2Pソフトとその利用自体には違法性はないが、違法性のある無許諾ファイルが含まれている率は高く、ユーザーが“違法性を知っていながらダウンロードする”可能性は高い。
また、菅原瑞夫委員(日本音楽著作権協会)が提出した資料によれば、音楽配信サイトの中には著作権者の許諾なしで配信を行っているサイトが複数存在しており、ユーザーが知らずのうちに著作権侵害の一助を担ってしまう可能性も否定できない。
このため「違法な送信状態であることを知った上でのダウンロードと端末へのコピーは私的複製の例外と見なすべきで、違法とするべきではないか」という意見を述べた委員が複数見られたほか、「ダウンロード行為に対して、なんらかの抑止力をもった条文を作るべきではないだろうか。今のままでは、ユーザーが自分の行為の違法性を分からないまま、著作権侵害を犯してしまう事態も想像される」と一歩踏み込んだ意見を述べる委員もいた。
しかし、ダウンロード行為については前述したように現在では私的複製の範囲内に含まれるという解釈が一般的で、委員会においても、短絡的に規制を行うことについては反対の意見を示す声が多数を占めた。同委員会の主査を務める道垣内正人氏(東京大学教授)も、考慮すべき問題であることは認識しながら、慎重な姿勢を崩さなかった。
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