デザインありきで作られる家電というのは、ときとして機能や操作性を犠牲にするものだ。フォームファクターが最初から決まっていると、入らない部分が削ぎ落とされてしまい、結果として利用者にも“割り切り”を求める。しかし、中にはその制限を逆手に取り、低価格化とデザイン性を両立させた製品も存在する。
オムロンヘルスケアのマッサージチェア「ピーィス」(HM-603/604)は、多機能機化が進むマッサージチェア市場にあって、モダンなインテリアに違和感なく溶け込める数少ない製品の1つ。決して多機能ではないが“ツボを抑えた”マッサージ機能を持ち、また10万円を下回る価格も魅力だ。同社健康商品事業部の太田弘行マネージャーと、設計を担当した三木章利主査に話を聞いた。
現在は「ピーィス」と「ピーィス スタイル」(HM-411)を合わせて3製品をラインアップしている同社だが、マッサージチェアに本格参入したのは2002年に登場した初代「ピーィス」(HM-601)が最初だ。それまでも座椅子型マッサージ椅子などを手がけていたが、実際にはOEMが中心だったという。
三木氏は、「われわれは後発ですから、どういったポジションで展開するか、当時は社内でも随分議論になりました」と振り返る。「松下電工やファミリーなど競合他社が販売しているものは、いわば按摩専用の“ロボット”で、価格も高い。同じことをやっても仕方がないでしょう」。
市場調査を繰り返し、辿り着いたのは低価格モデル。現在ほどではないが、当時も他社は20万円から30万円という高級機種に傾倒しており、本格的な製品と、その下にある製品の間には大きな価格差があった。一方、一般ユーザーが求めていたのは、基本機能がしっかりしていて、かつ価格が安いものだった。
そこで同社は、一般ユーザーが「買ってもいい」とした10万円をターゲットプライスに設定し、HM-601を開発する。「pisu」(ピーィス)という商品名も「Price」(プライス:価格)をもじったもの。最初のコンセプトが“低価格”であったことが伺える。
2002年夏に登場したHM-601は、コンパクトなサイズと価格の安さなどで人気を博した。しかしデザイン的には、「他社と同じ方向性で、まだちょっと荒っぽい印象でした。デザイン指向なのか、そうではないのか、微妙な位置付けだったんです」と太田氏。
価格や機能はユーザーにも好評だったが、他社と差別化するポイントはさらに明確にしたい。次の製品では、「よりスマートで、リビングルームに置いても“暑苦しくないもの”を目指そう」と決めたという。「つまり、HM-603/604、そしてHM-411(ピィース スタイル)は、当初からデザイン家電として企画したものといえます」。
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