腕時計、ミニラジコンカー、体温計、電卓――これらの共通点は何だろうか。答えは簡単、いわゆる「ボタン電池」と呼ばれる小型の電池が多く使われていることだ。これら以外にも、LEDライトや防犯ブザー、車のキーレスエントリーなどでボタン電池は利用されている。探してみれば、思ったよりも身の回りでボタン電池が使われていることに気づくだろう。
ボタン電池とは、「ボタン形小型電池」の総称で、具体的にはアルカリ電池(LR)、酸化銀電池(SR)、二酸化マンガンチウム電池(CR)、空気亜鉛電池(PR)などといった種類があるが、一般的によく使われているのはLRとSRの2種類だ。
SRは正極に酸化銀、負極に亜鉛、電解液に水酸化ナトリウム水溶液を使用しており、公称電圧は1.55ボルト。国内では1976年に初めてマクセルによって商品化された。安定した放電電圧や耐漏液性に優れるなどの特徴がある。しかし、SRが登場してすぐに銀の価格が高騰、製造コストが跳ね上がってしまったために、廉価版としてLRが登場した。
LRは正極に二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に水酸化カリウム水溶液を使う。公称電圧は1.5ボルト。廉価に製造できることもあり、LRは一気に普及した。製品購入時に付属するボタン電池は一部を除きほぼLRである。
SRとLRでは使われている材料が異なるものの、互換性があることは意外に知られていない。マクセルの調べでは、SRとLRの互換性を知らなかった人が77%にものぼるそうだ。
互換性があることを知らなければ、LRを使用していた機器の電池が切れた場合にはLRを購入するのが自然であるし、店頭ではLRの方が安価であるため(LRがSRの廉価版として登場した経緯からすれば当然だが)、違いを熟知していなければLRを選択する人が多いのは容易に想像できる。では、互換性があるとしても、LRに比べて高価なSRを選択するメリットはあるのだろうか。
SRの最も大きなメリットは、容量の限界まで電圧が低下しにくい放電特性だ。LRは徐々に電圧が弱くなり、SRは限界に達すると一気に電圧が低下する。つまり、LRを腕時計に使うと、次第に時計の進みが遅くなり、LEDライトであれば少しずつ暗くなっていく、という現象が起きる。容量の限界まで電圧を保持しなくてはならない機器(腕時計が代表例だ)には、SRの方が適している。さらに、マクセルの実験データによれば、SRはLRに比べて、LEDライトやラジコンカーにて約2倍のパフォーマンスを発揮したという。
放電特性の違い以外にも、SRの方が圧倒的に液漏れに強い(耐漏液性能が高い)というメリットがある。LRは、正極に使われている材料によって電池が劣化しやすく、時間とともにどうしても液漏れが発生しやすくなっている。同じ環境で実験すると、LRの方が2倍以上早く液漏れするという実験結果もある。
このように高い性能を持つSRだが、同グレードで約3倍という販売価格の差もあり、一般向けの販売数量としてはLRの方がはるかに多い。そこでマクセルは、SRの特徴をより進化させた「新・SR」とも呼べる新製品を投入した。
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