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コラム
» 2005年09月09日 18時08分 公開

西正:NHKの受信料問題を再論する――不払いに歯止めをかけるには (1/2)

NHKの受信料不払いが止まらない。今後、何らかの強硬策が講じられる可能性もある。そのやり方は難しいが、IP方式や衛星方式によるデジタル放送の再送信が実現するのであれば、それをスクランブル放送化の第一歩とすることも検討に値する。

[西正,ITmedia]

受信料不払いの理由に変化

 NHK受信料の不払いは引き続き拡大傾向にあり、このまま何の対策も講じずにいると、公共放送の運営に支障を来たすことになりかねない。

 不払いの理由は当初、NHKの一部職員の起こした不祥事の責任を追及するものであったが、最近は、これまで払っていた人たちが不公平感を感じ始め、払わなくなるという傾向が見られるようになっている。こうなると、何らかの手を打たないことには、不払いの動きを止めようがなくなる恐れがある。

 新聞協会や民放からは、この不払い運動こそ国民がNHKを糾弾している声なのだから、NHKはそれに耳を傾け、リストラを進めるべきだとの主張も見られる。ラジオ、テレビを合わせれば、数多くのチャンネルを抱えるNHKの運営が厳しいというのなら、チャンネル数を減らせば良いのではないかという主張も見られる。

 しかし、NHKは公共放送であるが故に、商業ベースには乗りにくい番組を数多く放送している。その結果として日本の放送文化が維持されている側面を見逃すことはできない。

 仮に、チャンネル数を減らすことをもってリストラというのであれば、そうした商業ベースに乗りにくい番組が放送される機会を失っていくことは明らかだろう。商業放送ではないからといって、視聴者数を獲得できない番組ばかり放送していたのでは、それこそ「見ていないから」という理由での受信料不払いを増やしてしまうことになりかねないからだ。

 そういう意味では、「そろそろ抜本的な見直しが必要ではないか」という意見が出てくるのも当然のことと思われるのである。実際、政府の規制改革・民間開放推進会議も、受信料制度の見直しを含め、NHKの在り方を見直す動きを見せ始めているようだ。

 この場合、検討の方向性として考えられるのは、民営化して商業放送とするか、英国のBBCのように受信料の徴収に強制力を持たせるかのどちらかだろう。だが、NHKの民営化については、新聞協会や民放各社からの大反対が出るのは確実なので実現性に乏しい。また、現段階でも商業放送である民放は十分充実しているので、ここは公共放送として残す方向で考えるべきだ。

 とすれば、受信料の不払いに対して、何らかのペナルティを科すという案が浮上してこざるを得ない。ただ、元々、NHKの受信料の支払い対象は、同局の番組を視聴しているか否かに関係なく、テレビ受像機を1台でも保有している世帯だった。しかし、これまで不払いに対し、特にペナルティもないまま来てしまっただけに、今さらペナルティを科すことは難しい。むしろ、そうしたプランが示されること自体が、かえって受信料の不払いの原因になる恐れもある。

 結局のところ、考えられる最も妥当な案は、放送にスクランブルをかけてしまい、受信料を支払った人だけ“鍵開け”される形にすることだろう。本来の趣旨とは異なるものの、NHKの番組を視聴するためには受信料を払う必要を持たせることで、今後のNHKの収入の安定化を図るのである。

 この際、税金のような形で強制力を持たせるより、支払いは視聴者側の判断に委ねる方が妥当だろう。放送される番組の質が受信料に見合った価値を持たないと視聴者から判断された場合、受信料収入は減少していくわけだから、NHK側にも相応の努力義務が残されるし、NHKの肥大化を安易には許さないという構図も持たせられる。

地デジ再送信手段の多様化との関係

 仮にスクランブル放送化するとしたら、いつのタイミングがベターなのかという判断は難しい。地上波デジタル放送の開始がよい契機だったのかもしれないが、もはや多くの地域で始まってしまっているだけに、途中から制度の見直しを行うことは容易ではない。

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