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「放送と通信の融合」を制作現場はどうとらえているのかNET&COM 2006(1/2 ページ)

» 2006年02月02日 17時27分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 楽天のTBS買収やライブドアのフジテレビ買収などで、人口に膾炙した「放送と通信の融合」というキーワード。経営的あるいは行政・法律的な観点から語られることの多かったが、制作の第一線に携わる人たちはこの「放送と通信の融合」をどのようにとらえているか。

 情報システム/ネットワーク関連の総合展示会「NET&COM 2006」で行われたパネルディスカッション「通信と放送の融合は現場で起こっている」では、無料インターネット放送「GyaO」の編成局長や、VoDサービス「第2日本テレビ」の責任者らが現場からの率直な意見を述べた。

photo 「電波少年」などヒット番組のプロデューサーとしても著名な土屋氏。現在はVoDサービス「第2日本テレビ」を手がける

 ディスカッションの出演者は4人。VODサービス「第2日本テレビ」を手がける日本テレビの土屋敏男氏(日本テレビ放送網 コンテンツ事業局次長 兼 PR局次長 兼 第2日本テレビ 事業本部VOD事業部長)、アニメ専門チャンネル「アニマックス」の滝山雅夫氏(Sony Pictures Entertainment テレビ部門日本代表 兼 アニマックスブロードキャスト・ジャパン 代表取締役社長)、無料ブロードバンド放送「GyaO」の菊池頼氏(USEN GyaO事業本部 編成局長)、IP放送サービス「BBTV」などを手がけるクラビットの楜澤悟氏(取締役 経営企画本部長)。

「放送と通信の融合」についてどう思うか?

滝山氏:言葉通りの“融合”が起こりうるかは疑問。ただ、コンテンツ流通が独占的なかたちで行われない方が望ましいと考える。アニメについていえば、地上波放送だけではなく、CS放送、DVDパッケージなどマルチユースがかなり進んでいるが、IP放送でなかなかサービスができないのがもどかしい。

土屋氏:テレビはオールドメディアと言われがち(笑)。第2日本テレビを開始して、いままでプールでしか泳いでなかった人間が川やプールで泳いでいるような難しさを感じる。しかし、一方で楽しさを感じているのも確か。

 最近では「プロダクションなどに任せるばかりで、放送局がモノをつくっていない」と批判を受ける。確かにそうした面もある。ただ、企画=コンテンツとは最終的には個人に行き着くと考えており、電波少年でいえば、100人近いスタッフがいたかもしれないがキーマンは社員である自分だった。

菊池氏:GyaOの登録会員数は現在660万人になるが、現場では「放送と通信の融合」についての議論はほとんどなく、「メディアの創出」を意識している。コンテンツビジネスはほかのビジネスとは違い、混沌とした部分というか、損得だけでは割り切れない部分があることを意識しなくてはならないと思っている。

photo クラビットの楜沢氏。「IP放送サービスの開始から3年、ようやくある程度のところまでは来たと実感している」

ブロードバンド放送「GyaO」はなぜ成功したのか?――地上波の限界

菊池氏:まだ成功したとは思っていないのだが(笑)、無料であることがここまで会員数を伸ばすことができた大きな理由であることは無視できない。

 視聴が無料であるかわりに広告を見てもらう放送と、いくばくかでもユーザーに負担してもらうかわりに広告が入らないレンタルビデオの市場規模を比べても分かるよう、広告モデルの方が規模は大きい。広告モデルとしてGyaOをスタートすることについて社内でも不安視する声もあったのも事実。

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