3月17日から19日まで、東京パナソニックセンターで、二足歩行ロボットの格闘競技大会「ROBO-ONE第9回大会」が開催された。
第1回のときには“立っているのがやっと”だったロボットたちも、いまでは高い安定性を誇り、ちょっと叩いたくらいでは倒れなくなってきた。このため、相手をダウンさせるためには自分の体重を相手にかけるような技が必要になってくる。一番簡単なのは、相手の方に自分が倒れ込んでいく「浴びせ倒し」だ。最近の大会では、このような「捨て身技」の応酬となる戦いが増えてきた。これはみている分には単調になってちょっと面白くない。そこで、今大会から、次のようなルールが定められた。
攻撃時に自分の足裏以外の部分が接地する「捨て身技」は、同じ技で2度ダウンを奪うことはできない。同じ技というのはロボットでいうと「同じモーション」だ。つまり、前向きの浴びせ倒しで1度ダウンを取ったら、もうその技は使えない。でも後ろ向き浴びせ倒しは、モーションが異なるので使ってもかまわない。ただし、左右の違いはモーション作成が容易なので認めない(左倒れ込みをしたら、右倒れ込みもだめ)。
また、攻撃を受けたときに足裏以外の部分が接地したら、即ダウンと見なす。これはこれまでもそうだったのだけど、レフェリーの裁量である程度は許されていた。でも、今回からは厳格にダウンだ。
さらに、技のかかりかたもレフェリーが判断する。仮に相手が倒れても、技が浅いと見なされたら、ダウンとは認められない。ちょっと柔道の判定に似ている。自分で勝手に転んだのもスリップダウンであり、10カウント以内に立ち上がれば、ダウンとしてカウントされない。
3月17日には、身長50センチ以下、体重1.5キロ以下のロボットで行われる軽量級のJ-classの大会が開催された。これは家族向けの大会という側面ももっており、予選では、中学生以下のこどもが操縦すると得点が優遇されることになっている*1。
予選には50体のロボットが出場。今年の規定演技は「足を高くあげて歩く」だ。
スギウラシスターズの「ダイナマイザーJr.」。かわいい外見で会場の人気をさらった。でも、かわいいだけではなく、運動能力も高い。
KAZZの「KZR-4」。足裏にモーターの付かない自由な回転軸があり、綺麗なスピンをすることができる。また、この機構によって腰の入ったパンチも繰り出す。実際、戦いでは重いパンチで相手をなぎ倒した。
決勝は予選上位32チームによるトーナメントによって行われた。3分1本勝負。10カウントあるいは3ダウンを取った方が勝ち。それを満たさない場合には、ダウン数の少ない方が勝ち。それも同数だった場合には、2分の延長戦。それでも決着がつかないと審判による判定である。
ベスト4あたりになると、ロボットのハードウェアの性能の勝負ではなく、操縦者のテクニックの差になってくるのだ。J-classとはいえ、そこまで成熟しているのだ。そして、そうなってくると上手いのは子どもである。
決勝は、マルファミリーの「キングカイザー・Jr」対スミイファミリーの「ありまろ5」。小学生操縦者同士の対決となった。
ありまろ5は足が速い。浴びせ倒しをしかけてくるキングカイザー・Jrだが、ありまろ5は高速ステップでよける。開始40秒、相手のうしろについたありまろ5が手につけた「サーベル」による横払いで、キングカイザー・Jrを倒す。その後も、キングカイザー・Jrは何度も攻撃をしかけるのだが、ありまろ5は、間合いを上手く取って有効な攻撃を許さない。攻撃を受けても、その瞬間に踏ん張って倒れないのだ。このあたりは操縦者の腕がすばらしい。
しかし、1分48秒、キングカイザー・Jrのうしろ浴びせ倒しで、ありまろ5ダウン。その後キングカイザー・Jrは果敢に攻めるが、有効打に至らない。逆に2分20秒、浴びせ倒しによるダウンを奪われてしまう。そして2分40秒、ありまろ5の角(くちばし)つつきが見事に決まり、3ダウンで試合終了。ありまろ5が優勝となった。
*1 家族向けの大会を行う意味は2つある。ひとつは、次世代の技術者やマニアを育てるということ。もうひとつは、お父さんだけがロボットにはまって家庭崩壊する(ロボットウイドー)ということを防ぐということ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR