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改良を積み重ねてきた実力派、ビクター「SX-L33MK2」短期連載:小さな本格派スピーカーを探す(2/3 ページ)

» 2006年08月02日 21時32分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ビクターのスピーカーといえば、いにしえのオーディオブームの時代から、高域側がよく伸びたワイドレンジ感と、中高域を歪み感少なくクリアに再生させる印象を強く持っている。

 この伝統は現在のスピーカーにも生きているようで、中高域から高域にかけての気持ちよい透明感のある音が印象的だ。しかも金属ドーム特有のピーク感、固さといったものが良く抑えられており、耳ざわりに感じるような特定の周波数域がない。

 これは、もちろんツィーターの優秀さもあるだろうが、オブリコーン採用のウーファーも、その一翼を担っているのだろう。本機のクロスオーバー周波数は4kHzに設定されている。中高域から高域にかけて、均質な透明度を出せているのは、ウーファーが担当する周波数帯の中でも高めのところで、歪みっぽさがよく抑えられているからだと思われる。

photo 14.5センチアルミオブリコーンユニット。頂点をシフトさせて共振を排除したスタイルがユニークだ

 完全にアルミだけで作られたウーファー用ダイアフラムは、最近は珍しい存在だ。音質面では音離れがよくスピード感溢れる音が期待できるアルミ製ダイアフラムだが、固有の共新周波数が中高域に出やすい欠点がある。他製品を見ても、アルミコーティング、あるいはメタライズド処理が行われた(一見、フルアルミに見える)ダイアフラムが主流だ。

 ビクターがオブリコーンという独特の技術を開発したのは、アルミを使いながらも、この独特のクセを抜くためである。くわえてアルミドーム型のツィータと素材が揃うことで、両ユニットのつながりがよくなり、トータルとしての質感が向上しているのだろう。

 中域は何とも艶っぽく聞こえるが、歪みが加わって艶が乗っているのではなく、あくまでもクリアさを保ったままで、心地よいヴォーカルを楽しめるところが気持ちいい。パワフルさより繊細、ガッツよりも上品といった印象だ。解像度は小型スピーカーらしい細やかさがあるが、神経質なほどカリカリの仕上がりではなく、BGMとしても音楽観賞用としても使える。

 Matt BiancoのBasiaの歌声にはまさにピッタリのキャラクター。女性ヴォーカルに対しては、万能的によく合うスピーカーだ。

 一方で低域はスリム。ダブルウーファーのSX-LC33MK2でも、低域はややホッソリした印象だが、本機は14.5センチと今回集めた中でもっとも大きなウーファーを持ちながら、低域の量感はもっとも少ない。

 たとえばJoe Sampleのピアノは低域が不足し、低弦が多く鳴るパートではバランスが崩れ、少し違った音楽に聞こえた。Donald Fagenでもベースラインの迫力、キレが不足気味だ。

 しかし、そうした低域再生能力の不足を補って余りあるのが、中高域からの上の周波数帯における美しさだ。低域の量感はバスレフポートの空いている背面を壁に近づけることで多少調整できるが、低域の解像度や質感表現までは期待できない。しかし、その美点、長所を最大限に引き出す使い方をすれば、間違いなく価格以上の成果を得られるだろう。

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