昨年来、液晶テレビの“かたち”の変化が著しい。まず、三菱電機が「テレビは大画面から全画面へ」をキャッチフレーズに狭ベゼル化に挑戦、フレーム幅を27ミリとした「MZ70シリーズ」を昨夏に発売した。また昨年暮れには、日立が32V型で最薄部35ミリ、重量10.9キログラムの「UTシリーズ」を提案、従来の同社製液晶テレビに比べて、厚みで約3分の1、重さで約2分の1を実現した。
フレームは細く、全体は薄く軽く。液晶テレビがモノとしての存在感を消し去る方向に向かうことで、さまざまな使われ方に軽やかに対応できるインテリアコンシャスな存在へと進化しつつあるのは間違いない。
そんな大きな流れのなか、液晶テレビの巨人・シャープから最薄部34.4ミリを実現した“エクストラ・スリム”「Xシリーズ」が発売された。
46/42/37V型の3画面サイズ展開となる本シリーズ、同社亀山工場で生産されるフルHD(1920×1080)倍速駆動(120Hz)パネル&リアル10bitドライバーのディスプレイ部とチューナー部を別筐体にしたセパレート構造を採っているのが大きな特徴で、両者は1本のHDMIケーブルでつながれる。
意匠を担当したのは、AQUOSを長年手がけてきた世界的に著名なインダストリアルデザイナーの喜多俊之氏。ディスプレイ背面にアルミ飾りパネルを採用するなど、どこに置かれても美しさを訴求できる、すっきりとした仕上がりである。ベゼル幅は、左右・上部が40ミリ強と必ずしも狭くはないが、視覚的な安定感が得られる黄金分割(1:1.618)に近い美しいプロポーションが実現されている。
また、壁面からテレビ前面までわずか5.85センチとなる壁掛け用金具や壁掛け時に目障りな配線を隠すスタンド調ケーブルカバー、中空にディスプレイがぽっかり浮いているイメージが得られるフローティングスタンドなど、超薄型メリットを訴求できる各種オプションが用意されているのも興味深い。
パネル表面は、黒の再現に有利な、映り込みがうっすらと認知できるハーフグレア仕様。本シリーズに採用された液晶パネルのネイティブコントラストは、「Gシリーズ」と同じ2000対1。しかし、白伸長/黒伸長を行なう「アクティブコントラスト」がオンになる映像モード「ダイナミック」では、1万5000対1という驚異的な値となる。
用意された映像モードは、「ダイナミック」のほかに「標準」「映画」「ゲーム」がある。今回、42V型の「LC-42XJ1」をじっくりチェックしてみたが、それぞれのモードで、かなり丁寧に画質が追い込まれているのが確認できた。
色温度「高(1万2000ケルビン)」がデフォルトとなる「ダイナミック」は、さすがにくっきりとした明快画質。しかし、100〜200ルクス程度のリビングルーム照明下で見ても、他社の同モードのようにまぶしくて見ていられないということはなく、白いシャツの皺などもなんとか描こうとしているのが分かる。ただし、色再現については明らかに記憶色志向。鮮やかすぎてウソっぽく見える。
色温度「高・中(1万500ケルビン)」の「標準」モードにすると、しっとりとした落ち着いた画調になる。従来、AQUOSの「標準」は、入力された映像信号の輝度分布をヒストグラム処理し、シーンごとにバックライトの光量とガンマカーブを制御してコントラストを改善していたが、Xシリーズではこの処理にくわえて、液晶シャッターをシーンごとに適応的に開け閉めすることで光の透過量をコントロール。よりいっそうきめ細かなコントラスト制御が可能になったという。その仕上がりはとてもよく、さまざまなハイビジョン映像を見たが、コントラスト表現に不自然なところはなかった。
「映画」モードは、デフォルト時に「明るさセンサー」がオンになるので、一応どんな照度環境下でも使えるはずだが、色温度が「低(6500ケルビン)」と低く、通常のリビングルーム照明下では白がやや黄ばんで見えるなど、違和感があった。そこで部屋の全体照明になるシーリングライトを消し、テレビ背面に置いた白熱電球のみをつけた20ルクス環境(視聴位置)を作り、「明るさセンサー」をオフにしてBDやDVDでさまざまな映画ソースを見てみたら、じつに味わい深い映像が得られた。やはりこの「映画」モードは、ほの暗い環境で観て本領を発揮する映像ポジションなのだろう。
とくに従来のAQUOSでは、色再現がややさっぱりとした印象だった映画作品のおいても、こってりとした濃厚な味わいが出せるようになったのが大きな収穫。なかでも、ぼくが感心したのは、ブルーレイディスクで見た「ヘアスプレー」だった。
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