先週、米ラスベガスで開催された「International CES 2009」では、もう何度目だろうか、再び映像のダウンロード配信ビジネスへの萌芽を感じさせる展示が行われていた。例えば米大手放送ネットワークのNBC Universalは、サムスンブースのすぐ隣という好立地に大きなブースを設け、同社の番組をネットワークダウンロードするサービスのデモを行っていた。
サンディスクと協力し、2GバイトのUSBメモリを全員に配布。その場でキオスク端末から好みの映像を好きなだけダウンロード可能という展示は、控えめな演出の多かった今回のCESでは、かなり目立ったものだった。
仕組み自体はとてもシンプルなもので、メモリカードスロットとUSB端子を持つキオスク端末にDRM付き動画を描き込むだけ。PC再生用の720×480ピクセル/1.5Mbpsと携帯プレーヤー向けの320×180ピクセル/350kbpsの2種類(いずれもWMVフォーマット)を選択可能だが、いずれも仕組みは同じ。最初の再生時に鍵を、再生するPC、あるいは携帯プレーヤーを接続するPCに対して配り、一度鍵を開けると鍵を受け取ったPCでしか再生(あるいは携帯プレーヤーのコピー)が行えなくなるというものだ。Microsoft DRMが用いられている。
画質はCS放送よりは良くところもあるが、DVDには遠く及ばない。とはいうものの、インタラクティブなテレビ視聴環境を構築する上で、NBC Universalとしては重要と考えているようだ。テレビの前に座っている時間がない人に対して、別の場所、別の時間に自分たちの番組を見てもらう。より多くの人たちに番組を見るチャンスを提供することで、広告的な価値を最大限に高めようというわけだ。
ダウンロードしてテレビ以外のデバイスで見るということは、忙しく働いている人という見方もできるわけで、広告も対象視聴者を従来より絞り込んで効果的に発信できるといった皮算用もあるという。あるいは映画やドラマなどはダウンロード販売という形で売るということも考えているようだが、まだ具体的なビジネスモデルは確定していないようだ。
実はSDカードなどのフラッシュメモリ価格が急速に下がったことを受け、北米でメモリカードへのダウンロードをビジネスにしようという動きは、水面下で着々と進んでいる。HD DVD対Blu-ray Discのフォーマット戦争が終結したことで、今度はBDは普及せずにネットワークダウンロードとメモリカードがコンテンツ流通を支配すると唱える人たちが出てきたためだ。
そんなわけで“ダウンロード”という言葉が、以前より頻繁に聞かれるようになってきた米国のコンテンツ業界だが、日本市場への影響はあまりないかもしれない。国内では大手電機メーカーが「アクトビラ」に参加しているため、映像配信、ダウンロードともに協調路線をとって家電中心にインフラの整備を進めている一方、オンデマンド配信ではU-SEN(Gyao)が先行しすぎていることもあり、PCを起点にした新しいコンテンツポータルが育ちにくい状況があるではないだろうか。
もっとも、そもそも北米ではネットワークダウンロードが流行しそうなのか? というと、そうでもない。放送局の足並みもそろっていないが、映画スタジオはそろって否定的な意見を持っているようだ。(次回へ続きます)
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