ジェリー・ブラッカイマーと並ぶハリウッドの売れっ子プロデューサー、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ。ワーナー・ブラザーズでは「マトリックス」や「オーシャンズ11」などの大作に関わり、2003年にパラマウントの敷地内に製作会社「ディ・ボナヴェンチュラ映画」を設立、「トランスフォーマー」や「コンスタンティン」などパラマウント配給の作品でヒットを飛ばしている。そんな彼の2009年の大ヒット作「トランスフォーマー/リベンジ」と「G.I.ジョー」が12月にBD化、2作品の魅力について語ってもらった。
「トランスフォーマー」はタカラの変形ロボット玩具シリーズ、「G.I.ジョー」はアメリカのハズブロ社によるミリタリー・フィギュア、ともに子供たちが熱中したおもちゃが元ネタになっている。ただし、そうした共通点がありながらも、映画化のアプローチはまったく異なるものだったという。「トランスフォーマー」にしても、「G.I.ジョー」にしても、キャラクター(原作)のファンか多くいるので、それだけでも映画化の大きなメリット。でも、2作品のアプローチの仕方はまったく違うものだった(ボナヴェンチュラ氏)。
ボナヴェンチュラ氏: 「トランスフォーマー」は巨大ロボットと人間をどのように絡ませていくかという難しさがあり、一方の「G.I.ジョー」はフィギュアではなく、あくまでコミックが土台。そのストーリー性に魅了されて映画化を決め、隊員たちそれぞれの特徴や魅力をいかに伝えるかを大事にしたんだ。
実は、パラマウントは数年前に「G.I.ジョー」の映画化権を獲得していたものの、しばらくゴーサインを保留していた。
ボナヴェンチュラ氏: 「トランスフォーマー」(2007)より「G.I.ジョー」(2009)の脚本のほうが先に完成していたんだけど、きっとおもちゃをどう映画化するのかイメージがつかめなかったのかもしれないね。スピルバーグが「トランスフォーマー」に関心を示したことも大きかったのかな(笑)。「トランスフォーマー」の世界的大ヒットのおかげで、「G.I.ジョー」の映画化も順調に動き出したんだよ」。
映像革命と称された前作「トランスフォーマー」は全世界で興収7億ドル以上の大ヒットを記録した。2年ぶりとなる続編「トランスフォーマー/リベンジ」は製作費を3億ドル投入し(前作は1億5100万ドル)、すべてがパワーアップした。
ボナヴェンチュラ氏: 「観客の目はシビアだし、常に新しいものを求めているからね。「リベンジ」ではピラミッドに行ったり、パリに行ったり、世界各地を飛び回ることでアドベンチャー要素を膨らませようと思ったんだ。トランスフォーマーの数も圧倒的に多く、オプティマスとジェットファイア(ブラックバードの変型体)など、前作にはなかったロボットの合体シーンにも力を入れたよ。
確かに、トランスフォーマーたちが世界ところ構わず暴れまくり、クライマックスのエジプト・ヨルダンでのピラミッド決戦までエンジン全開、隙のないバトル・アクション構成には意識を失いそうになるほどだ。
トランスフォーマーの数は前作の13体を大幅に上回る60体以上。オプティマス、バンブルビー、アイアンハイド、メガトロン、スタースクリームに加え、今回はジェットファイア、デバステーター、ツインズのスキッズ&マッドフラップ、ウィーリー、ザ・フォールンなど新キャラも続々する。
ボナヴェンチュラ氏: ファンの方たちに好きなキャラについてのアンケートを実施して、それを参考にしたんだよ。だから、きっと満足してもらえると思う。トランスフォーマーのより入り組んだ動きにも注目してほしい。
ちなみに、スタースクリームなどはアニメ版のデザインと大幅に違っているが、「最初は1980年代のアニメのキャラと同じデザインで、という意見もあったけれど、現代的にデザインし直したほうが、やはりクールだったんだ」(ボナヴェンチュラ氏)。
「G.I.ジョー」は、世界転覆をもくろむ悪の組織「コブラ」が各地で破壊活動を行い、彼らの暗躍を止めるために、アメリカ政府が特殊部隊G.I.ジョーを送り込むというストーリー。監督は「ハムナプトラ」シリーズや「ヴァン・ヘルシング」などで知られるスティーブン・ソマーズ。
ありとあらゆるバトルシーンはもちろん、滑走路のいらない垂直離着機、地底を進むドリルカー、ミサイルを搭載した4WDなど、男性の少年心をくすぐるエキサイティングな乗り物やガジェットがてんこ盛り。「この作品に出てくるテクノロジーは全て現実のものを基にしているんだ。決してSFでないところがミソ」という。
ボナヴェンチュラ氏: iPodなんて20年くらい前には完全にSFの世界だったろ? みんなこんなものが現実になるとは考えてなかったからね。将来どういうものが創造されて、どういう技術が考えられるか、と逆の発想をしたんだ。我々はサイエンス・フィクションというより、サイエンス・ファクトリー(科学的事実)というふうに考えている。
ボナヴェンチュラ氏: 例えば、劇中の金属を食いつくす化学兵器ナノマイトは、ガン治療におけるナノテクノロジーからヒントを得ているんだ。ナノテクノロジーは既にさまざまなかたちで紹介されているけれど、注射ですべての細胞を殺してしまうのではなく、ガン細胞にだけ効くというもので、1980年代からすでに話されていてね。ナノマイトはこの発想を応用したものなんだ。ほかにも、滑走路を使わずにそのまま宙に浮かび上がることができる実在の垂直離着陸機(ハリアー)を発展させたりね。だから、この映画に出てくるものは、いずれ現実のものとなっているかもしれないよ。
現在52歳の彼は「バットマン」「アイアンマン」世代だという。「どの年代でもヒーロー的なキャラクターに魅了されるもんだよね。それにしても「アイアンマン」はどうしてあんなに長いこと映画化されなかったのか不思議だったから、僕自身が映画化した(笑)。
「G.I.ジョー」の中で、人間の能力を超人的なものにできるアクセラレーター・スーツが登場するんだけど、「アイアンマン」のロボット・スーツみたいで興奮したよ。アクセラレーター・スーツは時速55マイルで走れる優れもので、もし実現化したら絶対に試着してみたい。あんなに早く走れるなんて、考えただけでもワクワクするよ」と目を輝かせて語るその表情は、純粋な子供のよう。
最後に「G.I.ジョー」の中でお気に入りのキャラについて聞いてみた。「忍者が好きだから、イ・ビョンホンが演じたスネークアイズとレイ・パークが演じたストームシャドーかな。とても興味深いキャラだから、スピンオフにしても色々ストーリーが膨らむね」
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