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うれしい“ニコイチ”? ソニー「STR-DN2030」の素性を探る実売5万9800円(1/2 ページ)

» 2012年12月04日 22時56分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 AVアンプは、近年“買い下がり”傾向の強い製品といわれる。ここ数年、販売台数が横ばいなのに対し、売上金額と平均単価が下がっているからだ。実際、メーカーや販売店に話を聞くと、買い替え時に前回よりもグレードを下げる人が多いのだという。

 理由はカタログを見れば分かる。例えば地デジ化やBlu-ray Disc登場時のような“過渡期”には、製品グレードによる性能差が大きく、AVファンなら自然と上位機に目がいく。しかし、それが一段落して技術的にもこなれてくると全体の性能が底上げされ、ミドルレンジ以下でも十分な機能を備えるようになる。最近ではエントリークラスのAVアンプでも7.1chに対応しているのだから、数年前のミドルレンジを使っていた人が「これで十分」と考えるのも無理はないだろう。

ソニーのAVアンプ「STR-DN2030」(左)、開発と音質チューニングを担当したソニーの金井隆氏(右)

 今回取り上げるソニーの「STR-DN2030」は、そうした傾向を考えると理解しやすい製品だ。メーカー希望小売価格は8万4000円だが、現在は直販サイトでも5万9800円とエントリーに近い価格(※真のエントリー機として、5万円を切る「STR-DH530」がある)。しかし、中身を知ると、最近のAVアンプに詳しい人は驚くかもしれない。

 まず「STR-DN2030」という型番について。これはソニーが海外で展開している型番であり、STRはラジオチューナー付きのレシーバー(AVアンプ)を示している。ソニーは昨年、5万円前後のエントリーモデル(STR-DH710)だけを国内でも販売したが、今年は4月発売の「STR-DH530」に続き、ミドルクラスとして「STR-DN2030」を導入。「TA-DA3600ES」(13万6500円)の後継に据えた。

 型番や価格からは後継機に見えないが、実はSTR-DN2030のシャーシ、および7.1ch対応の「広帯域パワーアンプ」は、「TA-DA3600ES」とほぼ共通だ。一方、トレンドでもあるネットワークオーディオ機能の基板は上位機「TA-DA5800ES」とほとんど同じ(低ジッターのクロック水晶と非常用ファンを搭載していない)。さらに入力8系統、出力3系統というHDMIインタフェース基板もTA-DA5800ESと共通だ。基板を見比べると、フロントHDMI入力のコネクターが省略されているだけだった(TA-DA5800ESは入力9系統)。

ネットワークオーディオ基板(左)とHDMI周りの基板(右)

 つまり「STR-DN2030」は、元ES型番のミドルクラス機をベースに、ハイエンド機と同じ最新ネットワークオーディオ回路とインタフェースを組み込み、エントリー価格で販売している製品ということになる。開発と音質チューニングを担当したソニーの金井隆氏は、「このクラスで最強の7.1chモデル」と胸をはるが、むしろ“クラス度外視”というのがふさわしい。たしかに部材の共通化によって開発/製造コストは抑えられるかもしれないが、一方で“買い下がり”ユーザーをターゲットにした戦略的な商品であることも間違いないだろう。

ネットワークオーディオとHDMIまわり

 USB DAC機は搭載していないが、「STR-DN2030」のネットワークオーディオプレーヤー機能は「TA-DA5800ES」と基本的に同じことができる。専用ネットワークエンジンは、最大192kHz/24bit、5.1chまでのWAVとFLACを再生可能。マルチチャンネルのハイレゾ音源再生に対応した製品は、このクラスでは初となる。

背面に4ポートハブを装備(左)。やはり見逃せない高品質ハンダ「M700ES-FPS」(右)

 背面には4ポートハブを備え、NASを直結できる仕様だ。また使っていないポートを明示的にオフにできるLANポートアクティベーション機能、しっかりした構造の接点、ES型番の特製ハンダ「M700ES-FPS」など、TA-DA5800ESと同じ。「AVラックに置く、オーディオ用の高品位ネットワークハブと考えても安いと思います」(金井氏)。

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