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次世代照明“有機EL”の憂うつ、そして明るさライティング・フェア2013(1/2 ページ)

» 2013年03月06日 19時35分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 かつて“次世代の照明”といわれたLEDが急速に普及した一方で、同じく“次世代の照明”といわれる有機ELはなかなか普及の糸口がつかめない。一部のインテリア照明や博物館など特定用途に使われるケースは増えたが、一般家庭への“普及”というにはほど遠い状況だ。さらに先行するLEDの進化が、有機EL照明のお株を奪おうとしている。東京ビッグサイトで開催中の「ライティングフェア」会場で最新の動向を探った。

コニカミノルタブースでは、玉虫色に光りながら羽ばたくユニークな有機EL照明「光りの羽根」を参考展示。パネルに光学フィルムを貼ったものだが、いかにも未来的(左)。三菱電機が参考展示した有機EL照明の試作機。模様に見える部分が実は電線になっている。低電圧駆動を生かしたインテリア照明だ(右)

 有機EL照明にはいくつものメリットがある。ガラス基板に有機材料を蒸着(あるいは塗布)して作る板状の照明は薄く軽いため、使う場所を選ばない。インテリア性の高い照明も作ることができる。またパネルはムラなく光り、「幅広い波長がまんべんなく出る」ため、演色性もRa90以上と高い(演色性は、明かりに照らされたものが自然に見えるかを判断する指標。Ra100なら太陽光とほぼ同じになる)。ほかにも紫外線を出さない、発熱が少ないといった利点もあり、発光効率や寿命、製造コストといった課題を解決できれば市場性は高いとみられている。

現在、量産されている有機EL照明は四角いパネル状がメイン。10センチ角程度のサイズで1万円以上する。写真はパナソニック(左、中)とLumiotec(右)のもの

 しかし、先行するLED照明も進化を続け、いつのまにか有機ELの“お株”を奪っていた。例えばパナソニックが4月に発売するLED照明「パネルミナ」は、面発光で目に優しい光が特長。反射板や導光板といった光学技術を用い、まるで有機ELパネルのような光り方を実現している。またシャープも導光板を使ったダイニング用のLED照明を昨年から販売するなど、すでに“薄い”は有機ELの専売特許ではなくなった。「導光板に光を投入するためにある程度の厚さは必要なので、さすがに数ミリ厚といった有機ELにはかなわない。しかし見た目はいかにも“次世代”」(シャープ)。

パナソニックの「パネルミナ」(左)とシャープのLEDダイニングライト「DL-PD01K-W」(中、右)。消灯時はただのガラス板に見える

 演色性も同じだ。ライティングフェアの会場には「Ra95」というLED電球やLEDモジュールが登場し、ハロゲンランプの代替光源として注目を集めている。これまで演色性がネックになってLEDの普及が進まなかった分野にも期待できそうだが、一方で有機ELパネルメーカーにとっては脅威になりかねない。例えばパナソニックが生産している有機ELパネルは「Ra90以上」で、Lumiotecの製品は「Ra93」。これまで優位性としてアピールしてきた部分でLEDに先を行かれてしまった。「Ra95といっても、LEDは波長が急峻なため、1つ1つの色を見ていくとまだ課題はあるかもしれません。でも、正直複雑な気分です」(Lumiotecの説明員)。

Ra95の演色性を実現したLED照明

 発光効率や寿命については、言うまでもなくLEDが大きくリードしている。LED照明は多くの製品で4万時間というカタログスペックを実現しているのに対し、有機ELパネルは1万時間前後(70%に落ちるまで)。白熱電球や蛍光灯が比較対象だった時代ならともかく、ここまでLEDが普及すると比較対象は自ずと変わってくるだろう。

 また発光効率も上記の量産パネルは40lm/W(ルーメン/ワット)ほどで、インテリア照明としては機能しても、部屋の主照明とするにはまだ力不足だろう。もっとも、数年前にはLEDも「主照明にならない」と言われていたことを考えれば、現在のスペックが未来を決めるものでないことは明らかだ(2005年のライティングフェアの記事)。

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