今年も9月5日から10日まで、独ベルリンで世界最大級の家電展示会「IFA 2014」が開催された。パナソニックのTechnics(テクニクス)ブランド復活やソニーのハイレゾ製品群といったオーディオ分野にトピックが多かった一方、テレビなどのビジュアル分野はどうだったのか。今回もAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく聞いていこう。
――今年のIFAはどうでしたか
麻倉氏: 全体のトピックとしては、まず会場の「Messe Berlin」に新しいコンベンションセンター「City Cube Berlin」が完成したことでしょう。これまではキャパが足りず、ブースを見るにも待ち時間が長かったのでそれを解消するためと、IFAの主催者側が国際的なトレンドセッティングを意識し始めたこともあって新しい建物が必要だったのです。
IFAは、1924年の「第1回大ドイツ放送展」から90年もの歴史を持つ展示会ですが、ほんの5〜6年前まではクリスマス商戦前に開催されるドイツのローカル商談会でした。それが国際的な注目度が高まるにつれ、CESのような業界トレンドを定めるような展示会を目指すようになりました。手狭な旧コンベンションセンターだけでは対応できなくなったのです。
麻倉氏: そしてオープンしたばかりの「City Cube」を今年借りたのは、韓国サムスンでした。一方、これまでサムスンが使っていた大きな小間にはソニーが入るという玉突き現象が起きています。そのサムスンブースは、広く見渡しやすい構成だったのは良いのですが、奥には何があるか、そこまでいかないとよく分かりませんでした。だだっぴろい平原という感じでした。
一方のソニーブースは天井の高さを利用して周囲に半円形の巨大なスクリーンを張り、新製品やメッセージを映し出し、一目でソニーのアクティビティが理解できた点が良かったと思います。これまでのブースは最大の面積でしたが、暗く長い廊下があって寝ている人がいたり、一方でブース内は大きな柱で視界が遮られていたりと、少しスペースをもてあましていた印象もありましたから、断然、良くなりました。
――今回はオーディオ方面のトピックが多かったと思いますが、テレビなどはどうでしたか?
麻倉氏: 3つの方向性が見えてきました。まずは4Kへのシフトです。すでに展示機に2Kテレビはほとんどない状態で、中国メーカーを含めてすべて4K、それも画面が湾曲したカーブドがメインになっていました。
サムスンブース内に展示されていた4Kテレビのうち、フラットタイプは60V型、65V型、75V型、85V型の4機種。一方でカーブドが65V型、78V型、そして105V型の5Kでした。展示機の台数ではまだフラットタイプのほうが多いですが、勢いはカーブドのほうが遙かに上。サムスンに話を聞いたところ、大型テレビでは出荷台数の50%が湾曲タイプだそうです。LG電子も同じような状況だと話していました。
――欧州では湾曲タイプが流行っているのですか
麻倉氏: 今度、湾曲タイプを2機種発売するソニーに理由を聞いてみましたが、「ファッションでしかありません」と言っていましたね。欧州ではスタイリッシュな製品が好まれますから、その延長線上で、従来にない曲がった形が受けているようです。
しかし、画面を曲げることによって画面にムラが出たり、コントラストが落ちる傾向にありますし、外光の映り込みも汚く見えるようになるなど、画質的には不利です。それでも購入するユーザーは多いようです。
面白かったのは、サムスンが湾曲テレビに合わせて湾曲したサウンドバーを展示していたことです。またLG電子はアスペクト比21:9の105V型5Kテレビを展示していましたが、ハーマンカードンの技術を導入して凝ったオーディオが特徴です。
実際、105V型クラスのスクリーンサイズになると逆にフラットのほうが違和感を感じます。微妙に湾曲していることで、映画館のような安定感を感じます。LGは製品化する方針のようですね。
余談になりますが、21:9のシネスコサイズスクリーンを利用したモニターディスプレイをサムスンとLGが展示していました。これは金融関係など業務用を想定したもので、湾曲させることで見やすく表示できます。
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