ディストピア、それはユートピア(理想郷)の正反対の社会。コンピュータが人類を支配したり、未知の敵に襲われたり、今では考えられないような苦難に満ちた社会が待ち受けているかもしれない。今回はそんな「ディストピアSF」を感じる現代のガジェットを3つ紹介しよう。
ソニーの音声コーチング機能付きスマートイヤフォン「Smart B-Trainer」は、ミュージックプレーヤーとして使えるのはもちろん、心拍計やGPSなどのセンサーも搭載されているガジェットだ。ランニングするときに使うと、速度に合わせて最適なテンポの曲を自動で選んでくれたり、心拍数を計測してペース調整のアドバイスもしてくれたりすると言う。
この側面だけを見れば現代的で使い勝手にすぐれたスマートイヤフォンとして文句はないだが、人間の感情を読み取って最適なアウトプットを提供してくれると考えれば「感情調節マシン」となりはしないだろうか……?
SFの名作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」には、情調(ムード)オルガンというガジェットが登場する。これは特定のナンバーをセットして眠ると、起きたときの気分を晴れやかにも落ち着いたものにもすることができる代物。言い換えれば、ポジティブとネガティブな感情を意図的にコントロールすることが可能である。
肝心なのは、このようなウェアラブルデバイスの数値を「読む」力だ。計測されたデータに対する対応を機械に委ねるのではなく、数値を知った上で自分がどう振る舞うべきかをコントロールする必要がある。
2015年2月、日立ハイテクノロジーズが幸福度を測定するウェアラブルセンサーを発表した。その目的は、個人の幸福度から組織全体の業績向上を図るためだ。人間の心理状態を数値化すれば、効果的なサポートができるかもしれない。
しかし、不安や疑問が残るのもたしかだ。例えば、幸福度の格差が生まれたり、幸福度を基準にした新たなストレスが生まれたりすると指摘されている。日本人が心の奥底に隠してきた美徳ともいえる幸福度。その数値化により、人間関係や社会の在り方が変わっていくと予想されている。
メール、電話、各種アプリの使用など、私たちの現代の生活において欠かすことのできないスマートフォン。PCと同等、もしくはそれ以上の性能を持ち、あらゆるシーンの効率化やストレスの軽減に役立っている。
そんなスマートフォンで行っている全てのことを、掛け声だけでできるようにしたのがGoogle Glassだ。スマートフォンの小さな画面で煩わしい操作をすることなく、ハンズフリーでより軽快な使い心地を実現してくれるだろう。
しかし、Google Glassは掛け声やちょっとした動作でアプリを使用できるため、誰がどんな使い方をしているか分からなくなる。つまり、プライバシーの問題は大きな課題だ。また、あらゆるシーンがGoogle Glassで行われるようになると、リアルのコミュニケーションが減っていくことが予想される。
とはいえ、プライバシー問題は犯罪予防になるともいえるし、コミュニケーションは翻訳アプリの発展でよりスムーズになるとも考えられる。Google Glassで文字通り視野が広がり、新たな可能性が開拓されることを願うばかりだ。
未来へのカギを握るのは、現代に生まれたデジタルガジェットの数々。それらを活用するのも悪用するも未来の人類次第だといえる。
それらのハイテクアイテムを使ってどのような未来が描けるのかを、今から想像しておくのも悪くないだろう。ディストピアとなるか、ユートピアへの道なのか、これからの技術に期待したい。
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