金原 春本さん、次は何作ってるの?
春本 羊じゃ羊!
春本 すごいじゃろ、これも落ちとった木で作るんだわ。
元は近所の河原で拾ってきた丸太だという。このときはまだ荒々しい見た目だったが、その後春本さんが作り出した羊は素晴らしい作品だった。
この年は、行きすぎて私の表札を作っていただいたりもした。
時系列的に見ると、一つ一つにストーリーができて、それらのクオリティが確実に上がっているのが分かる。
その一方で、2012年の水車は故障部分も増えたため、一部改造されていたり、遠慮なく解体されたりしていた。
春本さんの世界は、進化と解体を繰り返して、私たちが想像することもできない姿へと変貌していく。
こんなパワフルな春本さんであったが、先日訪れた際、実は血栓症で倒れて入院していたということを伺った。幸いなことに、後遺症はほとんどなく元の生活に戻ることができているそうだ。
だが私にとって、春本さんの入院はとてもショックな出来事だった。いつも遊びに行くと元気な顔を見せてくれる春本さん。
今の春本さんのこの製作行為が、刹那的なものに思えた。とんでもない情熱をかけて作り続けている作品のこれから先は、どうなるんだろう。
「まだまだもっとカラクリを増やす予定じゃわ! またいつでも来てな」
そう話す春本さんの顔は、宝物を自慢する少年のようにきらめいているように見えた。
この作品たちを一目見てただ「面白かった」で終わらせたくない。この春本さんの作品を、生きた痕跡を記録していきたいと勝手に考えている。
私の地元は川西市だ。自慢できることといえば、桃とイチジクの生産量が多いこと、源頼朝の本拠地になったこと。
そして無名だけど素晴らしい芸術家が住んでいるということだ。
今年も川西に帰った時は、あの芸術家に会いに行こう。
珍スポット、B級スポット、秘宝館、ストリップ、ジャンクション、工場、珍建築、電波住宅、珍寺、珍仏、巨大仏、新興宗教、奇祭、純喫茶、遊郭跡……。
遠くにあるようで日常のすぐそばにある「さいはて」を巡る旅人、金原みわの旅の記録をまとめた紀行エッセイ集がシカク出版より発売。
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