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川西 カラクリ屋敷の春本さん(3/3 ページ)

» 2016年06月02日 06時00分 公開
[金原みわITmedia]
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2015年

金原 春本さん、次は何作ってるの?

春本 羊じゃ羊!

春本 すごいじゃろ、これも落ちとった木で作るんだわ。

 元は近所の河原で拾ってきた丸太だという。このときはまだ荒々しい見た目だったが、その後春本さんが作り出した羊は素晴らしい作品だった。

 この年は、行きすぎて私の表札を作っていただいたりもした。

 時系列的に見ると、一つ一つにストーリーができて、それらのクオリティが確実に上がっているのが分かる。

 その一方で、2012年の水車は故障部分も増えたため、一部改造されていたり、遠慮なく解体されたりしていた。

 春本さんの世界は、進化と解体を繰り返して、私たちが想像することもできない姿へと変貌していく。

作品の先に

 こんなパワフルな春本さんであったが、先日訪れた際、実は血栓症で倒れて入院していたということを伺った。幸いなことに、後遺症はほとんどなく元の生活に戻ることができているそうだ。

 だが私にとって、春本さんの入院はとてもショックな出来事だった。いつも遊びに行くと元気な顔を見せてくれる春本さん。

 今の春本さんのこの製作行為が、刹那的なものに思えた。とんでもない情熱をかけて作り続けている作品のこれから先は、どうなるんだろう。

 「まだまだもっとカラクリを増やす予定じゃわ! またいつでも来てな」

 そう話す春本さんの顔は、宝物を自慢する少年のようにきらめいているように見えた。

 この作品たちを一目見てただ「面白かった」で終わらせたくない。この春本さんの作品を、生きた痕跡を記録していきたいと勝手に考えている。

 私の地元は川西市だ。自慢できることといえば、桃とイチジクの生産量が多いこと、源頼朝の本拠地になったこと。

 そして無名だけど素晴らしい芸術家が住んでいるということだ。

 今年も川西に帰った時は、あの芸術家に会いに行こう。


さいはて紀行

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