パナソニックとソニーが考える「近未来のテレビ」:ファインテック・ジャパン
フラットパネルに関する展示会「ファインテック・ジャパン」にて、パナソニックとソニーが両者の考える「近未来のテレビ像」を披露した。大画面化、フルHD、その次に提示されるものは何だろうか。
4月15日に開幕したフラットパネル研究開発と製造技術に関する展示会「ファインテック・ジャパン」。「FPD部品・材料EXPO」「国際タッチパネル技術展」「国際フラットパネルディスプレイ展(Display2009)」という3つの展示会を併催する大規模な催しで、約670もの企業が出展する。
開幕初日に行われたキーノートスピーチでは、「VIERA」を擁するパナソニックの今井淨氏(パナソニック AVCネットワーク社 副社長 CTO)と、「BRAVIA」を擁するソニーの石田佳久氏(業務執行役員SVP テレビ事業本部長)が、両者の考える「テレビの未来像」を語った。
「リンク」は白物家電、カーナビまで
市場全体の苦境が伝えられる薄型テレビだが、今井氏はワールドワイドで見れば、薄型化とデジタル化という2要素によって年間1億台から台数で2億台、金額にすれば10兆円の市場規模に成長ており、市場全体の基調としてはいまだ拡大の傾向にあると述べる。
そのなかで同社が進むべき方向性として、まず今井氏が紹介したのがIP伝送への取り組みだ。ブロードバンド回線の普及でHDコンテンツのIP伝送が可能になったことから、同社は日本ではアクトビラ(アクトビラビデオ・フル)、北米ではVIERA CASTとして、テレビでIPサービスを楽しめるよう製品を提供している。
モバイル端末向けサービスも日本のワンセグを筆頭に、中国のCMMB、ヨーロッパのDVB-H、ブラジルのSBTVD-T、アメリカのATSC M/Hなど各種モバイル向け放送が開始、あるいは検討されていることを始め、LTEやモバイルWiMAXなど通信側からのアプローチも活発化していることを指摘し、既存の据え置き型テレビだけではなく、モバイル端末においてもIP対応を進めていく必要があるとした。
同社が年頭の2009 International CESでデモンストレーションを行った3D映像については、「3Dは日本ではあまり流行しているようには見えないが、アメリカでは2000以上の劇場が3D上映の準備をしており、その収益は3倍になるといわれている。これまでなかなか普及しないと言われてきたが、“見やすいコンテンツ”の制作ノウハウが蓄積されたこともあり、注目していきたい」と同社としても関心事項のひとつであることを強調した。
テレビからレコーダー、カムコーダ、デジカメなどさまざまな映像デバイスを手掛ける同社では以前から「リンク」構想を掲げているが、最新の提案として今井氏が紹介したのが、「TH-P54Z1」などが対応する「ワイヤレスビエラリンク」やブルーレイディーガ「DMR-BW950」などが対応するSDカードを利用したワンセグ番組持ち出し、同じく「DMR-BW950」などが対応するDLANを使ってのLAN転送「マルチルーム視聴」などの利用方法。これらに加え、将来的には白物家電やカーナビまでも含めて“リンク”させることで、「どこでもビエラ」の範囲を拡大していきたいという意向を示した。
「3つの約束」を掲げるソニー
今春の組織改編によって、VAIO事業本部長からテレビ事業本部長となった石田氏は「テレビの復活なしにソニーの復活なしと思っている。苦境といわれているが、VAIOの創業期を思い起こさせる感じもする。新しいことへどんどんチャレンジしていきたい」と抱負を語る。
市況については、「テレビ需要の落ち込みはいったん落ち着いたように思えるが、劇的に回復するようには思えない」と慎重な姿勢を崩さないが、BRICs諸国の放送のデジタル化もあり、長期的にみれば成長曲線に乗ると予測している」と、長期的な視点からすれば現況は底を打った状態であり、「ブレーキからアクセル」のタイミングを見極めている段階だと話す。
“見極め”の間に進める施策として、石田氏はサプライチェーンマネジメントの見直し(世界的な生産拠点の集中)、海外モデルへも展開できる小型高感度なシリコンチューナーモジュールの自社開発などを掲げるが、今井氏と同様に、重要なテーマとして掲げるのがIP化への対応だ。
国内ではアクトビラ(アクトビラビデオ・フル)、北米では「BRAVIA Internet Video」などで同社製品はIP対応を進めているが、さらに国内モデルではFelicaポートを搭載することで決済手段までもテレビへ組み込み始めているほか、携帯電話で送信した写真とメッセージをブラビアの画面上で表示できる「ブラビア ポストカード」といった、各種のIPサービスも投入を開始している。
続いて石田氏は「大型化、フルHD化の“次”の商品価値」として、4倍速駆動やRGB 3原色LEDを使用したバックライト「トリルミナス」や、超薄型液晶テレビを実現するエッジライト方式LEDバックライト、ワイヤレスなどの技術を紹介した。ただ、技術の紹介は高画質や薄型化、設置性向上など既存の延長線上にあるものだけではなく、HCFLバックライトや人感センサーの搭載といった、いわば「環境性能」の強化についても行われた。
同社では08年夏モデルから省エネモデルの本格展開を開始しているが、その後の商品展開によって、低消費電力化の難しい小型製品も順次充実させたほか、ユーザーの使用状況をテレビが確認しながら省エネ運転する機能を搭載するなど、「第2幕とも呼べる状態」まで環境配慮型の製品を強化したと自負する。「我慢するエコから、賢いエコを提案していきたい」(石田氏)。
3Dについては、同社もパナソニックと同様に2009 International CESでデモを行っており、「商品化に向かって加速している」と石田氏も積極的に取り組んでいることを認める。ただ、普及については「映画やゲームなどをソニーグループとして保持しているので、コンテンツとハードが一体となって3Dビジネスを盛り上げていきたい」と、劇場からの波及を第一に考えるパナソニックとの違いを述べた。
最後に石田氏は、「ブラビアは、“たたずまいへのこだわり”“画質へのこだわり”“環境へのこだわり”と3つのこだわりを約束します。どのブラビアを手にしてもらうとしても、その3つが欠けることはありません」と、来場者へ“約束”した。
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