薄型テレビ、夏モデルに見る3つのトレンド:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(6/6 ページ)
エコポイントの開始や全体的な価格下落もあり、薄型テレビは「買いやすい」状況にあるとも言える。薄型テレビの“いま”を知り尽くした麻倉氏が今夏のトレンドを語る。
麻倉氏: ここで、最近のモデルに対して苦言を呈したいと思います。それは音の悪さです。毎年、前期比で悪くなったと言っていますが、薄型化と狭フレーム化により今年もますます悪くなりました。いっそのこと、音は出さないことにして、外部スピーカーをオプションで用意するのはどうでしょうか。あるいは、シャープ「LC-65XS1」のように、最初から下にスピーカーボックスをつけてしまう。音がここまで悪くなってきたので、音のよさを強調するようなマーケティングもありだと思いますね。
プラズマに関して言うと、いまやパナソニック1社になり、パナソニックが商品をつくるだけではなくて、日立に対してもパネルを供給し始めました。日立の新製品はパナソニックパネルであり、そういう意味ではパナソニックの動向がすべてを決めるようになりました。秋にはパイオニアの技術が入ったパネルが出るそうですから楽しみにしたいところです。
超解像もこれからの展開に注目です。先日行われたNHK放送技術研究所の一般公開では、103インチの4K2Kプラズマディスプレイが展示されていましたが、今後の大画面、高解像度化の流れには、超解像はなくてはならないものとなります。フルHDからいかに解像感を上げるかの勝負になるでしょう。東芝だけでなく、もっとも早く技術を発表した日立にも期待したいですね。
テレビのネットワーク化に関しては、まだスタート地点へ立ったに過ぎないとみます。私が思うに「コンテンツがネットから来る」などということは、当たり前以前のことで、まったく騒ぐに値しません。そんなものではなく、テレビ生活をもっと楽しめるようなカスタマイズできるような仕組みが欲しいですね。放送は放送局の編成で送ってきますが、ネットの場合はもっと自由に見たいコンテンツをカスタマイズして、自分の編成を作るというような仕組みが欲しいです。
カスタマイズの一貫として、ネット上にマイポータルサイトを作り、テレビをみるのはすべてそこから入って、そこから放送をみるとか、自分の番組表を作るとか、録画をマネジメントするとか、YouTube的な検索機能などが欲しいですね。単なるコンテンツデリバリーではなく、ダイナミックなネットワークの使い方がこれからは必要になるのではないでしょうか。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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