北米中心のサービス事業者から、世界の「NETFLIX」へ――HDR配信は今年後半にスタート:CES 2016(2/2 ページ)
米Netflixは、CESの基調講演で新たに130以上の国でサービスを展開すると発表した。また2016年後半に始まるHDR配信は一部コンテンツからスタートする見込み。追加料金は発生せず、4Kコンテンツに対応した「プレミアムプラン」で視聴できる。
基調講演では多くの時間を使ってオリジナルエピソードの紹介が行われ、間もなく提供が開始される「The Crown」のプレビューが上映されたり、オリジナルエピソードの出演陣が登壇してトークを行い、会場中を大いに沸かせるなど、ファンサービス的な趣向が凝らされていた。この盛り上がりを見れば分かるように、来場者の多くもNetflixでオリジナルタイトルをよく視聴しており、その内輪ネタ的なトークにも反応できるほどということだ。Netflixのエピソードで会話が成立するくらい、米国の多くのユーザーに根ざしたサービスになったということだろう。
世界130カ国へ拡大&2016年後半にはHDRコンテンツが登場
先ほど、Netflix初期の成長は米国におけるDVDプレイヤーの普及とリンクしていたと説明したが、世界のインターネットユーザーは年々増え続けており、世界の人口の4割近くはすでに何らかの形でインターネットに接続されている状態だ。もちろん、これがNetflixのSVOD利用に必要なブロードバンド回線環境とは限らないものの、それだけチャンスが広がっていることの証左でもある。同社は日本を含む40以上の国にすでにサービスを展開しているが、Hastings氏は同日をもって世界130カ国にサービスを一気に拡大することを発表した。新サービス地域にはロシアやサウジアラビアなども含まれる一方で、最大の人口を抱える中国はローンチ対象となっておらず、同氏によれば「間もなく」とコメントするにとどまっている。
Netflixではエピソードやコンテンツによる差異はあるものの、コンテンツのオリジナル言語だけでなく、複数の対応言語による音声切り替えやキャプション表示に対応している。そのため、例えば米国でローンチされたばかりのエピソードであっても、日本語対応さえしていれば、すぐに日本でも日本語での視聴が可能となっている。もちろん、日本向けの日本語で提供されるコンテンツもあるだろう。将来的にはこのような形で、各国で人気のコンテンツを多言語対応することでNetflix上で流通させることも可能であり、対応国の増加はコンテンツをボーダーレスで楽しめる環境が到来する可能性も意味している。その観点では、今後数年先のコンテンツ拡充が楽しみな状況だ。
HDRコンテンツは2016年の後半に配信をスタート
Hastings氏の講演の後は、Netflix日本法人の代表取締役社長Greg Peters氏とコンテンツ入手担当バイスプレジデントのRobert Roy氏の2名に話をうかがう機会を得た。アジア地域の記者数名でのラウンドテーブル形式だったが、日本以外は今回の130カ国拡大で初めてサービスインした地域の記者も多く、中国のように未ローンチの国もあるものの、質問内容からその関心の高さをうかがわせた。
アジアの地域の記者から出た興味深い話題としては、北米出身のサービスということで「コンテンツが欧米主体のものに偏っているのでは」という質問や、「なぜペイ・パー・ビュー(Pay Per View)方式ではなくサブスクリプション方式なのか」といった質問が出た。前者については「当初はそうした傾向があっても、次第に各国の事情や趣向に合わせたラインアップが拡充されるようになる」とコメントしている。また後者には「ユーザーごとにさまざまな視聴スタイルがあるが、エピソードが一気にシーズン丸ごと提供されることで、ユーザーが好きな時間やデバイスで次のエピソード提供を待たずに楽しむことができる」というメリットを強調しつつ、サブスクリプションにおける自由度の高さをその理由に挙げている。
また、注目のHDR(High Dynamic Range)対応コンテンツの配信は、2016年後半に開始されるという。この展開状況を確認したところ、「サービスそのものは全世界で一斉展開されるが、最初の対応は一部のコンテンツから」ということで、徐々に拡大していく形となるようだ。また料金は「現在の一番高い料金がそのまま適用され(日本では4K SVODの月額1450円)、追加料金等の発生はない」という。ただ、HDRを楽しめるハードウェアは現状で非常に限られており、「テレビセットメーカーによる対応待ち」ということになる。現在、日本でのNetflix利用の多くはテレビ経由ということで、HDR対応の4Kテレビを持つユーザーのためのプレミアサービスという位置付けになりそうだ。
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