麻倉怜士がナビゲート 2017年、注目のオーディオはコレだ!(前編)(1/3 ページ)
2017年も国内外のブランドから意欲的なオーディオ製品が次々と登場した。日々さまざまなメーカーや販売代理店に出かけては膨大な数の製品を試聴している麻倉怜士氏が、2回に渡って注目の新作オーディオとその理由を解説する。麻倉節のナビゲートで、芳醇な音の世界へどうぞ。
麻倉氏:今年後半は面白いオーディオアイテムがいくつも登場しました。多くの人に新製品を知ってもらうべく、各地のイベントを渡り歩き、もう大忙し。うれしい悲鳴をあげっぱなしです。
――さまざまなアプローチが提案されることはオーディオ文化にとっても喜ばしいことですね
麻倉氏:そんな“実りの秋”となった今年後半の新製品をいくつか紹介したいと思います。たくさん披露したいので2回に分けて“コンポーネント編”と“スピーカー、アクセサリー編”とします。今回はコンポーネント編です。
ルームチューニングもこなす“現代の高級ラジカセ”
麻倉氏:まずはテクニクスの一体型コンポーネント“OTTAVA f(フォルテ)”「SC-C70」です。この企画では以前、ティアックが“NEW VINTAGE”をうたう「NR-7CD」という一体型コンポを取り上げましたが、あちらはアンプとCDプレーヤーをまとめたもの。今回のOTTAVA fは、さらにスピーカーまで内蔵した正真正銘の“一体型”です。
――電源につないでメディアを選び、再生ボタンを押せば音が出る。これ以上ないシンプルなシステムですね
麻倉氏:かつてラジオチューナーとカセットテープ再生という2つの機能を1つの筐体(きょうたい)に収めた「ラジカセ」という複合オーディオがありました。その使い勝手の良さから世界中の多くの人に愛されましたが、OTTAVA fはいわば「現代版ラジカセ」です。デザインはかつての松下電器のステレオ「飛鳥」の形を現代に蘇らせた「正倉院スタイル」。スピーカーは本体前面にツイーター2基とミッドレンジ2基、本体底面に下向きでウーファーを1基搭載しています。この2.1チャンネル構成という点も現代的ですね。
このタイプのオールインワンシステムは、数年前にイギリスのオーディオメーカーが提案したものです。テクニクスもそのトレンドにのったわけですが、イギリス製品とは鮮明に異なる点が2つあります。1つがCDドライブの内蔵。ヨーロッパではCD人気が下火で、あちらの一体型ステレオはCDドライブを外すものが多くなりました。ところが日本は世界一のCD大国で、コンベンショナルメディアとして相変わらず愛用されています。このへんにテクニクスは抜かりなく、加えてFMチューナー、ネットワーク、ストリーミング、ハイレゾなど、今あるソースにすべて対応します。
でもOTTAVA fの本当のすごさは、サウンドの仕掛けにあるんです。それがもう1つの他社製品との決定的な違い。ルームチューニング”です。
――え、ルームチューニングですか? どこにでも置けてしまう、この小ささで?
麻倉氏:その「どこにでも置けてしまう」というのがミソなんです。一般的にスピーカーが壁に近ければ低音が壁で反射、増幅され低音が過剰になります。逆に部屋の中央に置けば、今度は低音が不足します。このようにステレオが奏でる音は部屋の影響を避けられず、我々は部屋のクセ込みで音を聞いていました。大掛かりなサラウンドなどでは信号に音場補正をかけていましたが、OTTAVA fは自動音場補正機能「Space Tune」を一体型としては世界で初めて搭載しました。
仕組みとしてはAVレシーバーなどと同じで、スピーカーから測定音を発し、そこからの直接音と、部屋の壁で四方八方に反射する間接音をマイクで拾い、部屋の音響的なクセを12バンドのイコライザーで補正するというものです。音響上の部屋の特徴を逆位相として音楽再生時に加える、するとクセの部分が打ち消され、理想の音が再生されるという理屈です。具体的にはスマートフォンなどの内蔵マイクでテスト信号を測定し、専用アプリ「Technics Music App」で操作するという流れになります。測定なしの簡易補正も可能で、プリセットでは「FREE=部屋の中央」「WALL=壁際」「CORNER=部屋の角」の3つが用意されています。
この効用は非常に大きく、音響的に正しくトリートメントされたOTTAVA fはサイズを忘れるほどの良音を鳴らします。部屋の真ん中に置いて測定なしプリセットのFREEと比較したのですが、測定補正ではレンジ感が広がり、低域のボリューム感と解像度が同時にグッと増しました。特に量感が増したことで音楽が安定し、低域と中域のつながりもスムーズになりました。ボーカルの質感向上も注目点です。
――音が良いコンポを好きな場所に置い楽しむ。なるほど、確かに「どこにでも置けてしまう」からこそ重要な機能です
麻倉氏:単体コンポーネントを置くような場所はないけれど、良い音で音楽を楽しみたい。そんな音楽好きには最適なステレオがOTTAVA fです。ここから“一体型ステレオ”という新しいトレンドができることも、大いにあるでしょう。
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麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
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