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» 2007年04月27日 23時59分 公開

“国内で売れない”にどう対処する?――あの手この手の日本車メーカー 神尾寿の時事日想:

2006年度の決算を見ると、“一見”好調な日本車メーカー。しかし実際にはいずれも販売は海外市場頼み。国内に目を移せば、クルマ離れは深刻で、各社対策に頭を悩ませている。

[神尾寿,Business Media 誠]

 自動車メーカー各社が、2006年度の生産・販売・輸出実績を発表した。日本車メーカーの業績好調は、各社の決算発表で軒並み増収増益がでていることで明らかだが、その一方で、生産・販売・輸出実績では、好調な日本車メーカーが抱える「内憂」が垣間見える。

 まず、業界一位のトヨタ自動車を見てみよう。同社の2006年度国内乗用車生産実績は、乗用車で前年比109.9%の約381万台である。一方、国内販売実績は前年比94%の144万台。輸出実績の方は前年比125.9%の約244万台という結果になっている。ちなみに海外生産は前年比105.6%の約394万台だ。国内生産だけで見れば成長しているが、半面、国内販売実績の落ち込みはトヨタでさえ大きい。「日本で作り、海外で売る」という構図が定着しており、海外生産の方も着実に伸びている。

 トヨタはハイブリッドシステムを始め、低燃費・環境向け基幹部品の生産設備が国内に集中しているため、日本で売れなくても国内生産の規模は成長基調で維持しているから、まだいい方だ。日本で売れず海外に頼る傾向は、トヨタ以外はさらに顕著である。

 例えば日産自動車は、2006年度の国内乗用車生産は前年比84.9%の約97万6000台、国内販売に至っては前年比82%の約50万5000台である。本田技研工業は国内乗用車生産が前年比108.4%の約135万台、国内販売実績は前年比97.4%の約69万台だ。日産はグローバルでの生産・販売実績を落としているが、堅調に成長したホンダも、トヨタと同様に日本市場の低迷を受けている。

トヨタはクレジットカード事業で囲い込みを強化

 都市部の若年層を中心とした“クルマ離れ”や新規購入者層の縮退、原油価格高騰を受けた大型車の不人気などもあり、景気が回復する一方で国内乗用車市場には一向に春が訪れる気配がない。特に今後、少子化や未婚・晩婚化が進めば国内市場が頼りにするミニバンなどファミリーカー需要も小さくなる。海外市場のおかげで好調な日本車メーカーであるが、その足下はぐらついている。

 国内市場でどう生き残るのか。これは日本の自動車メーカーにとって、重要な課題になってきている。

 この分野で先手を打っているのはトヨタだ。同社はハイブリッドシステムの開発や高級ブランド レクサス投入など、クルマの商品力を向上させる一方で、クレジットカードビジネスやテレマティクス(4月11日の記事参照)など、様々なツールを使って顧客の囲い込みを強化している。

 中でも注目なのはクレジットカード事業だ(2006年9月の記事参照)。トヨタの子会社であるトヨタファイナンスは2001年からトヨタ車オーナー向けのクレジットカード「TS CUBIC CARD」(ティーエスキュービック)を投入。このクレジットカードで貯めたポイントをトヨタ車購入時に1.5倍のレートで値引きとして使えるサービスを用意している。例えば、トヨタ車購入時にTS CUBIC CARDを作り、次の買い換え時に5万ポイントが貯まっていれば、それは7万5000円分の値引き分として使えるわけだ。しかも、トヨタファイナンスのポイント有効期限は一般的なクレジットカードより長い60カ月(5年間)に設定されている。むろん、これはクルマの買い換えサイクルを見越してである。

 「5年というサイクルで考えれば、クルマの買い換えごとに数万ポイントは貯まっているわけですから、それをもとにクルマが安く買えるリテンション効果はかなり高い。トヨタファイナンスはクレジットカード事業をはじめて今年6年目に入るのですが、ちょうど最初期に加入していただいたお客様の多くが今年クルマの買い換え時期を迎えることになります。すでにポイントの(自動車販売への)効果は見え始めています」(トヨタファイナンス執行役員総合企画部長の後藤清文氏)

 国内市場の活性化と、そこでの業績回復は日本車メーカーにとって至上命題である。今後、国内市場での競争が激しくなる中で、自動車販売は単なる「クルマの魅力」頼りでは立ちゆかなくなる。クレジットカードやポイント、さらには会員向けの各種サービスなど、自動車“以外”のビジネス領域も重要になりそうだ。

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